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【コラム】中国現場体験記(12) AA制と活動(huo dong)

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年6月28日

記事概要

今回は、筆者が中国人の友人に混じって「活動(huo dong)※山登りや誕生会などの催しを指す」に参加したときの現場体験記です。

筆者は、しばしば周りは中国人ばかりという状況で、山登りなどの「活動(huo dong)」に参加したり、彼らと一緒に按摩屋に行ったり、誕生日パーティーに参加していたのですが、今回は、そういった友達(朋友)付き合いの中から気付いた、中国人の民族差・地域差に関する現場体験記です。

1.AA制
(1)割り勘のない文化
中国には割り勘の文化がないことはよく知られています。日本の「割り勘」のことを、中国人の多くはAA制(AA zhi)と呼んで知ってはいますが、あくまで日本のやり方であり、中国とは異なる文化だと考えています。

中国人の場合、一番年上の人が一人で支払うのが通常ですし、友人同士の食事会であれば、誰か一人が奢れば次回は別の人が、さらにその次には別の人がというように、支払う人は代わっていくものの、一人で支払うことに変わりはありません。

筆者の友人にも、このAA制を「日本式AA制」と呼び、「ケチ」の代名詞のように言う人もいます(ちなみに、日本は戦後補償を全くしていないケチな人種であると勘違いしている中国人が多くいます。日本からのODAのことも全くと言っていいほど、中国人には知られていません)。逆に、「AA制は素晴らしい制度、中国の一人で全員分を奢るやり方はきつい制度であり、日本人は合理的だ」と評価する人もいます。

(2)「面子」の通し方と「恥」の概念
中国人(特に漢族)は、人に奢るときに使うお金は、いろいろな人から借り回って、かき集めてでも用意します。そういった面での面子の通し方は、日本人である筆者には、独特に感じます。奢る金を作るために、借金をして回るのは、「恥」ではないのか?という思いがする部分もありますが、彼らは一人で支払うことの面子にこだわるようです。

2.活動(huo dong)
(1)活動(huo dong)とは?
中国人は中国語で言うところの「活動(huo dong)」が好きで、週末は山登りをしたり、一緒にご飯を食べたり、友達の友達まで含めて団体で活動することを好む傾向があります。中国人の友人にその理由を聞くと、日本人と違い、中国人(特に漢族)は、二人等少数で遊びに行くのは楽しくないと感じるため、常に団体行動をするのだそうです。

(2)同じ地域出身者の連帯感
筆者は、中国で語学研修をし、その後、大学院で学生をしていたこともあり、いろいろな地域出身の中国人と知り合いました。彼らとの交流言語は当然、中国語のみでしたが、各地域の出身によるなまりのある中国語(普通話)の勉強にもなったため、筆者にとっては、語学学習と文化の勉強の一石二鳥の役割を果たしてくれました。周りの友人達も、筆者のことを外国人だと思って気遣っては話してくれず、中国人と同じようなスピード、言葉遣いで話してくるため、なかなか良い中国語の練習にもなりました。

中国人は同じ地域の出身者に大きな連帯感を持ちます。同じ地域出身者の友達の友達は皆友達、というのが中国人(特に漢族)世界だと感じることが多くありました。よって、中国人の中でも一般庶民(中国語「老百姓」)の多くは、地方から都会に出てくるときに、親戚や友達がいる場所(親戚・友達がいない場所であれば、友達の友達など、とにかく誰か頼れる人がいる場所)で働くことを好むのです。

したがって、都会だから、という理由で北京・上海・広州・大連などで働くのではなく、親戚・友人がいるから、頼れる同郷の人がいるからその街で働くという選択になるのです。
そういった大都市に知り合いがいない場合には、別の地方都市に出て働く中国人が多いのです。

(3)中国人の誕生日パーティーに参加
上述のような中国人との付き合いの中で、筆者はある日、遼寧省鞍山市出身の友人から、「奥北(ao bei)、今日は俺の彼女の誕生日パーティーだから、お前も一緒に行こう。」と誘われました。ちなみに、中国人は日本人の友人のことを呼び捨てで呼びます。中国人の一般的な姓は一文字(「劉」、「李」、「張」など)ですが、日本人の姓は一文字ではないことが多いための語感の問題かも知れません。

この友人の出身地である遼寧省は、黒龍江省、吉林省と合わせ、東北地方と呼ばれている地域です。東北に住む漢族の特徴(特に男性)は、気が短く、口調もきついことです(北京もきついですが、東北三省に行くと、もっときつく感じました)。反面、良く言えば、南方地域の漢族とは異なり、性格が真っ直ぐな人が多いため、裏表はないのかも知れません(そういえば、日本人残留孤児を育てたのは、これら東北の人々です。ただし、この地域は、満州族が多い地域であるため、養親は漢族ばかりとも限りませんが)。

(4)誕生日ケーキの配り方
友人の彼女の誕生日パーティーは、24時間営業でいつまでも騒げる広東飲茶の店、「金鼎軒」で行われました(現地の日本人にも有名ですが、夜食を食べに来る中国人で溢れ返っている店です)。

ケーキを準備して店内に持ち込んでいた友人は、当日の主人公である彼女にケーキをカットさせ、皆にこれまた大威張りで配らせていました。中国ではこの点が日本とは異なり、誕生日にケーキをカットして皆に配るのは当日誕生日を迎えた本人の役目なのです。

筆者も誕生日に語学学校でケーキをプレゼントされたことがあるのですが、やはり、もらったケーキを自分でカットし、全員に配って回ったうえ、スピーチまでさせられたものです。

(5)変な面子の通し方
食事では、主役のはずの女性(仕事を持っている)よりも、友人の方が大威張りで、「奥北、何でも好きなものを注文して食べろよ」と言っていました。

その様子から、筆者はすっかり、この友人が費用を全て負担するものだと思い込んでいました。また、それが習慣であると。ところが・・・最後の会計の際に全額支払ったのは、主役の彼女のほうだったのです。

誕生日を迎えた人が費用を負担するのは、これまた中国の習慣かと思った筆者は、こっそり、両隣にいた安徽省出身の友人と湖北省出身の友人に、事の真相を聞いてみたのです。すると、彼らは顔をしかめて、これは中国全体の習慣なのではなく、東北地方の男性独特の習慣である、とのことでした(もちろん、全員が全員だとは思いませんが)。彼ら曰く、東北地方の男性の多くは、まともに仕事もせず、遊んでばかりで、女性のヒモになることが多いくせ、女性相手に威張る、とのことでした。

後日、黒龍江省出身の女性はじめ、東北地方出身の友人数名にもこの話をしてみたのですが、確かに、多くの東北の男性に当てはまるようでした。余談ですが、黒龍江省など東北地方出身者には怖い人が多いらしく、中国の黒社会の大部分は彼らが占めているそうです(日本では黒社会は、福建省の人が多いと言われていますが、これは日本に渡ってきて悪いことをしている人に福建省人が多く含まれるからでしょうか)。

3.中国および中国人を理解するために、中国人社会に深く入り込む
筆者が中国での現場体験から感じ取ったこととして、中国人を理解するために重要なのは、自ら中国語を話し、中国人社会に入り込む必要がある、ということです。仕事上で付き合いのある人たちだけでなく、様々な職種や階級、民族および出身地の人々と交流することによって、異なる習慣・文化・考え方に触れることができます。

その結果、中国に入り込めば入り込むほど、民族差、地域差が大きなことが分かり、「中国とはこう」「中国人とはこう」とは一言では断言できない、ということに気づきます。また、中国は現在、大きな変化の真っ只中にありますので、中国に対する印象も、民族によって、地域によって、ますます変転していくのでしょう。


※北京市の香山公園 筆者の背景に見えるのが北京市内

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