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中国における工場建設・増設のキーポイントについて

中国ビジネスレポート 投資環境
王 穏

王 穏

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2006年10月27日

<投資環境>

 

中国における工場建設・増設のキーポイントについて

 


 

王 穏

    最近、商業性企業の新設や在中国の既存複数子会社を再編成、資本関係再構築する日系企業が増える中、工場の新設、移転、増設のケースも少なくない。いかに工場を時間通りに立ち上げ、生産運営の要求に合致させるかについては、現地の経営者の皆さんにとって大きな課題となるであろう。本文においては、工場建設に当たってのいくつかのキーポイントをピックアップして述べたい。

1.施工業者の資格確認

――一体誰に施工を依頼しているのか

   施工業者については、まずその営業許可証、ならびに建築業の資格証書を持っているかどうかを確認しておくべきである。

【事例A】
   開発区推薦で、かつ上海市で有名な大手企業である施工業者に施工を依頼した。施工品質にはほぼ満足しているが、後に一部代金の支払いについての喰い違いが生じたので、相談の上決めようと、施工業者の担当者Aさんに面談を申し込んだにもかかわらず、Aさんからしきりに代金の支払いをファックスや電子メールで求めるにも拘わらず、一切面談に応じてくれなかった。
   仕方がないので、上司に連絡しようと、営業許可証に登録されているところに連絡すると、「Aさんのところは単にうちの「掛靠」部門であって、うちはタッチしていない」との回答であった。

【コメント】
   Aさんの部門は、法的に厳しく制限される、いわゆる「掛靠」(ライセンス貸しに近い独立した事業体)の部門であることがわかった。この事実に基づきAさんのところが実質上違法の色が強いライセンス貸しだとわかったので、結果としてAさんとの交渉をうまく運ぶことができ、本件では特に問題なく解決できた。しかし、施工業者が本当にライセンスを有する業者であり、かつ施工にかかわる品質保証責任、補修責任その他の法的責任をきちんと果たしてくれる実体であるかどうかを、まず確認しておくことが不可欠である。

   施工業者を探す場合、もっとも望ましい方法は近辺の工場から情報収集し、すでに施工実績があって、ある程度評価される施工業者を選ぶことである。ただ、そのような業者にそう簡単に恵まれない場合、自分で探すか、開発区紹介や仲介会社紹介とかいろいろとある。その際には、施工業者の施工資格確認が必須条件である。

   このことは、単に営業許可証や建築資格証書などのコピーだけではなく、その原本を確認することである。さらに、一度本社の登録地を訪問し、可能であればトップの董事長、総経理との面談を通じて、何かある場合には、この施工業者がきちんと責任を負える実体であることを確認するも必要である。きちんとした施工業者であれば、補修責任や(最悪の場合)損害賠償責任などを果たすことができるが、「掛靠」となると、施工が終わったら、一人・二人の会社になってしまい無責任となりがちである。ましては、工事代金等を回収すれば、消息不明になったケースもある。

   ただし、建築業界の事情もあって、実務上Aさんの部門のような「掛靠」も少なくないので、会社の予算面、その他で制約があり、、やむを得ずこのような「掛靠」部門に依頼する場合は、リスクヘッジ策を講じるべきである。

2.工事監理業者の利用

――メーカーの専門家は必ずしも工場建設の専門家ではない。だれか工場建設時の味方となる専門家がいないのか。

    施工となると、施工主は、仮に現場監督しても、施工の細部まで目が行き届かない。また、技術的なことや専門的なことが多いので、素人が玄人を監理監督しても仕方がない。その場合には、一定の費用がかかるとしても、監理業者を味方にすることがもっとも効果的である。

【事例B】

   開発区の幹部から紹介された施工業者に依頼し、特に大きな問題がなく竣工した。ある日、事務所の配線を見たら、ケーブルが乱暴に配線され、いつショートしてもおかしくない箇所が複数見つかった。施工業者に連絡したが、修理するといいながら、一向に実現しない。困惑し当初の監理業者にクレームを申し立て施工業者と監理業者が連帯責任で修理しないなら、建築委員会にクレームを申し立て裁判も辞さないと伝えたところ、施工業者と監理業者が一緒に来て、事務所の配線を数日がかりでやり直した。

【コメント】
   監理業者は、施工業者を監理監督する立場にあって、施工上に問題が起これば、その監理監督の責任も問われることになる。本件では、監理業者にその監理監督責任、施工業者との連帯責任を追及することで、解決に結びつくことができた。
   監理業者に監理を依頼する場合、監理業者からその現場を担当する職員まで、その負っている責任の重さを知ってもらうことが重要である。本来、監理業者がその責任を最も知っているはずだが、実務上必ずしもそうとは限らない。

    この場合、監理業者に責任を常に感じさせ、監理業者にその責任を果たさせるための工夫が必要となる。例えば、法的に監理業者の責任が規定されているが、契約・書面などで、再度その責任を明記し、更に明確且つ詳細に規定することが必要である。監理業者もこの書面を読むので、もう一度その責任の所在を意識することになる。また、監理業者が監理義務を果たさなかったことで負っている違約責任、損害賠償責任なども明記する。更に、現場においても、施工主の従業員が、専門ではなくても、工場が終わったら専門家レベルになる意気込みで、常に監理業者や施工業者の担当者に質問したり、要求したりすることで、プレッシャーをかけることが望ましい。

3、施工契約上最重要なポイント

――行政推薦の施工契約があるが、それ以上こちらの要求を盛り込むことができないか。
――ややもすれば二三十頁の契約になるが、どこか一番重要な点なのか。

   施工業者との施工契約については、大掛かりなプロジェクトの場合、建設委員会推薦の施工契約を締結することが多い。その契約は、あくまでも建設委員会が推薦するものであって、契約当事者間の合意により成約するので修正又は補足してはならないということはない。本契約の有利な条項、ならびに補足協議書で、施工主の権利を守る工夫が必要となる。

1)支払い条項について

【事例C】
   施工業者C社に施工を依頼したが、施工品質の問題、工期の大幅遅延、施工工員の窃盗の疑いなど多くの問題が発生した。それでもC社は、代金の全額支払いを求め、支払わないと提訴するとまで強弁した。施工主は、C社による補修を諦め他の施工業者に依頼すると方針を変える一方、C社にその責任を認める前提で、代金から他の施工業者に支払う補修代金の相当額を減額して支払うと提示した。C社は数週間抗議した後承諾した。

【コメント】
    「お金を握っている方が勝ち」というのは、全てではないが、多くの場合に適用すると言えると思う。施工主が代金の全額を払ったら、施工業者が代わりにその責任を果たすとは限らない。実務上、「そちらが契約責任を果たしていないから、代金を払わない」ということが最も効果的がある。

2)品質要求について
   日本では当たり前のことであるが、施工業者がまじめにやってくれないので、こちらから注文したら、逆に中国の施工業者から、「うるさい」、「いじめている」と思われるケースが少なくない。施工業者は、今まで、適当にやっていてもそれで通ってきたので、施工主の要求どおりの施工品質で施工するという意識は極めて薄い。

【事例D】
    施工業者の現場担当者は、常に日系企業がうるさい、わざと過酷な要求しているのではないかと文句を言う。施工業者の本社に現状を伝えたところ、本社の担当者まで同調する有様である。工期が切羽詰っているので、工事業者に、代金の一部追加支払いを条件に、日本の工場の基準を元に、詳細な施工要求を書面化にして、現場担当者の更迭を要求した。新たな現場担当者が来たときに、日本の工場基準の資料も参考に、その基準の理由まで説明し、よい関係を作る工夫をして、協力してもらった。無事竣工後、その新たな現場担当者から「この工事のために、いろいろと勉強になった」と感謝された。

【コメント】
    中国全体の施工レベルは、日本と比べるとまだ距離がある上、今まで特になにも言われずやってきたという散漫意識が強い。ただし、一々論争することは、あまりプラスになることが少ない。従って日系企業は工場建設の際に求める高い品質を説明し、理解してもらうか、理解してもらえない場合、発注者としての強い立場を利用し相手を従わせるである。

    施工業者との施工契約においては、可能な限り「詳細な基準+理念的規定」を盛り込むことが望ましい。

    具体的には、施工主として施工の品質についてどこまで要求しているかを詳細な基準をもって示し、施工業者も今までのやり方ではだめだ、契約不履行だという認識を促すことが重要である。

    また、その詳細な基準をすべて網羅することは、到底無理であるため、契約では、「施工品質は、通常の工場が求める品質ではなく、甲(施工主)が一流の製品を円滑に生産製造できる基準まで到達しなければならない。」という理念的な規定を設ける。施工主が求める基準の解釈の権利は、施工主にあるため、実質上施工主の要求どおりに施工しなければならない大義名分を持つことになる。そして、なにか食い違いが生じる場合には、「一流な製品を円滑に生産製造できる基準」であることを説明すればよいであろう。

【まとめ】

   工場建設に当たって、

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