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「インターネット広告管理暫定弁法」の解読

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2016年11月21日

2016年7月4日、国家工商行政管理総局は「広告法」改正に続き、「インターネット広告管理暫定弁法」(以下「『暫定弁法』」という)を公布し、インターネット広告の規範化を図り、「広告法」を踏まえて「インターネット広告」の範囲、インターネット広告の掲載要求、違法行為類型及び処罰などをさらに明確にした。

2015年9月1日付けで正式発効した、改正後の「広告法」においては、「インターネットを利用して広告活動に従事する」ことを「広告法」の管理範囲に組み入れることを明確にし、「広告法」第44条第1項では、インターネットを利用して広告活動に従事する場合、「広告法」の各規定を適用すると規定している。

「暫定弁法」の内容を見る限り、全体的には、「暫定弁法」と「広告法」の関係は、特別法と一般法、下位法と上位法の関係にあり、「暫定弁法」は「広告法」の規定を細分化し補足したものである。

「暫定弁法」の関連内容について、筆者は以下の通り簡潔に分析し、提示する。

インターネット広告の範囲(「暫定弁法」第3条)
法律規定の主な内容 インターネット広告とは、ウェブサイト、ウェブページ、ウェブアプリケーションプログラムなどのインターネットメディアを通じて、文字、画像、オーディオ、動画又はその他形式で、直接又は間接的に商品或いはサービスの販売を促進するための商業広告を指す。
前項でいうインターネット広告には、以下のものが含まれる。
(1)商品又はサービスの販売を促進するための、ハイパーリンクされた文字、画像、或いは動画などの広告。
(2)商品又はサービスの販売を促進するための電子メール広告。
(3)商品又はサービスの販売を促進するための有料検索広告。
(4)商品又はサービスの販売を促進するための商業ディスプレイにおける広告。但し、法律、法規及び規則に定められる、経営者が消費者に提供すべき情報のディスプレイは、その規定に従う。
(5)その他インターネットメディアを通じて、商品又はサービスの販売を促進するための商業広告。
筆者による解読 ●「暫定弁法」は「定義+列挙」の方式により、「インターネット広告」の範囲を画定している。そのうち、「定義」の部分は「広告法」第2条における「広告」範囲の画定と一致している。
●上記の(1)によると、販売促進の性質を有する限り、商品又はサービスを含むハイパーリンクは、「暫定弁法」に基づき、すべてインターネット広告に該当する可能性がある。
●上記の(2)によると、事業者の配信する電子メールを広告の範囲に組み入れることを明確にした。「広告法」第43条と合わせて、如何なる組織又は個人も、当事者の同意又は請求を得ずに、その住宅、交通手段などへ広告を送付してはならず、電子情報方式により広告を送付してはならない。電子情報方式により広告を送付する場合、差出人の実名と連絡方法を明示するとともに、受信者に対して今後受信を拒否する方法を提供しなければならない。
●上記の(3)によると、有料検索をインターネット広告の範囲に組み入れることを明確にした。「インターネット情報検索サービス管理規定」では、インターネット情報検索サービスの定義を定めており、「有料検索」をはっきりと区別するよう、各件ごとにはっきりとした表記を加えなければならないことを明確にした。「暫定弁法」では、これをインターネット広告の範囲に明確に組み入れた。料金を払うことで通常の検索順位又は表示順を変える情報については、今後、はっきりと区別をつけるほかに、「広告」の文字をはっきりと明記する必要がある。
●上記の(4)、工商部門の解読によって、商品の商業的性質をディスプレイするウェブページでは、消費者の知る権利以外のその他販売促進の性質を有する記載、ディスプレイ(例えば、微商(WeiboやWechatを利用して商売を行う者)が公表する商品紹介など)はインターネット広告と認定される可能性があり、「広告」の文字を表記する必要がある。
●上記の(5)は包括的条項に該当し、これから絶えずに創出されるインターネット広告の形式をカバーするものである。

インターネット広告の掲載を制限又は禁止する範囲(「暫定弁法」第5、6条)
法律規定の主な内容 (1)法律、行政法規の規定において生産・販売が禁止される商品又は提供が禁止されるサービス、及び広告の掲載が禁止される商品又はサービスについて、広告をデザイン、制作、代理、掲載することを禁止する。
(2)処方薬及びたばこに関するインターネット広告の掲載を禁止する。
(3)法律、行政法規の規定に基づき、広告審査機関の審査を経なければならない特殊商品又はサービスの広告は、審査を経なければ、掲載してはならない(※1)。
筆者による解読 ●インターネット広告の掲載を制限又は禁止する範囲について、「暫定弁法」の規定は「広告法」で広告の掲載を制限又は禁止する範囲の規定とはほぼ一致している。
●「暫定弁法」で言及されていない、又は明確にされていないにもかかわらず、一定の特殊性を持つ広告(例えば、酒類広告、教育・研修広告、投資誘致など投資収益が期待される商品又はサービスに関する広告、不動産広告、農作物の種子、林木の種子、草の種子、家畜種、水産種苗及び種苗養殖に関する広告など)は「広告法」などの関連規定に従わなければならない。
●同時に、インターネット広告は「広告法」規定の広告内容に関する準則を守らなければならない。例えば、絶対的表現を使用してはならない、など。

インターネット広告に対する特段の要求(「暫定弁法」第7条、第24条)
法律規定の主な内容 (1)有料検索広告を通常の検索結果とはっきりと区別しなければならない。
(2)ユーザーの正常なインターネット利用を妨げてはならない。
(3)ウェブページにポップアップなどの形式で掲載される広告には、「閉じる」ボタンをはっきりと明記し、1回クリックして閉じられるよう確保しなければならない。
(4)欺瞞の手段により、ユーザーに広告内容をクリックするよう誘ってはならない。
(5)許可を得ずに、ユーザーが送付する電子メールに広告又は広告ハイパーリンクを添付してはならない。
筆者による解読 ●上記の(4)と(5)は「暫定弁法」の新たな規定であり、これに違反した場合、是正するよう命じ、一万元以上三万元以下の過料に処する。

インターネット広告のプログラマティック・バイイング(「暫定弁法」第13条から15条、第26条)
法律規定の主な内容 (1)広告デマンドサイドプラットフォームの経営者(インターネット広告掲載者、広告経営者):広告の出所などをはっきりと明記する。
(2)媒介プラットフォームの経営者、広告情報交換プラットフォームの経営者、媒介プラットフォームのメンバー:違法広告であることを明らかに知っており、又は知っているはずである場合、削除、ブロック、ハイパーリンク削除など技術上の措置及び管理上の措置を講じて、制止しなければならない。
(3)また、上記いずれの主体も、契約相手方の主体資格証明書類、実名、住所及び有効な連絡方法などの情報を検査し、登記ファイル簿を作成し、定期的にチェック、更新する義務を有する。
筆者による解読 ●広告の「プログラマティック・バイイング」方式は、インターネット広告の独特な経営スキームであり、「アドネットワーク」と通称し、情報技術により広告の買付及び広告掲載が自動的に進むことができるものである。「暫定弁法」では初めてこれを規範化した。よく見受けられる「アドネットワーク」には、百度(Baidu)、搜狗(Sogou)、タオバオ、京東商城販売などのアドネットワークがある。
●「暫定弁法」では、主に媒介プラットフォームの経営者などに対して、審査したり、措置を講じたりする義務と責任、及び係る罰則(是正命令及び罰金)を明確に設けているが、広告デマンドサイドプラットフォームの経営者に対しては、審査したり、措置を講じたりする義務と責任を設けていない。そのため広告デマンドサイドプラットフォームの経営者は行政処罰といった行政責任を負う必要がないと思われるが、民事責任などを負う可能性は排除できないであろう。
●このほか、インターネット広告経営活動に参与せず、インターネット広告のために情報サービスのみを提供するインターネット情報サービスの提供者は、その情報サービスが違法広告の掲載に利用されたことを明らかに知っており、又は知っているはずであるにもかかわらず、制止しなかった場合、「広告法」第64条規定に従い、処罰を受ける(違法所得の没収や違法所得を参照に設置する高額の罰金など)。これらの罰則は、媒介プラットフォームの経営者などに適用される罰則(是正命令及び罰金)よりも著しく重い。

インターネット広告で禁止する不正競争行為(「暫定弁法」第16条)
法律規定の主な内容 (1)アプリケーションプログラム、ハードウェアなどを提供、又は利用して、他者が正当に取り扱っている広告に対し、ブロック、フィルター、表示の遮蔽、早送りなどの制限措置を講じる。
(2)ネットワーク経路、ネットワーク設備、アプリケーションプログラムなどを利用して正常な広告データ転送を妨げ、他者が正当に取り扱っている広告を改ざんし又は覆い隠し、無断で広告の割り込み掲載を行う。
(3)虚偽の統計データ、伝達効果、又はインターネットのメディアとしての価値を利用して、不適正な見積り価格に導き、不正な利益を図り、又は他者の利益を損なう。
筆者による解読 ●「広告法」第31条では、広告活動において如何なる形式の不正競争も行ってはならないという原則的規定があるが、従来の広告と比べると、「インターネット」を通じて伝達するというインターネット広告の独特性があるため、「暫定弁法」では、インターネット広告活動に対応すべく、不正競争行為の類型を具体的に列挙している。
●なお、現在のところ、「暫定弁法」及び「広告法」のいずれも、広告活動で発生する不正競争行為について明確な罰則を設けていない。筆者は、広告活動で発生する不正競争行為には「不正競争防止法」が適用されると認識している。

違法行為に対する処罰主体(「暫定弁法」第18条)
法律規定の主な内容 (1)広告掲載者所在地の工商部門が管轄する。
(2)困難である場合又は先に発見し、通報を受けた場合、広告主、広告経営者所在地の工商部門へ移送して処理させることができる。
筆者による解読 ●上記規定は「工商行政管理機関行政処罰手続き規定」と同じである。つまり、「違法行為の発生地」にある工商部門が管轄することを原則とする。また、例外規定を設けている。
●インターネット広告違法行為についても、「同一の違法行為に対し二重処罰しない」原則は同じく適用される。つまり、同一の違法行為に対し、管轄権を有する工商部門がいくつかあるものの、通常、一回しか処罰することができない。なお、同一の製品の広告において、「広告法」又は「暫定弁法」の複数の規定に違反した箇所がいくつかあった場合、複数の違法行為に該当すると工商部門に認定されたことで、複数地の工商部門に処罰される可能性がある。
●このほか、「暫定弁法」の規定に基づくと、工商部門のインターネット広告に対する技術上のモニタリングの記録資料は、将来、行政処罰の電子データ証拠になることが見込まれる。

(里兆法律事務所が2016年10月8日付で作成)

(※1)主に、医療、薬品、特殊医学用途配合食品、医療器械、農薬、動物用医薬品、健康食品の広告などを指す。

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