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中国ビジネス展開のチェックポイント 第5回【中国の人件費動向(1)】

中国ビジネスレポート 投資環境
田畑 泰朗

田畑 泰朗

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2012年5月31日

はじめに
今回から数回をかけて、現在の中国における人件費の動向と今後の予想などについて解説いたします。かつては、安い労働力が魅力であるといわれ労働集約的な生産基地を中国に建設する動きが主流でしたが、現在ではこのような工場は経営計画の大幅な見直しを迫られてきています。その一方で、新規に進出を検討されている企業の中には、いまだに中国での人件費は安いといった先入観を持っている方もおり、これを正確に把握した上で計画を立案する基礎にしていただければ幸甚です。

1.最低賃金と平均賃金の動向

下の表は、上海市を例にとって2007年からの最低賃金と平均賃金の動きをまとめたものです。これを見ると、組立工場や縫製工場などで主力となる最低賃金付近の低賃金層の賃金は2009年を除き毎年10数パーセントという、日本では考えられない比率で上昇しているのがわかります。
平均賃金も最低賃金ほどではないにせよ、やはり上昇幅が大きくなっていることがご理解いただけると思います。

■上海市における最低賃金と賃金上昇率

為替は一律12円=1元で計算

2.地域差について

上海など都市部では賃金水準が高騰していることから、開発の若干遅れている地域への移転を考えられている会社も多くなっています。次の表は2011年の最低賃金の地域別比較です。
この表は各年、いろいろな場面でご覧になることも多いと思いますが、比較する上で注意しなければならない点は、各地域政府によって、社会保険の個人負担分11%、住宅積み立ての個人負担分7%(比率は現状)を控除した後の賃金額かどうかが異なるため単純には比較ができないことです。つまり、社会保険、住宅積み立てを含まない上海での1280元は、これらを含んだ広東省の1300元よりも、実質的には高くなります。

■地域別における最低賃金2011年

為替は一律12円=1元で計算
※社会保険・住宅積立は個人負担分
2012年:上海1450元、北京1260元、他地域はこれから発表

3.それ以外の人件費コストについて-社会保険、住宅積立会社負担など

賃金について1.2.で見てまいりましたが、会社で負担するコストとして大きいものには社会保険の会社負担分のコストがあります。社会保険の詳細については別の機会にご説明いたしますが、上海市の場合は社会保険会社負担分が37%、住宅積立金会社負担分が7%と小さくはありません。また、社会保険についてはこれまで低負担で済んでいた、非都市戸籍従業員についても、これから負担比率が引き上げられます。
このほか、例えば労働災害以外の私傷病での会社欠勤に対しても、会社が法令に定められた額の手当てを支払わなければなりませんし、夏季に高温状況下で労働させる従業員に対しても法定の手当てを払うなどの措置を取る必要があります。

4.これからの方向性
 
中国政府は2011年から5年間で所得水準を2倍にする国家計画を掲げています。これは年率約14%の平均上昇率を目標とします。この数値目標は、各労働者の経験やスキルアップによる上昇分を含んでいないわけですから、これらを含んだ特定の労働者の賃上げ水準は20%以上、もしくはもっと高いものになるかもしれません。また、地域差解消、高低差是正の目標も併せ持っており、低賃金地域、低所得層の賃上げ圧力は相当な高さになると思われますので、現在、“低賃金だから地方へ”、“高賃金従業員1人を低賃金従業員2名に置き換え”などは正しい判断かどうか、慎重に考える必要があると思います。
また、賃金上昇を見込んだ経営計画を立てなければならないことは自明のことであると考えます。

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