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【コラム】中国現場体験記(64) 青海省で言われた「日本の総理大臣と言えば、○○」

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2013年5月1日

青海省西寧のタール寺観光を終えた筆者は、西寧内で吐蕃の痕跡を見て回ることにしました。

1.水井巷
西寧市内のホテルに戻った筆者は、休憩後、飲食店・市場などが立ち並ぶ水井巷の見学に行きました。青海省名物のヨーグルトが売られている他は、他地域の市場とはさほど違いはありませんでした。多くの飲食店では、中国人の好きな、串焼き(羊肉、野菜等)が焼かれていました。
筆者は中国各地を旅する際に、その土地の飲食店や市場を訪れることにしています。どういった物が売られ、どういった物が食されているかを確かめることで、その土地柄の一端が分かるからです。

青海省は、ヨーグルトで有名な土地です。チベット族居住地域では、放牧が盛んなため、乳製品が豊富です。チベット居住地域は、チベットは当然のこと、青海省、雲南省と標高が高い地域が多いので、生活には厳しい土地といえます。そのため、そういった環境に強いヤク牛を放牧することで、栄養分を確保しているのだと思います。チベット鉄道車内でも、チベット・青海省とヨーグルトとの長い歴史を車内放送で紹介していたほどです。
ここ青海省で売られていたヨーグルトはカップには入っておらず、陶器の容器で売られていました。中国では一般的な売り方ですが、冷蔵庫にも入れずに、屋外で売っていることも多くあります。筆者は、これからのチベット旅行を思い、お腹を下さないよう、冷蔵庫の中のヨーグルトを求めました。さっぱりとしながらも、濃密なヨーグルトの味が舌に染み込みました。

市場を歩いていると、ある装飾品店の前で足が止まりました。赤ん坊が、店の前の以前は魚か何かが氷と共に入っていたような薄汚れたプラスチック箱の中で、すやすやと寝息を立てていたのです。
友人:「奥北さん!これは敦煌で出会ったにんにく幼児に続くインパクトだよ!」

友人が興奮して叫びました。筆者たちが以前、敦煌の市場を回っていたとき、にんにくをリヤカー一杯に入れて運んでいた人に出会ったのですが、赤ん坊がにんにくの山の中で寝ていたことを思い出したのです。
筆者:「どうして赤ん坊がこんな所に寝ているの?」
装飾品店店員:「店の中では狭いし、箱の中に入れておけば安心でしょ」
中国人が、タフな人間に育つはずでした。

2.西寧の按摩屋で小泉純一郎元総理
翌日は、朝から、中国最大の湖であり、世界でも有数の面積を誇る内陸塩湖である青海湖(標高3,200m)と唐の王室から吐蕃王ソンツェン=カンポのもとに嫁入りした文成公主ゆかりの日月山(標高3,500m)を巡りました。
青海湖では、船に乗って湖を横断できます。帰りはバスで湖の入り口まで戻って来ることになります。青海湖沿岸で観光客を乗せて走る車には、ベンツのマークが付いていました。
筆者:「このベンツのマークは?」
土族(トゥー族)ガイド:「偽物よ」

湖はきれいで、チベット族の知人も、青海湖は、チベット族にとっても重要な湖だと言っていました。湖近くの食堂のウェートレス(服務員)は、みなチベット族でした。ただ、トルコ系の少数民族との混血のような人もいれば、漢族のような人もいました。同じチベット族とは言っても、混血が多いような印象を受けました。

青海湖・日月山から市内に戻り、夕食を済ませても、22時発のチベット鉄道乗車までには、まだ時間がありました。青海省は中国の西方です。中国国内には、時差がないため、青海省西寧の夜はなかなか暮れませんでした。チベット鉄道内で食する飲み物などを近くのスーパーで調達した筆者は、時間調整を兼ねて、按摩屋(マッサージ屋)で、1時間ほど足裏マッサージをしてもらうことにしました。たまたま通りかかった按摩屋であったため、外国人客は少なく、地元民が通うような店でした。筆者と友人が座っていると、マッサージ師が入って来ました。青海省の田舎から省都である西寧に出て来た若い女性たちでした。彼女たち同士が話す言葉は地元の言葉であったため、何を言っているのか分かりませんでしたが、筆者たちに話しかけてくるときには北京語(普通話)を使いました。日本人である我々に興味津々の様子でした。筆者は中国各地を回りましたが、日本人であることで嫌な思いをするようなことは、ほとんどありませんでした。むしろ、多くの中国人が日本人である筆者と話したがっているようなことが多々ありました。
マッサージ師:「あなたたち、日本人なのに背が高いわね。日本人は皆、背が低いと思っていたわ?」
マッサージ師:「私たちは漢族だけど、あなたは何族?」
などと、能天気に話しかけてきましたが、それに答えるたびに「きゃっ、きゃっ」と笑い合っていました。
  
彼女たちの話の中で、最も印象的だったのは次のようなものです。
マッサージ師:「日本の総理大臣の名前は何だった?」
筆者:「○○だよ」
マッサージ師:「違うよ。別の名前だよ」
友人:「その前の総理大臣は○○だよ」
マッサージ師:「そんな名前ではないよ。そもそも日本の総理大臣は変わりすぎるよ」
筆者:「じゃ、中国の国家主席の名前は知っている?」
マッサージ師:「胡錦濤よ!さすがに知っているわよ!次の主席は習近平!」
筆者:「(笑)じゃ、中国の次の総理は?」
マッサージ師:「?」
以前、ある中国人のベテラン法曹家から、「中国の政治問題に関する実情は、外国人のほうが詳しく知っているよ」と聞いたことがありましたが、上述のマッサージ師の反応を見ると、さもありなんと感じました。

筆者:「日本の総理大臣の名前ね?あつ、小泉!」
マッサージ師:「そう!小泉!日本の総理大臣と言えば、小泉でしょ」

これと同様の経験は、他の場所、他の相手にもしたことがありました。中国人の多くは、日本の総理大臣がころころ変わる事を疑問に思っているのと同様に、日本の総理大臣と言えば、今でも小泉純一郎だと思っている人が多くいます。「小泉」のピンインである「xiaoquan」という音を中国ではよく耳にします。筆者が悪口でも言い出されるのかと黙って聞いていると、むしろ評価する声が多かったのが、筆者には意外に思えました。

中国では、日本の報道とは違う事実にしばしば出会います。確かに、中国人(漢族)は自己主張を激しく行います。自分の本来の主張の10倍ぐらい大げさに言ってくることがままあります。買い物に行っても、毎度の値段交渉は当たり前で、1,000円の品物を1万円ぐらいに言ってくることは珍しくありません(特に北方の漢族)。人それぞれに主張が違うのは当たり前、主張は戦わすのが当たり前、という世界の中で、好きか嫌いかは別として、自分の意見を言う人が評価され、また印象に残っていく社会なのだとあらためて思いました。


青海省西寧で食したヨーグルト

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