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【コラム】中国現場体験記(4) 労働局の面子

中国ビジネスレポート コラム
奥北 秀嗣

奥北 秀嗣

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2011年5月12日

記事概要

中国で労働裁判をするに際し、日系企業が地元労働局から徹底抗戦を要求されることがあります。今回は、労働裁判傍聴記の続編です。

今回は、中国現場体験記(1)労働裁判傍聴記の続編として、地元労働局の面子について説明いたします。

1.事案概要

(当事者)
原告:中国人労働者
被告:日系企業(工場)

(事案):
①2008年某日、中国人従業員が作業中、クレーンから貨物が滑り落ちた。
②逃げ遅れた当該中国人労働者の足が貨物の下敷きとなり、病院で手術した結果、足の指を切断することとなった。
③その後、2回目の手術も成功したが、現在は自宅で休養中というもの。

(労災認定の処理経過):
①2008年、会社所在地の労働行政管理部門で労災認定を受ける。
②2009年、労働能力鑑定委員会で障害等級7級との鑑定結果を受ける。
③その後、本人の申請により、労働能力鑑定委員会で、国家認定の安全補助器具を付けることが許可された。
④2010年、原告側弁護士が労働仲裁の申立。要求は、ⅰ.安全補助器具費用、ⅱ.障害補助金、ⅲ.労災障害医療補助金および労災就業補助金であったが、労働仲裁委員会の裁定結果は、ⅰおよびⅱは却下というもの。
⑤その後、労働裁判を提起してきたもの。

2.労災認定
上記労災認定の処理経過で示した通り、労災は、企業と従業員の合意のみで認定できるわけではありません。地元の労働行政管理部門に申請し、そこで認定を受ける必要があるのです。従業員が事故により負傷したり、職業病予防療法の規定による職業病と診断または鑑定されたりした場合には、企業は事故による負傷の発生日あるいは職業病と診断または鑑定された日から30日以内に、労働行政管理部門に労災認定申請を行わなければなりません(労災保険条例17条)。

3.労働紛争仲裁・訴訟手続のフローチャート
では、上記の労災認定を経た後の労災保険額および企業からの支払に従業員側が満足しなかった場合、どのような流れによって、法律上争われることになるのでしょうか。具体的には、以下の流れとなります。

上記のフローチャートで記載したように、労働紛争の場合、当事者は裁判所に直接訴訟を提起することは認められず、まずは労働争議仲裁委員会に仲裁を申し立て、仲裁委員会の仲裁判断を受けなければなりません。つまり、先に労働争議仲裁委員会の仲裁を受けてから、はじめて裁判所の訴訟審理に入ることができるのです。

4.労働局の面子(威信)
労働局の面子は労働争議仲裁委員会での仲裁に留まらず、裁判所にまで労働紛争が持ち込まれた場合に問題となるのです。
すなわち、ときに労働局は、「中国人労働者側から無理な経済弁済の要求が出された場合には、裁判所では断固として闘うべきである。」と要求してきます。
これは日系企業のみならず全ての進出企業に対して同様の指導をしている模様です。

なぜ、中国の役所である労働局が日系企業に対し、中国人労働者と徹底的に争うことを求めてくるのでしょうか。

これは、裁判所で仲裁委員会および労働局の裁定が覆されるような判断がなされた場合、当該労働局の面子(威信が損なわれること)と将来の地元での労災仲裁に不利な影響があるからです。そのため、ときに日系企業は、「もしも裁判所から日系企業に不利な判決が出たとしても、上訴して断固と戦うよう」に求められるのです。

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