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【中国深読みコラム】第4回~米中が握る日本の命運~

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2013年10月9日

記事概要

中国深読み連載の最終回の本稿では米中関係について、解説するものとする。【2,133字】

3回にわたり、過去・現在の日中貿易と現代中国の経済史を見てきましたが、中国深読み連載の最終回は米中関係を解説します。中国を見るとき我々日本人は日中関係を単独で論じますが、中国側より見た場合、日中関係は対米関係(政策)の一環であり、すべての基調はアメリカとどう付き合うか、であり対日政策はその一手段に過ぎません。これはアメリカ側から見てもまったく同様で、まず中国とどう向き合うか、その延長線に対日政策が決定されます。日本人からすれば受け入れ難いことですが、それが世界政治の現実です。

具体的に軍事と経済の両面より説明します。
先日、日米の外務・防衛担当閣僚会議が東京であり、日米防衛協力の為の指針(ガイドライン)の見直しで合意しました。日本側は尖閣を念頭に中国の軍備拡張抑止を期待していますが、アメリカ側には中国とやみくもに対立する意図はありません。アメリカ代表は尖閣問題への直接の言及を避け、静かに抑止力を高めつつ、経済面で中国との協力を模索しています。アメリカは来年2014年の環太平洋合同演習(リムパック)に初めて中国人民解放軍を招待することが決まっています。日本では報道されませんが、この10年ほぼ数年おきに米統合参謀本部議長(大将)が北京を訪問しており、今年はマーティン・デンプシー議長が人民解放軍の房峰輝総参謀長と会談し、二人による共同記者会見が行われました。米側は中国、特に軍部との対話を急いでいます。誤算による衝突や偶発的紛争を防止しようと、米国は少なくとも過去10年間涙ぐましいばかりの努力により、米中軍事交流を深化させ、最低限の信頼を醸成する努力を続けてきました。今これがようやく実を結びつつあります。この点については、日本も米国に多くを学ばなければならないと思います。

一方、経済面においても米中は軍事分野以上のメンバーと時間を割いて世界戦略を模索しています。今年7月ワシントンでは第5回米中戦略・経済対話がまる二日の日程で開催されました。中国側は汪洋副首相を筆頭とする大型代表団、米国側はジョセフ・バイデン副大統領、ジョン・ケリー国務長官、ジャコブ・ルー財務長官といった豪華メンバーです。
成果としては、米中両国が相互の投資協定への本格交渉を始めることが合意され、米中両国が2国だけで世界の主要課題、特にアジア・太平洋地域の諸問題を処理し、管理していくという概念であるG2が強調されました。米中は異なる政治体制にもかかわらず、双方の差異を認め、お互いに理解しあい、共通の政治経済面の課題を克服しようと努力しています。又、経済面の基調としても、アメリカと中国は同じ問題を抱えています。9月27日付ニューヨーク・タイムズ紙のグルーグマン(08年ノーベル経済学賞受賞者)のコラムで、0.01%の米国の最富裕層が優遇課税され、09年~12年の所得増加分はほぼすべて所得上位1%の富裕層に偏り、国民の99%の富は増えていない、と告発しています。その背景には、大手企業が破綻して連邦政府の管理下に入ったあとも、富裕層の企業幹部に高額賞与を支払い続けたオバマ政権への国民の不満があります。

中国の庶民感覚もまったくアメリカと同じで、対外開放政策の恩恵は多くの国民に享受されましたが、庶民には及びもつかない富裕層の多くが中国共産党幹部の一族で占められ、特権と賄賂で構成されていることは広く知られているところです。米国式資本主義と中国式市場経済、同根の国民軽視は根深いものがあります。

さて、話を日本に関わる米中関係に戻します。
米中関係の外交課題は多々ありますが、アメリカと中国政府が最も懸念している課題が、<台湾問題>です。
アメリカにとって対中政策の最大矛盾は、台湾は中国の国内問題であって、中国は一つであると同意していますが、同時に、民主的に選ばれた政権のもとにある台湾を武力で“解放”することは認めない、という米国歴代政権の対応です。この前提でアメリカは最新鋭の戦闘機を台湾に売り、それを中国政府が非難する、という構図が長年続いてきました。しかし、最近は台湾国民党の馬英九政権と中国政府は蜜月の関係になっており、経済的にもお互いが切れない相互補完の関係になっています。
10月6日インドネシアでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、中国の習近平国家主席と台湾代表の蕭万長前副総統が会談し、両岸問題担当大臣も同席しました。これが一歩進み、台湾問題に関して、中国共産党と台湾国民党が平和的統合に合意したらどうなるか?アメリカの中国専門家の議論の結論は既に出ており、アメリカは容認(承認)するしかない、です(ハーバード大学エズラ・ヴォーゲル教授著“現代中国の父鄧小平”)。こうなった時、日本はどのような対応がとれるでしょうか?いずれにせよ、日米関係や日中関係が、日本の選択いかんでどうこうできる時代はとっくに終わっており、アメリカと中国の両大国より日本が必要とされる道を模索するしかないと思われます。その為には、まず中国との関係改善が急がれます。

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