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2016年中国立法作業の概要と展望

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2016年10月6日

2016年4月、中国全国人民代表大会常務委員会、国務院が2016年度の立法作業計画(以下、「2016年立法計画」という)を相次いで打ち出したが、その中では多くの分野における法律法規の改正に言及されている。本文では、 2016年にすでに完成した関連立法作業及び2016年立法計画を踏まえ、外商投資、税務改革、労働保障、環境保護の4分野における立法状況の概要と展望から、係る立法作業が企業(外商投資企業を含む)に与え得る影響を分析していく。

(一)外商投資分野

2016年立法計画においては、「中外合弁企業法」、「中外合作企業」、「外資企業法」(以下、「外資三法」という)の改正を重要項目とすることが明確にされている。

「外資三法」の改正については、中国商務部が2015年に「外国投資法(案)(意見募集案)」(以下、「意見募集案」という)を発布し、「外資三法」の改正における基本スタンスを「三法の一本化」であると明確にしている。主には下記の幾つかの方面の内容が含まれている。

1.内資と外資を同一視し、外商投資企業の組織形態や経営活動を特別に規制せず、会社法などの法律法規を統一して適用すること。
2.外資参入に対する制限的規定を減らすこと。
3.外資によるハイテク産業、エコロジー環境保護産業、現代サービス業などの分野への投資を奨励すること。
4.外資がM&Aを通じて国有企業の改革に参与する場合に、積極的な支援等を行うこと。

「意見募集案」で明確にされている基本スタンス及びその内容を見る限りでは、外資の中国への投資における未来の法律環境は、ますます安定し、透明性を有し、予想可能なものになるであろうと思われる。

係るメディアの報道によれば、中国の商務部が2016年に「外国投資法」を全国人民代表大会の審議にかけようとしている動きがあり、この外商投資の基本法の立法作業の進捗については、引き続き注目していきたい。

(二)税務改革分野

税務分野の改革は往々にして企業の経営に重大な影響をもたらすことが多い。

2016年5月1日から中国全土で全面的に実施されている「営業税から増値税への一本化」改革は、2016年における中国税務分野での最大の政策調整であり、営業税はすでに完全に増値税に取って代わられた。営業税の時と比べると、増値税は税率・徴収率、営業収益の計算、課税方法、発票の管理、申告資料、徴収機関などの各段階において、いずれも大きな違いがあるため、もともと営業税を納めてきた外商投資企業にとっては、管理職や一部従業員(税務担当者だけに限らず)がいずれも係る知識を学習し理解を深めていく必要があり、また、一定期間内においては、多かれ少なかれ企業の税収管理コストが増大することが考えられる。但し、「営業税の増値税への一本化」が全面的に推進されていくにつれ、企業としては、税負担を相当程度に抑えることができるのであって、まさにこれが改革の目標である。

「営業税の増値税への一本化」のほか、「税収徴収管理法」、「不動産税法」、「資源税法」及び「関税法」などの法律法規の改正も2016年の立法計画に組み入れられており、それらも企業にはある程度の影響をもたらすであろうと思われる。

(三)労働保障分野

2016年に中国が労働保障分野において改正した法律法規として「失業保険条例」、「住宅積立金管理条例」、「給与支払条例」などが挙げられる。また、「外国人在中国就労管理条例」及び「外国人永住居住サービス管理所例」も2016年の立法計画に組み入れられている。

これ以外にも、2016年の「労働契約法」の改正問題も世論の大きな注目を浴びている。これに係わる内容としては、書面契約を未締結であった場合に、企業が従業員に対して2倍の給与を支払うべきかどうか、労働者が雇用主で連続して十年勤務し、又は雇用主と2回連続して有期期間労働契約を締結した場合、雇用主は無期労働契約の締結を義務付けられるかどうか、労働契約が期間満了して終了した後に雇用主は従業員に対して経済補償金を支払うべきかどうか、雇用主が労働契約を違法解除した場合に、従業員は労働契約の回復を求めることができるのかどうか、などが含まれている。

上記「労働契約法」の改正問題は、現在まだ世間及び専門家にて検討されている段階に留まり、立法作業の次元にはまだ上げられておらず、改正案意見募集案も打ち出されていないため、2016年内に改正作業が完了する可能性は低いであろいと思われる。しかし、係るメディアが明るみにしたところでは、中国の係る政府高官は、現行「労働契約法」は企業への配慮に欠けており、労働者の保護に大きく偏っているとの見方をしているようであり、今後、「労働契約法」の改正過程においては、さらに各種の利害関係を改めて評価し、均衡をとろうとしていくであろうと考えられる。

(四)環境保護分野

現在、環境保護問題は、政府から世間一般まで、皆が注目している話題である。2015年1月1日に、新「環境保護法」が正式に施行されたが、新法は従来の環境保護体系を大きく調整するものであり、これにより汚染排出許可証制度、環境モニタリング制度、行政地区の枠を超えた汚染防止制度などが整備され、重点汚染物排出総量規制制度が補足され、水と大気の連動型共同規制メカニズムが強化されるなどした。その後、国の環境保護部及び各地方政府が相次いで付帯法規を制定した。新「環境保護法」及びそれに付帯される立法の動きから見ると、将来、企業(とりわけ生産型企業)の環境保護に対する責任がますます重くなっていくことが見込まれる。

2016年の立法計画によれば、2016年の環境分野での重点立法プロジェクトには、以下のものが含まれる。

1.「環境保護税法」
係るメディアの報道によれば、中国はまもなく「環境保護税法」(案)を発布するとされている。「環境保護税法」により環境保護税が初めて徴収されることになり、またそれが汚染排出費に取って代わる(両者の徴収基準は基本的に同じである)もようである。環境保護税は、大気汚染物、水汚染物、固体廃棄物及び騒音を課税対象とし、基準超過、総量超過の汚染物排出に対しては税金を倍に徴収することになる。

2.土壤汚染防止処理法律法規
2016年5月に、中国国務院は「土壤汚染防止処理行動計画」を打ち出し、土地の開発利用は、必ず土壤環境の質の要求を満たしていなければならないと定め、重点汚染物を排出する建設プロジェクトに対しては、土壤の環境アセスメント内容を追加し、また2017年から、地方人民政府は重点業種企業との間で土壤汚染防止処理責任書簡を締結することになると規定した。
土壤汚染防止処理については、これまでずっと中国の環境立法上の空白地帯であり、今後、一連の個別法令及び規範を打ち出されることが予測できるため、企業(とりわけ生産型企業)は関心を払っておくのが望ましい。

3.「水質汚染防止処理法」
2016年6月、中国環境保護部は「水質汚染防止処理法」(草案)を公布したが、同案では、水質汚染に対する処罰の度合いが強められ、環境汚染強制責任保険や水生態環境補償などといった規定が追加された。

紙面の関係上、4分野の立法作業の概要についてだけ紹介したが、この4分野以外にも、2016年の立法計画中には「民法総則」などの企業に影響を与えるその他立法任務なども含まれており、これについても今後、動向を見守っていきたい。

(里兆法律事務所が2016年8月15日付けで作成)

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