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来料加工制度の今後について

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2004年3月1日

<投資環境>

来料加工制度の今後について

 共産党第16期3中全会において、「加工貿易の継続的な発展を導く」方針が決定し、商務部もこれに関連する発表を行っています。従来、来料制度廃止の噂が絶えなかった訳ですが、今回の決定によって状況の変化が予想されます。今回は、加工貿易制度の説明と、従来、来料加工の打ち切りが噂されていた理由、更に、来料加工制度の今後の展望について解説します。

1.来料加工制度の打ち切りの噂が絶えない理由
従来より、「委託加工が近い将来できなくなるのではないか」という噂が絶えません。
委託加工という日本語の定義はある意味で曖昧であり、中国語の「三来一補」を指す場合もあれば、中国語の「加工貿易」を指す場合もあります。但し、ここでいう(打ち切りの噂が絶えない)委託加工制度は、基本的には来料加工を指しています。
これは、来料加工制度が、三来一補にも加工貿易にも包括される取引形態であり、且つ、委託加工を代表する取引形態である事に起因します。

因みに、三来一補と加工貿易の定義は、各々以下の通りです。
● 三来一補
来料加工(中国に於ける保税加工の一形態)、来様加工(サンプル提供加工)、来件装配(ノックダウン加工)、補償貿易を総称した用語で、一般に、付加価値の低い加工形態と位置付けられている。
三来一補は、外国企業が中国企業に、設備機械・原材料・サンプル・半製品等(形態によって提供するものの内容は異なる)を提供し、加工を委託する形態であるが、当該制度に基づいて輸入する部材・原材料は、関税・増値税を免除される。

● 加工貿易
  加工貿易は、来料加工・進料加工を代表的な形態とする制度であり、主に輸出原材料を使用した輸出加工を意味する用語。加工貿易制度に基づいて、輸出を前提として輸入される原材料は関税・増値税の保税措置が適用される(増値税に関しては、来料加工は免除。進料加工は付加価値に対して課税されるケースが多い)。

 以上の様に、双方、保税措置が適用される輸出加工形態ですが、「付加価値の低い単純加工」という点に着目したのが三来一補という括りであり、「保税措置が適用される貿易取引」という点に着目したのが加工貿易という事になります。
いずれにしても、中国における増値税の輸出還付制度に、制度的・運用面の問題が見られるため、輸出加工において、輸入原材料・部材等の保税・免税措置が享受できる委託加工制度は、極めて利便性が高く、外国・外資企業にとって重要な制度といえます。
特に、来料加工形態は、中国内販売ができないという制限はあるものの、増値税暫定条例上、増値税の免除が明記されている事や、オペレーションが非常に簡便である事から、この形態の採用を希望する企業は未だに少なくありません。
ここ数年、委託加工制度、特に来料加工制度が近い将来打ち切られるのではないか、という噂が絶えず、中国進出を検討する外国企業にとって悩みの種となってきました。
 この背景となっているのは、90年代(94・97年)に行われた「今後、委託加工形態を歓迎しない」という発言ですが、ここで、委託加工を歓迎しない理由として挙げられているのは、委託加工形態に特有の付加価値の低さです。
この趣旨からすれば、打ち切りの可能性があるのは、三来一補という事になり、(来料加工は対象ながら)進料加工は対象外という事になりそうです。
 但し、発言の背景に、「(ある意味では過度の)保税優遇措置を制限していく」という意図があるのであれば、進料加工についても見直しの対象となる可能性があります。

2.今回の決定
 共産党第16期3中全会の決定を受け、商務部は以下の参考資料(加工貿易の発展を継続し、形態の変更と改善を着実に導く)を発表しています。
 ここで記載されている内容は以下の通りです。
●  加工貿易は、中国の経済成長に多大な貢献を行った。
具体的には、外資誘致、外貨の獲得、就労人口の吸収、産業の促進等の分野における貢献が著しい。
●  加工貿易の水準・規模には大きな改善と発展がみられているが、現段階では十分なハイテク化が達成されておらず、地域ごとの発展状況のばらつき、販路(輸出相手先)の偏重、保税管理制度の不備などの問題も存在している。
●  以上の認識を持った上で、加工貿易を推進し、今後、継続的な発展を実現させる。
又、それに当たっては、保税管理の体制の整備、サービスの向上、インフラの整備に努めるものとする。

 以上の通り、加工貿易を全面肯定した内容であり、従来とは明らかにトーンが変化しています。今回の決定により、少なくとも進料加工については、今後も奨励されるであろう事が期待されますが、来料加工については、この発表だけでは判断がつかない部分があります。
これは、発表の中に「加工貿易の主要形態は進料加工であり、全体の75%を占めている事」や、「加工貿易形態の高付加価値化が求められている事」、更には、「輸出加工区のような特別区の整備」という内容が盛り込まれているためです。
 この発表の内容を踏まえ、広東省対外貿易経済合作庁加工貿易処に来料加工の扱いをヒアリングしてみましたが、結果としては「来料加工も加工貿易の重要な形態であり、今後も継続的に奨励していく」という回答でした。
 このヒアリング結果だけを以って、来料加工、特に、広東省で普及している変則的な来料加工が今後も継続されていくかは断言できません。但し、この発表から見ても、中央政府の加工貿易に対する対応に(積極的な)変化が見られるのは確かであり、この状況を鑑みるに、来料加工制度の見直しが、近い将来行われる事はないであろうと、筆者は考えています。


<参考資料>
加工貿易の発展を継続し、形態の変更と改善を着実に導く(商務部HPより)
2004年1月8日

 改革開放初期の「三来一補」より始まり、20数年の発展・拡大により、我が国の加工貿易は、既に貿易取引の半分を占め、改革開放と対外経済のシンボルとなり、国民経済と社会発展の為に著しく貢献した。
 歴史に重要な意義を有する共産党16回三中全会での討議において、《中共中央の、社会主義の市場経済体制を完璧にする為の若干の問題に関する決定》が通過し、「加工貿易の発展を継続し、多国籍企業を着実に呼び込み、より高技術、より高附加値の加工製造プロセスと研究開発機構を我が国に移転させ、加工貿易を発展させるという方向性が明確にされた。
 我々はこれを契機として、加工貿易の新局面を開拓すべく努力を行なう。

一.我が国の加工貿易が達成した、20年来の貢献
 20数年来、我が国の加工貿易は、積極的な努力のもと発展し、「発展の規範化と加速」、「管理の強化」、「発展の促進」という三つの段階を経てきた。
 加工貿易は、無から有となり、小から大になり、発展の高度化、高速度化、広範囲化を実現した。加工貿易の輸出入総額は、1980年の16.66億ドルから、2002年の3021.7億ドルへ、180倍以上の増加を達成した。
 加工貿易輸出の対外輸出における比重は、1980年の9.2%から2002年の55.3%へと上昇した。今年の、前11ヶ月には、加工貿易の輸出入が3613.06億ドルに達し、前年同期に比べ32.1%増加し、全国対外輸出入総額の47.5%を占めている。その内、輸出は2156.1億ドルであり、前年同期に比べ32.5%増加し、全国対外貿易輸出総額の55.2%を占めている。
 輸入は1456.96億ドルであり、前年同期に比べ31.4%増加し、全国対外貿易輸入総額の39.3%を占めている。

 発展の初期に比べると、現在の加工貿易は、形式・内容において重要な変化を見せ、以下の発展状況と特徴を実現している。
(一)  進料加工は、加工貿易の主導位置を保っている。
1989年に進料加工輸出入は、初めて来料加工を超え、加工貿易の57%を占めるようになった。1995年以来、進料加工は継続して75%程度の割合を保っている。
(二)  外商投資企業は、加工貿易の主体としての位置が明確となり、近年では、加工貿易総額の四分の三を占めている。
(三)  初期開拓的な投資から安定した投資に変化し、投資規模が拡大し、小企業投資から多国籍企業による大型投資となり、産業が更に集中した。
2002年、全国では加工貿易が輸出額1億ドルを超える企業が214社あり、10億ドルを超える企業が8社あった。
(四)  軽工業から精密加工へと変化し、原材料全量輸入による加工から、逐次に国産原材料を使用した加工による輸出へと変化した。
加工貿易製品の構造が継続して優良なものとなり、輸出商品の附加価値が高度化、加工の拡大が、国内の付属産業の発展を促進した。
(五)  労働集約型から技術・資本集約型へと変化し、加工貿易は伝統製品を主体とするものから、機電製品を主体とするものへと発展した。
IT製品の急速な発展により、我が国を世界IT産業の最も重要なハードウェアの製造基地の一つとなった。
2002年、加工貿易における機電製品の輸出額は1170億ドルであり、同年の加工貿易輸出総額の65%を占め、全国の機電製品輸出の74.5%を占めている。
ハイテク製品の輸出額は606億ドルであり、同年の加工貿易輸出総額の34%を占め、全国のハイテク製品輸出の89.5%を占めている。
2003年の1〜10月では、加工貿易輸出における機電製品の総額1331.09億ドルであり、加工貿易輸出総額の69.56%を占めている。
(六)  加工貿易の輸出市場が日増しに多元化し、初期の香港・東南アジア地区主体から、香港、米国、日本、ヨーロッパ、東南アジア等の、全世界的な市場に広域化し、輸出市場のリスクを減少させた。
(七)  全面的な発展と同時に、新設の企業を重点的に特定区域に集中させ、輸出加工区と保税区政策を積極に推進する。
同時に、単一の監督管理様式からコンピュータ・ネットワークによる監督管理に移行し、加工貿易の監督管理水準を逐次向上させる。

二.加工貿易は我が国の経済社会発展の為に著しく貢献した
(一)  加工貿易は、国民経済の継続的、且つ迅速な成長を促した。
2002年における、加工貿易輸出が1799億ドルであり、577億ドルの貿易収支黒字を実現した。これらは、各々、国内総生産の14.6%と4.7%を占めるものである。
(二)  加工貿易は我が国の外資利用を促進した。
2002年における、外商投資企業の加工貿易は、加工貿易全体の74.8%を占めている。
加工貿易は継続して、外資企業の貿易の主要な形式となっている。外国企業の投資拡大と加工貿易規模の拡大は、相互に連携し、共同発展の状況を実現した。
(三)  加工貿易は、我が国が世界貿易大国になるステップを加速した。
2002年における、我が国の貿易総額は6208億ドルに達し、世界第5の貿易大国となった。加工貿易における輸出入と輸出は、1981年に比較して、各々121倍と164倍増加し、同期の一般貿易の成長を大幅に上回っている。特に、加工貿易輸出が、対外貿易輸出に占める割合は、1980年の9.2%から2002年の55.3%へと上昇した。加工貿易の加速的な発展は、我が国が貿易大国となるステップを大いに加速した。
(四)  加工貿易は、我が国の国際収支の均衡に貢献し、多くの外貨収入をもたらした。
1989年より、我が国の加工貿易は、貿易収支の黒字を実現した。概算によると、2002年末現在迄に、加工貿易により実現された貿易収支の黒字累計は3000億ドルを超えている。
加工貿易は、我が国の外貨準備を持続的な増加に、独特な役割を果たしている。
(五)  加工貿易は、我が国の産業構造の戦略的調整と改善を推進した。近年来、伝統的な加工貿易産業を継続して発展する同時に、高技術、且つ高付加価値の機電製品、及びハイテク加工貿易産業の迅速な発展により、多くの新製品、新技術、新しい産業がもたらされた。
深加工結転の拡大、及び加工網の拡大は、パーツ生産と供給能力の増強を促し、産業集積効果を明確に示した。又、加工貿易技術と管理の拡大作用により、国内の関連企業の技術進歩と産業の高度化を促進した。
(六)  加工貿易は、就業を拡大し、我が国の工業化を推進した。
加工貿易は数多くの都市と農村の就業人口を吸収し、多くの工業化大生産に適応できる熟練労働者、及び、多くの国際化競争に適応できる技術と管理人材を育成した。これにより、多くの地区人民の生活水準向上が実現し、特筆すべき貢献が認められる。

三.加工貿易に直面する情勢は依然として厳しい
当面、経済グローバル化により、国際産業の移転と産業構造の調整が加速する。
我が国は、WTO加盟後、投資と貿易の双方を促進し、国内経済の迅速な発展を継続して保持し、体制政策環境の安定を持続して改善し、市場の潜在力を増加し、企業自らの成長能力を強化する。又、我が国の工業基盤が堅実であり、工業分野が全体的であり、インフラが整備されており、加工製造能力が高く、独特、且つ全面的な長所を持っている。我が国の加工貿易の発展は、今までに無い好機に直面している。それと同時に、厳しい挑戦に直面しているのも現実である。

(一)  当面、一番大きな問題は、企業の核心技術の開発能力不足により、製品の等級が依然として低めであり、高附加価値・ハイテク・高額の外貨獲得ができる加工貿易項目が少ない事である。
(二)  加工貿易地域間の発展にばらつきがあることも問題である。
沿海地域では加工貿易基盤が整っており、発展の速度が速く規模が大きい。一方、中西部地区では、規模においても発展の速度においてもこれとは大きな差が出ており、加工貿易の長所が十分に発揮されていない。
(三)  市場が極端に集中しており、リスク分散を行なう必要がある。
輸出市場は徐々に多元化したが、大多数の省市の加工貿易輸出は、依然として米国、日本、香港等の市場に集中している。又、国内加工貿易企業自身の販売能力が弱く、特定市場に対する依存度が高過ぎ、国際経済の波動の影響を受けやすく、リスク管理能力が弱い。
(四)  国内のパーツ供給能力が不足しており、産業ラインが短く、加工貿易の輻射能力と集合効果が十分に効果を上げていない。
当面、大多数の加工貿易は、「一進一出、単一工程」型の発展段階となっており、先導的なリーダー企業とこれを助ける下請け型企業が少なく、加工の程度が浅く、産業の高度化と製品代替の作用が顕著となっていない。
(五)  現行の加工貿易の管理と監督方式を、継続して改善する必要がある。
加工貿易管理は多くの部門に関わり、協力・共同管理を行っていかなくてはならない。
部門間のコンピュータのネットワーク体系が不完全で、各地の深加工結転に於ける保税管理、国産原材料に関わる輸出増値税還付引き下げ政策など、各種の問題についても速やかに研究史、これを解決しなくてはいけない。加工貿易の名目で密輸を行なう人間が依然として多く、問題は深刻である。
(六)  経済のグローバル化と区域経済一体化の加速に従い、特に周辺国家と地区の投資環境が改善され、労働力コストのメリット増し、我が国の加工貿易が直面する競争を厳しくなる事が予想される。

四.加工貿易の発展を継続し、加工貿易形態を高度化する
(一)  一段と思想を統一し、認識を高め、機を捉え加工貿易を継続的に発展させる。
加工貿易は貿易方式の一つであり、経済発展形態の一つでもある。我が国において加工貿易が発展すれば、国内に不足する資金と技術を導入でき、我が国の有する豊富な労働力資源という長所を十分に発揮でき、強大な加工製造能力を形成する事ができる。
我々は経済のグローバル化とWTO加盟により直面する情勢に臨んでの戦略的な角度から、加工貿易の発展の必要性と緊急性を十分認識する必要がある。
国際分業の深化と産業構造調整が加速している機会を捉え、我が国の比較優位を利用し、加工貿易が新しい産業形態を受け入れる効果を利用し、加工貿易の発展を特別の位置において、有力な措置を取って確実に運用する必要がある。
(二)  我が国の加工貿易の発展戦略を積極に探求する。
我々が国際産業の変遷において直面しているチャンスと困難を真剣に分析し、確実、且つ実行性のある加工貿易の発展戦略を研究、制定し、我が国の国情に符合する加工貿易の発展戦略を作り上げ、完璧にする必要がある。
加工貿易の発展に於ける指導思想、基本方針、主要任務、仕事の考慮方向と政策措置を一段と明確に促進し、全力に多国籍企業を誘致し、技術の一層の高度化、高付加価値化を推進し、加工製造工程と研究開発機構を我が国に移転させ、加工貿易型の変更と高度化を促す。
(三)  加工貿易政策の安定性、連続性、統一性と操業の可能性を維持し、加工貿易発展の為に、良い政策環境を創造する。
加工貿易は経済のグローバル化と国際産業の変遷に適応する貿易方式の一つであるが、その継続と発展の為には、安定、且つ、透明度の高い政策環境が必要となる。
現時点において、加工貿易の高度化を導く政策を研究、制定し、精密加工、深度加工、産業行程の整備の発展に尽力し、社会・経済の利益の向上を図る。
(四)  部門間の調和を強化し、総合措置を取って良好な発展環境を創造する。各部門は職責を確実に履行し、協力と調和を強化し、加工貿易の発展を促進する政策措置を着実なものとする。各地方は組織的な協力を強化し、分業協力と部門連動を共に促進し、連絡・調和の体制を真に形成し、状況を定期的に連絡し、政策を研究し、問題を解決する。
(五)  加工貿易の管理を改善し、サービス水準の向上に努め、我が国の国情に適合する健全的な加工貿易の監督管理パターンを作り上げる。加工貿易のマクロ管理と有効な調整、制御を強化する同時に、政府の職能を努めて転換し、サービス意識とサービス水準を継続して向上し、加工貿易の審査許可の手続きを簡略化し、監督管理の考慮方向、方式と手段を大胆に、新たに作り出し、監督管理の効率を向上し、管理コストが低減できる加工貿易の監督管理体系を探求し、構築する。
加工貿易契約の部門間の審査許可、記録、核鎖におけるシステム管理を至急実現させ、有効な加工貿易管理体制と運行制度を実現する。又、加工貿易を利用して、各種の密輸とその他の違法行為を取り締まり、撲滅する。
(六)  加工貿易の経営主体を拡大し、加工貿易の経営機構を堅固なものにする。
各種の所有製企業が加工貿易を発展する事を積極に奨励、支持、指導する。
加工貿易の発展を奨励する政策措置を徹底し、輸出加工区等の各種開発区を管理し、これらの開発区の機能と政策を完璧なものにし、加工貿易を発展し、輸出を促進する独特な役目を一段と発揮させる。

(2004年2月記・7,669字)
丸紅香港華南会社コンサルティング課長・広州会社管理部長
水野真澄

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