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転廠(深加工結転)に関する外貨決済について

中国ビジネスレポート 法務
水野 真澄

水野 真澄

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2004年10月26日

<法務>

転廠(深加工結転)に関する外貨決済について

1.はじめに

「転廠」・「深加工結転」とは、加工貿易(来料加工・進料加工)企業間で行われる、保税貨物の移送手続をいいます。

転廠(深加工結転と同義)に関しては、依然として「正規の規定がないという誤解」、「華南(珠江デルタ)以外では転廠はできないという誤解」が広く見受けられます。

ただし、転廠は、国家規定である「加工貿易保税貨物の税関区をまたいでの深加工結転に関する管理弁法(税関総署・第109号)」に基づいて行われる合法的な取引であり、(上記の規定が国家規定である事からも分かる通り)中国全地域で行うことができます。

華南以外では、転廠が出来ない(誤解)理由として、「華南以外では、保税品の移送に関して増値税が課税されることを挙げ、増値税が課税されない形態を転廠、課税される形態が深加工結転という説明が行なわれることがあります。

ただし、保税区品の国内移送に伴う増値税課税の有無は、単に地域の増値税課税政策の違いから生じるものであり、取引の違いを意味するものではありません。転廠・深加工結転の意義は、あくまでも「関税が留保されている製品(保税品)」の国内移送であり、両者は同義、かつ、双方ともに、国家規定に規定される取引です。

以上が転廠に関する根拠規定及び定義ですが、一口に転廠と言っても、「来料加工企業間の転廠」「進料加工企業間の転廠」「来料加工・進料加工企業間の転廠」の3つに分けることができます。
来料加工は、代金決済を伴わない加工貿易形態であり、進料加工は代金決済が必要となる形態であることは、改めて解説するまでもないと思います。

そのため、上記の転廠形態のうち、来料加工企業間の転廠であれば、対外決済は伴いません、進料加工が絡む転廠の場合は、何らかの形で対外決済が行われることとなります。

この決済に関する根拠となるのが、以下の規定であり、双方、国家規定として公布されています。

  • 深加工結転(転廠)に関する外貨決済と核鎖に関する手続規定
    匯発(1999)78号・国家外貨管理局1999年3月15日施行
  • 国家外貨管理局・税関総局による、深加工結転に関する外貨決済と核鎖管理を、より一層強化する問題に関する通知
    匯発[2001]64号・国家外貨管理局2001年3月27日施行
以下、上記の規定に記載されている、転廠に関わる対外決済手続について解説します。

2.転廠の形態と送金手続

転廠の形態は、以下の4つに分類できます。

「来料加工企業から進料加工企業への転廠(来料転進料)」「進料加工企業から進料加工企業への転廠(進料転進料)」「進料加工企業から来料加工企業への転廠(進料転来料)」「来料加工企業から来料加工企業への転廠(来料転来料)」。

この内、来料転来料に関しては、対外送金が行われませんが、進料が絡むその他の3形態については、転廠に際して外貨決済が必要となります。それに際しての、手続・必要書類は、次の通り規定されています。

(1) 来料加工企業から進料加工企業への転廠(来料転進料)

この形態の場合は、製品受入側の企業(進料加工企業)が、貨物代金を対外送金することになりますが、対外送金に必要となる銀行書類は、以下の通りとなります。

  • 積荷地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた輸入通関証明(進口報関単)の正本。
  • 目的地が「中華人民共和国」、貿易方式が「来料結転」と記載され、税関の検査・認定を受けた、転出企業(来料加工企業)の輸出通関証明(出口報関単)のコピー。
  • 転廠契約書(転廠合同)
  • 輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)

(2) 進料加工企業から進料加工企業への転廠(進料転進料)

この形態の場合は、製品受入側の企業が、貨物代金を対外送金する、もしくは、国内の転出企業に代金支払を行うことになります。

国内で代金決済を行う場合(転入企業から転出企業に代金を支払う場合)は、外貨・人民元の双方の支払が可能となりますが、外貨の場合と人民元の場合では、決済を行うに当たって必要となる書類・手続が変わってきます。

<外貨による決済(対外決済・国内決済)>
外貨による決済を行う場合は、対外決済であれ、国内決済であれ、転入企業が以下の書類を銀行に提示して、外貨送金手続を取ることになります。

  • 積荷地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた輸入通関証明(進口報関単)の正本。
  • 目的地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた、転出企業(来料加工企業)の輸出通関証明(出口報関単)のコピー。
  • 転出企業が押印し、税関が確認した輸出代金回収照合書(出口収匯核鎖単)のコピー。
  • 転廠契約書(転廠合同)
  • 輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)
<人民元による決済(国内決済)>
人民元決済を行う場合は、まず、転出企業が、以下の書類を所管の外貨管理局に提出して、外貨回収義務の解除手続を行う必要があります。転出企業側で、外貨回収義務の解除が許可されると、オンラインデータ処理により、転入企業の外貨支払義務が取り消されます。
  • 目的地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた、転出企業(来料加工企業)の輸出通関証明(出口報関単)の正本。
  • 転出企業が押印し、税関が確認した輸出代金回収照合書(出口収匯核鎖単)の正本。
  • 輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)のコピー

なお、人民元決済に関する核鎖手続については、現在、外貨管理局で制度改定が検討されており、近い将来関連規定が公布される予定となっています。

(3) 進料加工企業から来料加工企業への転廠(進料転来料)

この形態については、関連規定に手続明細が記載されていません。

これは、対外決済に関連する進料加工企業が、まず、通常の輸入代金決済として対外送金を行い、転廠後、外貨を(国外から)回収する形態であるため、「転廠に伴う対外送金」という手続が生じず、通常の核鎖手続のみが適用されるためです。

関連規定には、転出企業(進料加工企業)は、通常の進料加工同様に、代金全額を回収することが要請されています。

(4) 来料加工企業から来料加工企業への転廠(来料転来料)

来料加工は、代金決済が伴わない形態であるため、来料転来料の転廠に於いて、対外決済を行うことは禁止されています。

なお、転廠に関わる外貨決済の注意点として、以下が挙げられます。

  • 外商投資企業が転廠に伴う外貨決済を行う場合は、まず、保有外貨を充当し、不足の部分に関して、人民元から外貨の交換が認められます。
  • 規定上、差額決済方式の核鎖(抵扣方式核鎖)が認められています。
この方式は、輸出代金と輸入代金の差額決済を以って核鎖を終了される方式ですが、外貨管理局の事前許可が必要となります。

3.その他

通常は、代金決済に関与しない来料加工企業ですが、対外送金が生じる数少ない例外が、来料加工製品・原材料の国内販売(来料加工転内銷)のケースです。

もちろん、来料加工品は、全量輸出が原則となっていますので、この様な形態は例外的なものであり、所管当局(対外経済貿易部門・税関)の事前許可を取得し、適切な関税・増値税及び延滞金利(輸入段階に遡る)を支払った上で、初めて可能となります。このような手続を踏んだ上で、回収した人民元を外貨に換金し、送金するための手続が、この来料転内銷の対外決済手続です。

対外送金に当たっては、来料加工企業は、以下の書類を銀行に提出して、外貨の取得及び送金手続を行うことになります。

  • 積荷地が中華人民共和国、貿易方式が、「来料原材料の内販(来料料件内銷)」・「来料製品の内販(来料成品内銷)」と記載され、税関の検査を受けた輸入通関証明(進口報関単)の正本。
  • 対外経済貿易主管部門が内販を批准した書類
  • 関連する契約書
  • 輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)
(2004年10月記・3.301字)
丸紅香港華南会社コンサルティング部長・広州会社管理部長
水野真澄

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