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「不良」売掛金の未然防止と対応策(連載の三/全三回)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2016年3月2日

現代のビジネス環境において、商品引渡し時に代金の決済がなされるケースはますます減っており、大口取引における代金の受取人は、通常、支払人に対し一定の決済周期を与えるのが一般的である。とりわけ巨額の資金をやり取りし、その取引頻度も高い商業企業にとっては、決済周期は、ある意味においては、相手方の取引行為を制約する「ツール」にもなっており、このような状況の中で、売掛金が大量に存在することは避けることが難しく、「不良」売掛金の発生を防ぐためには、売掛金の回収リスクを制御し管理する必要がある。

「不良」売掛金の未然防止と対応策について、これまでの筆者の実務経験を踏まえ、事例別に以下の通り整理する。以下の事例は、いずれも個別の会社、個別の案件の秘密情報を含むものではない。
 (連載の一、二はこちら https://chasechina.jp/author/writer7/ 

三、取引後にできること:戦略的対応

◇ 事例c

C社は、ある顧客と製品の品質問題をめぐって争いが生じ、顧客は資金状況が良好であるにも関わらず、C社への支払いを拒否した。C社は何度もその顧客と話をしたが、いずれも失敗に終わり、顧客との交渉を弁護士に依頼した。弁護士は、C社に協力して、証明材料の収集、準備に着手する一方で、C社の顧客との交渉を始めた。交渉に失敗した後、弁護士は直ちに裁判所に提訴したうえで、早急にC社の取引先の口座、固定資産などに対して、財産保全を実施した。

◇ 筆者の分析

1.ビジネス交渉

ビジネス交渉は通常、相手方の考える解決策を探り、係る証拠を収集し、特定するうえで有用である。特に、事実状況が不明瞭であり、自己の証拠資料が不十分である場合、証拠の収集、特定はとりわけ重要であり、相手方がそれほど警戒していない段階で自己に有利となる証拠を収集し又は特定できる可能性が高い(このようなチャンスは1度しかない場合もある)。必要に応じて、相手方との交渉時の話題、質問リスト、証拠収集方法(例えば、録音、相手方の署名確認を要する債務確認書を事前に準備しておくなど)などの方面で弁護士に協力を要請するのもよい(相手方との関係、案件の実情などを踏まえながら、弁護士が交渉に直接参加し、又はあえて交渉に参加しないとすることも考えられる)。

2.財産保全


債権回収案件については、訴訟に移行した場合(又は訴訟に移行することが見込まれる場合)、最も重要な作業の一つは、真っ先に財産保全を開始することである。訴訟に移行した後は、債権回収が実質的に難しい「執行難」が債権者の直面する避けられない問題となるからである。このとき、できる限り早い段階で財産保全を行っておくことは、勝訴判決が単なるぬか喜びとならないようにするための保障でもある。財産保全が不十分な債権回収案件は、後に勝訴した場合でも、実際に回収するのは非常に難しくなる。

通常、裁判所は、債権金額を超える金額の財産保全を認可し、支持することはないため、保全財産を選択するにあたっては、換金が容易な資産(例えば、第三債務者の資産信用状況が良好である場合には、売掛債権、市場における需要が高い在庫など)、目減りしにくい資産(例えば、家屋)を出来る限り選択するようにし、又は相手方を身動きできないようにすることのできる資産(例えば、相手方のリボルビングローンで銀行の抵当に入れられている資産)を選択することが望ましい。もっとも、「不良」売掛金の債務者の資産状況は通常よくなく、保全財産選択の余地はそれほどないと思われる。

実務において、案件の管轄裁判所と保全処分を執行する裁判所が異なる場合があるほか、例えば、財産保全は裁判所しか執行できないことから、紛争は仲裁で解決すると約定している場合などでは、「別の機関で保全」が行われることもある。この場合、異なる地区、異なる機関の間での調整、意思疎通について、とりわけ慎重に効率よく対処する必要があり、さもなければ、財産保全実施までの時間が長引けば長引くほど、保全財産が他の場所に移されたり、第三者に保全を先取りされるなど不利になるおそれがある。

もっとも、売掛金回収の実務においては、個々のケースでは、取引双方の具体的状況、取引自体の状況、相手方の出方(例えば、「品質に問題がある」と難くせをつけて、抗弁してくるなど)、相手方の資産状況、紛争解決機関などの多岐にわたる詳細事項を踏まえて、具体的に処理すべき状況が多いのだが、紙面の関係上、本文ではこれら全てを取り上げることはできず、係る方面で更なる疑問点、見方等があれば、筆者と個別に交流させていただければ幸いである。

(里兆法律事務所が2016年2月1日付で作成)

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