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【中国深読みコラム】第10回~国家開発銀行とは何か?~

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2014年8月4日

記事概要

【1,739字】

 7月2日付け北京商報に珍しい記事が載りました。
“政策性銀行の国家開発銀行が7月1日に入札を行った10年物債券は応札倍率が1.01倍と異例の低調な結果となり、応札額が募集額を下回る「札割れ」の事態は回避したが市場にとって長期債券の魅力が薄らいでいることが示された。”というものです。
中国の政府系金融債で応札倍率が札割れ寸前まで低下するのは極めて異例。アナリストは、直近の製造業購買担当者指数(PMI)が経済の好転を示す数字となったことで、同債券の引き受け手となる金融機関にリスク選好のムードが高まったことや、7月1日から預貸率が調整され、銀行が長期債券よりも貸出に資金を振り向けようとしていることが背景と分析しています。

日本ではあまり知られていませんが、この国家開発銀行が債権発行で集めた資金はどこに投資されているのでしょうか?
今回はこの裏話を深読みしたいと思います。

 これまで表に出てこなかった国家開発銀行絡みの記事がここに来て目につきます。7月15日・16日、ブラジルで開催された新興5カ国(BRICS)首脳会議で、新興国向けのインフラ投資への資金援助を目的とする開発銀行(正式名:New Development Bank)設立を採択しました。本部は上海に設置されることが決まり、ロシア、中国、インド、南アフリカ、ブラジルが均等に100億米ドルを拠出、500億ドル(約5兆円)で発足する巨大銀行です。世界銀行やアジア開発銀行を凌駕するこの新興5カ国版開発銀行の原型が、中国の国家開発銀行であり、この20年間中国の経済成長を牽引してきた、貸出残高110兆円の世界最大の投資銀行なのです。

 それではこの銀行の資金調達を最近の記事より拾ってみます。7月21日付け第一経済日報に、“中国人民銀行が新たな金融ツール「Pledged Supplementary Lending(PSL)」を通じて1兆元(約16兆3,000億円)を政策性銀行の国家開発銀行に融資した。期間は3年で貸出金利は6%。主に「棚戸区」と呼ばれるバラック地区の再開発に用いられることが期待されている。国家開発銀行が内部に設置を検討しているとされる「住宅金融事業部」が、銀行間債券市場で住宅金融の専門債券を発行し、返済資金とするという。
PSLの金利をコントールすることで中期的な政策金利を設定する意図があるとみられている。人民銀行の周小川総裁は7月初旬に開かれた米中戦略対話期間に人民銀行が短期と中期の利率を政策的に誘導するための金融ツール3つを準備していると明らかにしており、このPSLもそのひとつとされている。“とあります。
今回は「棚戸区」と呼ばれるバラック地区の再開発プロジェクトで、中央銀行からの融資ですが、過去20年間、国家開発銀行は中国の地方政府の開発プロジェクトを担保にして、債権市場で莫大な資金を調達してきました。右肩上がりの経済下では、これらはすべて成功しました。

 では次に集めた金をどこに投資するか?これも最近の報道記事より見てみます。7月23日付けの21世紀経済報道紙に、“習近平国家主席が7月21日、ベネズエラを公式訪問したことに合わせ中国はベネズエラに40億米ドル(約4,056億円)の与信枠付与に調印した。ベネズエラは今後、毎日10万バレルの原油や石油製品を中国に供給することで返済に充てる。ベネズエラに対しては中国開発銀行が2008年にも20億米ドル(約2,000億円)の貸出を行っている。”とあります。中国国家開発銀行は15年以上前より、国内融資と並行して、新興国や発展途上国向けに膨大な資金を投入しています。
その主な目的は、天然資源の確保、インフラ整備、それによる中国企業の海外進出支援です。中国の国策に沿った海外融資(投資)は、資源確保と投下資金は中国進出企業との売買契約や役務契約で中国に還流され、中国にとっては一粒で二度美味しい優良ビジネスとなっています。

尚、創設より2013年の引退まで15年間、国家開発銀行を主導してきた陳元総裁(69歳)の父親は陳雲元副首相です。ご興味のある方は「チャイナズ・スーパーバンク(原書房)」をご参照下さい。

以上

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