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「民法総則」について企業の注意すべき点

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2017年5月17日

2017年3月15日、第十二期全国人民代表大会第5回目の会議において、「中華人民共和国民法総則」(以下、「『民法総則』」という) が可決され、2017年10月1日から施行される。「民法総則」は自然人、法人、民事権利、民事法律行為などの方面に及んでおり、本稿は企業として注意すべき点のみについて簡潔に分析し、コメントする。

一、商事制度について
1.法定代表者の過失によって法人に損失を与えた場合、内部で求償することができる

法律規定 第62条:「法定代表者が職務執行により、他人に損害をもたらした場合、法人が民事責任を負う。法人が民事責任を負担した後、法律又は法人定款の規定に基づき、過失のあった法定代表者に対して償還請求することができる。」
コメント 「民法総則」では、法定代表者の過失行為について内部で求償することができることを明確にしており、法人権益の保障には有利であり、企業は定款において係る規定を定めることができる。

2.職員による職務上の行為は企業を制約する

法律規定 第170条:「法人又は非法人組織の業務上の任務を執行する者がその職権範囲内の事項について、法人又は非法人組織の名義で民事法律行為を実施した場合には、法人又は非法人組織に対して効力を生ずる。その業務上の任務を執行する者の職権範囲に対する法人又は非法人組織の制限は、善意の相手方に対抗することができない。」
コメント 本条は、職員による職務上の行為が法人又は非法人組織を制約することを明らかにした。従って、企業が業務担当の管理を強化することをお勧めする。職員の職務の範囲を明確化し、職員の口頭での承諾の効力を排除するなどの方法を通じて、業務担当が無断で承諾をしたことで企業に損失を与えることを最大限に回避することが可能である。

3.清算義務者が清算義務の履行を怠った場合、民事責任を負わなければならない

法律規定 第70条:「法人が解散する場合、合併又は分割の事由がある場合を除き、清算義務者は遅滞なく清算組を結成して清算しなければならない。法人の董事、理事などの執行機関又は意思決定機構の構成員は清算義務者にあたる。法律、行政法規に別段の規定がある場合、当該規定に従う。清算義務者が清算義務を遅滞なく履行せず、損害をもたらした場合、民事責任を負わなければならない。主管機関又は利害関係人は、係る人員を指定して清算組を結成し、清算を行わせるよう人民法院に申し立てることができる。」
コメント 清算業務の履行を怠った責任者は、清算組の構成員から清算義務者まで拡大されたため、係る清算義務者が清算組の構成員を担当していなくても、清算組の構成員に対し、清算義務を速やかに履行するよう督促しなければならない。

二、訴訟時効及び除斥期間について
1.訴訟時効は3年に変更した

法律規定 第188条:「民事権利の保護を人民法院に請求する訴訟時効期間は3年とする。法律に別段の規定がある場合、当該規定に従う。」
コメント 訴訟時効は「民法通則」の2年から3年に変更された。企業としては、移行期間において訴訟時効の経過措置がどのように規定されるかについて、今後注意を払っていく必要がある。

2.重大な誤解による取消権の除斥期間は3ヶ月に調整した

法律規定 第152条:「次の各号に掲げる事由のいずれかに該当した場合、取消権は消滅する。(一)当事者が取消事由を知った、又は知るべきであった日から1年内に、及び重大な誤解のあった当事者が取消事由を知った、又は知るべきであった日から3ヶ月内に取消権を行使しなかった場合。」
コメント 重大な誤解により取り消した場合、除斥期間は従来の1年から3ヶ月に調整した。この点についても同様に、企業は今後、移行期間において除斥期間の経過措置がどのように規定されるかについて、注意を払っていく必要がある。

三、個人情報保護について

法律規定 第111条:「自然人の個人情報は法律による保護を受ける。いかなる組織及び個人も、他人の個人情報を入手する必要がある場合、法に依拠して取得し、且つ情報の安全を確保しなければならず、他人の個人情報を不法に収集、使用、加工又は伝送してはならず、他人の個人情報を不法に売買、提供又は公開してはならない。」
コメント 「民法総則」は民事基本法の次元で個人情報権を確立した。個人情報の保護は近年、社会から注目を浴びている話題であり、企業は十分な注意を払う必要がある(特に、消費者情報、従業員情報の保護)。

四、その他企業として注意すべき点
1.第三者の詐欺により行った民事法律行為を取り消すことができる

法律規定 第149条:「第三者が詐欺行為を行い、当事者の一方をして真実の意思に背いた状況下で実施させた民事法律行為について、相手方当事者が当該詐欺行為を知った、又は知るべきであった場合、詐欺にあった側は、人民法院又は仲裁機構に取消しを請求する権利を有する。」
コメント 第三者の詐欺によって、当事者をして真実の意思表示に背いた状況下で法律行為を実施させた場合も同様に、詐欺にあった側が取消権を有する。これは「契約法」における契約の「一方が詐欺」をした場合に取り消すことができるという規定の枠組みを逸脱している。

2.連帯責任を負った後の求償制度を明確にした

法律規定 第178条:「2人以上が法に依拠して連帯責任を負う場合、権利者が一部又は全部の連帯責任者に対し、責任の負担を請求する権利を有する。連帯責任者の責任分担割合は、それぞれの責任の度合いに応じて確定される。確定することが困難である場合、均等に責任を負う。実際に負った責任が自分の責任分担割合を超えた連帯責任者は、その他の連帯責任者に償還請求する権利を有する…」
コメント 連帯責任を負った後の責任分担について、「民法総則」では連帯責任者の内部で求償するときの責任分担割合をさらに規定した。

(里兆法律事務所が2017年5月12日付で作成)

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