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【コラム】中国現場体験記(28) 台湾官僚の知的財産権観

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年10月11日

記事概要

筆者は、1995年8月、台湾外務省・教育省・救国団主催の日本大学生訪華研修団の一員として、台湾行政院、教育省、外務省、国民党などを訪問しました。今回は、そのときに台湾の官僚の口から飛び出した台湾官僚の知的財産権観に関する現場体験記です。

1995年8月、筆者は台湾外務省・教育省・救国団(前身は中国青年反共救国団)主催の日本大学生訪華研修団の一員として、台湾行政院、教育省、外務省、国民党などを訪問しました。今回は、そのときに台湾の官僚の口から飛び出した台湾官僚の知的財産観に関する現場体験記です。

1.台湾総統選挙の前夜
(1)1996年3月23日
1996年3月23日、台湾では総統選挙が行われました。これは、台湾の正副総統を台湾の民衆が直接選ぶことができるという直接選挙の第一回目でした。総統直接選挙に向けた熱気の中、筆者は企業家の家にホームステイをしながら、台湾の各官庁を訪問したり、台湾の軍人と交流したりしていました。

(2)1本の電話が今に至る
1995年の夏を目前としたある日、大学生であった筆者の家の電話が鳴りました。

電話の主:「台湾外務省・教育省・救国団の招待で、日本の大学生団が台湾の各官庁を訪問したり、台湾の軍人と交流する企画があります。台湾を1周しますので観光もできるのですが、参加しませんか?」

当時の筆者は、後に中国関係の仕事に就くとは考えもしていませんでした。そのため、この企画に参加する事に正直ためらいもありましたし、それよりも目先の就職活動で頭がいっぱいだったのです。

筆者:「う~ん。今決めなければなりませんか?」
電話の主:「あまり待てません。我々としても早めに決める必要があります。そもそも、今回の企画は、日本と国交のない台湾側が日本の大学生を招待し、交流するというものです。台湾と日本間の航空券代、現地でのホテル代等々は台湾の国民党が拠出してくれます。自分で食事をしたり、買い物をしたりする料金以外は、すべて無料です」
筆者:「・・・。無料なら行きます。」
電話の主:「正直で宜しい」

2.「中華民国84年日本大学生訪華研修団」
(1)台湾の官僚との交流
日本各地から参加する大学生・大学院生の総勢は34名で、筆者も「中華民国84年日本大学生訪華研修団」の一員として、台湾に降り立ちました(84年というのは、中華民国建国より84年目という意味での民国紀元です。建国は、1911年の孫文などによる辛亥革命の翌年1912年ですので、中華民国暦84年は西暦1995年を指します)。
皆、大学教授から指名されたり、今回の台湾訪問に先立ち面接試験を受け合格した大学生・大学院生でした。

我々「中華民国84年日本大学生訪華研修団」は、台湾訪問2日目の救国団総団部訪問を皮切りに、行政院新聞局・台湾大学・教育部・外交部・国民党中央青工会・亜東関係協会(台湾の対日窓口機関)など各地の関係機関を次々に訪問し、各地で台湾の官僚・軍人・企業家と交流し、また議論を交わしました。

(2)1995年8月当時の台湾の街角
当時の台湾の街角で、筆者の印象に残る光景としては次のようなものがあります。

「中華民国84年日本大学生訪華研修団」は、台湾の各官庁を公式訪問するだけでなく、台湾各地を観光し、夜市(屋台)なども見学したのですが、その台北の夜市などには、手や足のない障害者の人たちが文字通り道路を転がり回っていました。車で移動している際にも、信号で止まると多くの物乞いがドアを叩いてきました。また、台北の街角でさえも野良犬が多く、深夜になっても、どういうわけか子供たちが辺りに溢れ返っている状況でした。

また、CDショップなどに入ると、そこは海賊版が堂々と売られており、日本では販売されていない当時の大学生に大人気であった(今も大人気の)「ミスターチルドレン」の全シングルを集めた海賊版ベストCD、同様の「ZARD」版などが所狭しと並べられていたのです。

(3)ある台湾官僚の言葉
上述のような光景の他にも、ある官庁を公式訪問したときに聞いた言葉が、筆者の印象に残っています。

そのときも、他の官庁を訪問したとき同様、官僚による台湾の現況および日台関係に関するレクチャーがありました。最後の質疑応答の際に、我々「中華民国84年日本大学生訪華研修団」の大学生1人が次のような質問をしたのです。

日本人大学生:「先日来、台湾各地で色々な店に入っているのですが、台湾各地で著作権違反、知的財産権違反の海賊版がたくさん売られているようです。日本のCDの海賊版なども多くありました。台湾政府としては、このような状況をどのように考えているのでしょうか。規制をかけないのでしょうか」

質問した日本人大学生もよく堂々と公式な場でこのような質問ができたな、と多少は思ったものの、対する台湾官僚の回答は、「我が国に海賊版なるものは存在しない」と言い切ったものでした。実際に海賊版商品を目の当たりにしてきた筆者としては、さすがにこの台湾官僚の回答は、「いくら何でも・・・」という思いを抱かずにはいられませんでした。

中国大陸で漢族との交流を深めた現在では、このような対応にも通じてきたところがあるのですが、当時全く漢族の思考方法・中華圏といったものに触れたことがなかった筆者にとっては、黒いものでも白と言い切ってしまうその官僚の姿勢が鮮烈な印象として残ったのでした。


※台湾新幹線 日本の山陽新幹線ひかりレールスター700系とそっくりの概観
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