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中国駐在員必読の三部作―その1.『家』

中国ビジネスレポート 投資環境
田中 則明

田中 則明

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2007年2月18日

記事概要

 最近、「中国語」「日中異文化理解」「リスク管理」「人的資源管理」等といったテーマの中国駐在員赴任前研修でこれから中国に赴任される方々とお会いする機会が増えています。その際、「あと一ヶ月しかないのですが、どういう本を読んで行ったらよいでしょうか?」と聞かれることが多くなりました。

 最近、「中国語」「日中異文化理解」「リスク管理」「人的資源管理」等といったテーマの中国駐在員赴任前研修でこれから中国に赴任される方々とお会いする機会が増えています。その際、「あと一ヶ月しかないのですが、どういう本を読んで行ったらよいでしょうか?」と聞かれることが多くなりました。

 私のお勧めは、私が勝手に三部作と読んでいる3冊の本です。これらの本は、
中国駐在員のみならず、現代中国を知ろうと思うものは、誰でも読んでおくべきものです。(もし、まだでしたら、是非、早い機会に読んでみてください)

 なぜ、三部作かと言えば、まさに、夜明け前―夜明け―正午、革命前夜―革命―革命の後、起・承―転―結、第1楽章―第2楽章―第3楽章、ラルゴーアレグローアンダンテ、小川-激流-大河・・・・・・等等の「3つの連続と非連続の局面」のイメージと重なるからです。

 1冊目は、「家」(巴金、飯塚朗訳、岩波文庫)(中国語版:人民文学出版社)
です。

 アナキスト、バクーニンとクロポトキンの名前の一部をペンネームとし、激動の中国にあってひたすら文筆活動を続け巴金の20代後半のこの作品は、中国の文学史上において記念碑的作品であるのみならず、中国のことを知ろうとする日本人にとっても格好の入門書です。

 人は、中国との係わりが進んでくると、否応なしに中国という広くて奥深い国のことをもっと知りたくなります。その国の本当の姿、そこに生きる人々の本質に迫りたいと思うようになります。私がこの作品と出会ったのは、まさにそのような状況においてでした。ビジネスマンとして、中国各地を東奔西走していた時でした。ミクロ的な仕事をしつつも大きく体系的に中国を、中国人を理解する必要に迫られていたまさにそのような時でした。

 この作品は、1919年の五四運動を時代背景とし、巴金自身と成都の生家を題材にした、私小説風の物語です。が、結果的には、この作品は、単なる私小説の域をはるかに超え、中国、中国社会、中国人にとっての普遍的な問題を真正面から取り上げた、あたかも滔滔たる大河の如きスケールと風格を呈した
作品に仕上がっています。

 この作品が、現代に生きる我々日本人にも訴えかける理由は、いくつもあります。

まず、そこには、数千年間中国社会のバックボーンとして機能して来た「家」というものの有様が克明に描かれています。

次に、そこには、古い中国と新しい中国、古い中国人と新しい中国人が共に生きた時代が、極めてリアルに再現されています。

また、中華人民共和国成立前夜の中国人の境遇、特に、虐げられた貧困層だけではなく士大夫階級といった富裕層の一部の人間までもが中国に新しい社会の到来、すなわち、革命の必要性を認めるに至った内面的過程が、余すところなく描かれているのです。

また、そこには、『紅楼夢』の世界――中国的死生観、夢と希望、悲哀と絶望、美的感覚――が広がっています。恐らく滅び行く古き良き時代への郷愁を覚える人もいるに違いありません。

 更に、これこそが我々現代に生きる日本人にとっても他人事では済まされないテーマですが、「家」とその集合体としての「国家」というテーマが見え隠れつしているのです。もちろん、このテーマは、改革開放政策によってめざましい経済発展を遂げつつある現代中国においても、依然として最も根源的なテーマであり続けています。その意味において、まさに、この作品には、現代中国を読み解くカギが隠されています。(2007年2月記 1,455字)
 

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