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事例で学ぶ中国ビジネス成功のノウハウ(3)販売代金回収

中国ビジネスレポート 投資環境
筧 武雄

筧 武雄

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2004年1月7日

<投資環境>

事例で学ぶ中国ビジネス成功のノウハウ(3)販売代金回収

筧武雄

 

1.不渡り制度のない中国

  中国には日本のような手形小切手の不渡り制度が無く、あるいはクレジット・カードなどの信用情報システムも不完全なため、一度掛け売りしてしまうと代金回収が難しいとよく言われる。事実、最近の日系企業調査を見ると、平均の売掛金回収には2〜3か月の期間を要しており、売上の10%以上が不良債権と答える企業が全体の約1割強を占めている。時折、日本に研修にやってくる中国人ビジネスマンたちに直接質問しても、4か月程度の回収期間が標準と考えているようだ。このような事情から、中国内での代金回収は、商品現物との引き換え払いCOD(Cash On Delivery)条件を基本とせざるを得ない状況にある。
 他方で、中国から外国へ販売した輸出代金の回収については(外国から輸入した代金の支払についても)、貨物が実際に通関したという税関の証明印(「貨物報関単」)が無ければ海外と代金を決済することができない。たとえば、「相殺」のような貨物が通関しない特殊な代金回収・決済方法はあらかじめ外貨管理局の許可届け出を要する「備案」管理項目となる。また、輸出にかかる仕入増値税の還付申請手続きも煩雑(注)で、還付を受けることができた場合でも実際の輸出から半年以上の時間を要しているのが現状である。それに加えて2004年から中国政府は、主要品目の還付率を17%から13%に引き下げることを決定した。事実上の輸出FOB価格に対する4%輸出課税のスタートである。

(注)特に注意しなければならないのは、国内販売相手の客先が、その購入部品もしくは製品を輸出するケースである。客先が仕入れ代金支払いと引き換えに当方から増値税専用発票と?款書(出口貨物専用)=納税証明書(輸出貨物専用)を受け取ることができなければ、彼らは増値税の輸出還付を申請することができない。そのために当方は毎年の一般納税人検査に合格し、増値税専用発票用紙の購入登記をしておかねばならないのである。同時に、一般納税人資格を有していても、外部に委託生産した外注品については非自社製造品として自社の増値税専用発票を発行することが税務局から禁じられている。

2.ケース・スタディ

 日中合弁会社R社は従来輸出100%であったが、本社の意向もあって中国国内市場への販路新規開拓に乗り出すことにした。日本人総経理A氏は、中国全国各地の主要都市に出張し、あちこちの中国メーカーや大手販売店と販売代理契約を締結して歩いた。最初に売り出した商品は販売促進をかねて割引価格とし、代金決済条件も「委託在庫、販売実績翌月末払い条件」として、全国的にインターネットや業界紙に多額の広告宣伝費をかけて発売することにした。
 地方都市L市の代理店は地元国営百貨店にまとまった量の商品を販売することに成功した。ところが翌月を過ぎて、いくら待っても代金が入金にならない。代理店に電話で督促しても埒が明かないので、半年たった後、直接エンドユーザーを訪問することにした。
 エンドユーザーに直接訪問して話を聞いたところ、驚いたことに、すでに半年前の入荷時に代金は即時支払済みであるという。そんなはずはないと銀行振り込みを確認したところ、たしかに代理店口座に入荷日の翌日付で代金が振り込まれていた。
 A氏はその足で代理店を訪問し、責任者を問いただした。するとそこでまた意外な事実が判明したのである。
 L市代理店が受け取った代金から販売手数料を差し引いてR社に送金しようとしたところ、代理店はR社自身の経理担当者から、「支払い期日までまだ1か月ある。うまい儲け話があるから一口乗らないか」という誘いを受けたという。言われるがままに、勧められた銘柄の株投資をしたが、1か月後に多大の損失をこうむってしまったという。その損害賠償をめぐって代理店とR社経理担当とのあいだでトラブルとなり、まだ解決していないのでR社には入金できない、という理由であった。これを聞いたA氏は開いた口がふさがらなかった。帰社して経理担当に事情を聞いたところ、そんな事実はない、それはL市代理店の勝手な資金流用の言い訳にすぎないという。自分の会社と代理店、どちらを信じたら良いのかA氏は頭を抱え込んでしまった。

3.整理・分析

 経理担当者が勝手に会社の資金を株などで個人運用して利益を流用もしくは横領し、期日にはなに食わぬ顔で元金を入金処理する、ということは中国では以前から決して珍しいことではない。本ケースのように、代理店が勝手に代金を流用し、しかも大損を出してしまった場合ですら、「中国では代金回収は難しい。後払い条件で商品を先渡ししたほうに責任がある」などと平然と報告してくる人物もいるので、話だけを頭から鵜呑みにしない心がけも必要である。
 本当に入金になっていないのか、言葉だけを鵜呑みにせず、A氏のように代理店の帳簿を検査し、エンドユーザーまで取り立てを兼ねて直接ヒアリング調査することが重要である。そもそも代理店契約の際、最初からの取り決めとして、代理店の帳簿閲覧権、棚卸検査権を定めておかないと、後から要求することも難しい。
 本ケースでA氏は考えあぐねたすえ、「事情はどうあろうと、代理店が顧客から受け取った代金をこちらに入金してこないのは契約違反である」と判断し、弁護士を立てて正式に代理店を訴えることにした。国営商店であり、たまたま代理店契約に署名もしていた政府商業局幹部個人に対して損害賠償請求書を弁護士経由で送りつけたところ、代金は即日R社口座に入金となった。この政府幹部自身も個人的なアルバイトで代理店契約に参加していたらしく、日本企業から訴訟を起こされたら自分の立場も危ういと判断したのであろう。この代理店契約トラブルは事実関係がどうであったかはわからずじまいで、そのまま解消となった。
 ちなみに、近年の中国では、いわゆるマルチ商法(中国語で「伝[金へんに肖]」)が盛んである。たとえば化粧品や食器、健康器具などがネズミ講に似た手法でキックバックを目的に連鎖販売される。「キックバック(中国語で「回[手へんに口]」)」という中国の商習慣と見事にマッチした商法だが、すでに多くのトラブル、犯罪事件を引き起こしているため、中国でも法律によりマルチ商法は禁止された。それでもなお、変形したかたちで実質的に生き延びている事例もたくさんあるので注意が必要だ。たとえば、やたら代理店の代理店がたくさん作られているようなケースがあったとしたら、代理店の販売手数料システムを悪用したマルチ商法の一種ではないかと疑ったほうがよいだろう。

4.解題

代金回収問題における債権保全策として以下のような具体策が考えられる。

A.未然の防止策

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