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中国企業からベトナムへの加工委託

アジアビジネスレポート ベトナム
水野 真澄

水野 真澄

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2017年5月26日

(共同執筆者:Mizuno Consulting Vietnam Co., Ltd.執行役員 安藤崇)

1970年代の改革開放路線開始以降、中国の外資誘致は輸出奨励から開始されましたが、経済発展・外資誘致の成熟に伴い、国内市場重視に推移し、輸出産業が必ずしも奨励されなくなりました。それと歩調を合わせるように、加工貿易に対する規制も、徐々に実施されています。
加工貿易に対する規制強化は、加工貿易の制限品目・禁止品目の拡大、来料加工の制限という形で表れており、加工貿易が規制・禁止される品目が徐々に増えています。
更に、中国の人件費の上昇、加工貿易許可取得に当たっての一定水準の付加価値要求などが行われる事が有り、物価上昇を販売価格に転嫁しにくい加工貿易形態が難しくなってきている業種が増えています。これが、中国プラスワンの動きに繋がっています。
では、この様な流れの中で、中国とベトナムに拠点を持った企業が、双方の拠点を活用して加工を行なう場合(両地域での一次・二次加工実施)のフォーメーションとして考えられるのは、以下の様な取引です。
● 中国からベトナムへの加工委託
● ベトナムで一次加工した製品の中国での二次加工

前者は中国原材料を使用、販売先も中国である場合において、加工工程の一部をベトナムに委託する方法です。この様な取引において、中国側で暫定輸出手続が認められないと、ベトナムで加工した製品を中国で再輸入時に、関税・増値税か課税されます。この様な税コストを削減するためには、出料加工という暫定輸出手続を税関で行う必要が有ります。
後者は、ベトナムで一次加工実施後、それを中国に輸出し、二次加工を行う形態であり、原材料の調達先の違い(ベトナム調達原材料か、国外調達原材料か)によって、中国への輸出形態が変わりますが、これは次回(第2回)に解説します。

今回は、前者の出料加工に付いて、中国側の輸出手続・ベトナム側の輸入手続を解説します。
結論から言うと、現時点では、出料加工の制度は極めて制限されており、中国側の許可取得が難しい状況です。よって、特定の場合を除いて、現時点では選択肢にはなりにくい状況ですが、規制緩和が行われる可能性も有り得ますので、先ずは、現在の制度を解説します。

1.加工委託者(中国企業)の注意点
中国企業がベトナムに保税形態の加工委託を行う制度を出料加工と呼称します。
これは、外国企業から中国企業に対する、加工賃ベースの加工委託である来料加工の逆の取引となります。
出料加工が認められれば、中国からベトナムへの暫定輸出による加工委託が認められますので、加工後製品の中国再輸入時に、関税・増値税の課税が免除されます。

① 出料加工の条件
出料加工の根拠となるのは「出料加工業務に関連する問題の公告(税関総署公告2016年第69号)」ですが、ここには、出料加工の条件が、以下の通り規定されています。
● 中国企業(加工委託者)の税関ランクが高級認証企業(旧AA類)、若しくは、一般認証企業(旧A類)である事。
● 輸出前に、所管税関に「出料加工契約書、生産工程説明、関連貨物の写真・サンプル等」を提出して、出料加工手冊(出料加工の管理台帳)の発給を申請する事。
  また、手冊の有効期限は1年である事。
● 輸出・再輸入は同一港で行う事。

② 出料加工の注意点
出料加工の問題点は、国外企業に委託できる加工工程が、極めて制限されている事です。
69号公告には、加工委託可能な範囲は明記されていませんが、東莞市税関へのヒアリングでは、「補助的工程の委託に限定され(主要工程の委託は不可)、取引は厳格な監督管理を行う」との回答でした。69号公告施行前は、輸出貨物と再輸入貨物が同じ形状である事が求められており、印刷・研磨などのような、極めて限定された加工のみしか認められていませんでした。
この結果、出料加工事例が非常に少ない状況でしたが、これが、どの程度改善されるかに付いては、今後の確認が必要となります。
尚、これも東莞市税関での確認ですが、中国企業が保税輸入した貨物(中国企業が加工貿易企業であり、手冊輸入した貨物)を出料加工委託する事はできません。
よって、あくまでも非保税状態の貨物(中国国内原材料、若しくは、一般貿易輸入した原材料)が出料加工の前提となります。

2.加工受託者(ベトナム企業)の注意点
中国側の出料加工は、ベトナムから見れば、通常の加工貿易取引となります。
加工貿易に関する保税輸入の根拠となるのは、輸出入税法番号107/2016/QH13です。
この第4章に、貿易取引に関わる減免・還付対象取引が明記されていますが、加工貿易(外国企業のベトナム企業に対する製造委託)に付いては、同法・第4章・第16条・第6項に規定されています。

加工貿易企業が保税輸入をする場合、輸入地の税関に以下の書類を提示する必要が有ります(財務省通達番号38/2015/TT-BTC・第2章・第16条・第2項)。
a)輸入申告書(電子申告でない場合は、HQ/2015/NK様式による原本2部)
b)インボイスのコピー1部(加工貿易契約に基づく原材料輸入の場合は不要)
c)船荷証券(B/L)、若しくは、その他の輸送書類のコピー1部
d)輸入ライセンス(税関からの要求が有る場合のみ原本、若しくは、コピー1部)
dd)検査免除通知、又は法定専門機関による検査結果の原本1部
e) 関税評価(電子申告でない場合は、原本2部)

尚、シングルウィンドウシステム(複数の輸出入手続きを1回の申請で行う制度)を利用する場合、関連当局はd)・dd)の書類をオンラインで送信するため、申告者による書類提出は不要となります。
また、上記書類に加え、保税輸入(同通達第7章・第103条)に関しては材料の移動に関する書類(契約書など材料の所有権移転・輸送等の状況が把握できる資料)の提出が求められます(同通達第2章・第16条・第3項)。

次回は、中国とベトナムで一次加工・二次加工が行われる場合の考え方を、FTAによる関税免除措置を中心に解説します。

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