こんにちわ、ゲストさん

ログイン

中国ビジネスにおける資金準備

中国ビジネスレポート 法務
王 穏

王 穏

無料

2006年3月24日

<現地法人設立の手引き>

実例から学ぶ中国ビジネスの法的保険

中国ビジネスにおける資金準備

――金・物・情報・人そして「黄色い信号」の中国ビジネス

王 穏

 

中国でのビジネスを信号の「黄色い信号」に例えることができる。というのは、誰でもビジネスができる青信号でもなく、誰もビジネスができない赤信号でもない。つまり、一定のハードルがあって、乗り越えた者のみが勝ち組になる「黄色い信号」は、現代中国でのビジネスを形容するもっとも適切な言葉ではないかと思う。

周知の通り、中国では、特定の業種を除いて、14万米ドル(10万米ドルのところもある)があれば、外商独資企業を設立できる。場所を見つけ、人員を備えれば、一事業体ができ上がり、中国ビジネスのスタートを切ることができる。一見すると誰でも簡単にできる「青信号」という状態だが、一般のビジネスリスク、そして社会主義市場経済・法治の途上国の中国ならではのカントリーリスクがこの「黄色い信号」のハードルになっている。

本シリーズでは、そのハードルのうち、金、物、情報、人そして五番目の要素である保険について述べていきたい。

 

1、   金についてーー年間の予算として100万人民元の出費が必要

 

新「会社法」と外資法の優劣など理論上の議論は別として、実務上、14万米ドルで外資企業を設立できる。しかも、1年以内に払い込めばよいことである。

ただし、この14万米ドル(112万人民元)とは、最低基準の「軍資金」である。上海の相場から見れば、各企業の実情によって多少相違するものの、たとえば以下の通り、最初の1年に100万人民元近くの固定費用がかかってしまう。

1)    テナント料――18万人民元〜

上海中心部の普通のオフィスビルで120平米の場合

2)    人件費――42万人民元〜

   現地人件費――24万人民元〜(6万人民元/人・年、4人で計算)

ホワイトカラーを雇用すれば、一人平均月給は、どうしても3,0004,000元になり、保険も計算しなければならない。

   派遣人件費――18万人民元〜(1.5万人民元/人・月、1名で計算)

3)    諸経費――37万人民元〜

   設立費用――3万人民元〜

   内装費用――5万人民元〜

   OA機器――5万人民元〜

   会社運営維持費――12万人民元〜(光熱費、事務用品、電話代、登録更新費用など1万人民元/月で計算)

   営業費用――12万人民元〜(1万人民元/月で計算)

4)    その他――5万人民元〜

 

  翌年の必要経費、初年度においての特別な出費などを考えれば、収入が入らないければ14万米ドルの資金があっという間になくなってしまう。また、収入が入る場合でも税金がかかってしまうので、利益率がそれほど高くない業種の場合、資金繰りに苦しむことにもなる。

  従って、単に14万米ドルの出資だけではなく、余分に軍資金を捻出する覚悟ができなければならない。タイムリミットを設定して、その間に採算のめどが立たない場合には、撤退する覚悟も必要な一方、節約策も必要であろう。

ただ、中国ビジネスにおいては削ったら、上手く行くものが行かなくなることも十分念頭に置かなければならない。

 

【事例A

Aさんは、個人出資で外資コンサルタント会社を設立した。見栄えを重視したことが裏目に出て、家賃の捻出に苦しむ中、何回か家主に家賃の取立てをされるようになった。Aさんは出張も多いため、家主との交渉を現地の従業員に任せたが、家主の取立てに追われる従業員もとうとう嫌気をさして、家主がOA機器を留置しようとしたときに、何も言わずそれを黙認した挙句、全員が他社に転籍した。Aさんが戻ってきたときは、会社も実質上なくなっていた。

 

【事例B

Bさんは、現地法人を設立して、市場価格よりも高い給料を出して従業員を雇用した。後に従業員から社会保険の手続きをするようにと要求されたが、現地法人が予想以上に費用がかかっているのこともあって、出し渋った。そして、現地従業員全員対Bさんで社会保険加入について対立が深まる中、Bさんはついつい「日本本社も経営が苦しいから社会保険が出せない」、「高給を出しているから、社会保険を自分で負担しなさい」などと言ってしまい、現地法人は、もう運営どころではなくなった。

 

【コメント】

日本の場合300万円で有限会社を作れるし、中国では、外資の場合、14万米ドル、名義借りの場合、10万人民元(新「会社法」では3万人民元でも可能になったが)で会社を作れることは作れるが、それで万事OKではなく、後の運営管理の費用や何かの突発事件がある場合、その資金準備をしっかりし、経営者としてその経営リスクを当然負わなければならない。

上記の事例に弁護士がその解決に入ったが、特にAさんの場合、関係資料も紛失してしまい、家主に対する対抗手段もとりようがなく、お客様にも甚大な迷惑をかけた。

 

誰でも簡単に会社ができる時代になったが、その分他の企業との間、さらに日系企業同士での競争が厳しくなったとも言えよう。「軍資金」がなければ、いくら戦上手と言っても、部下がついてこない、関係取引先が離れていく、懇意にして頂いた得意先の信頼を裏切ることになる。さらに、証拠の紛失、関係者の不協力などにより、法的対抗手段や弁済措置も取れなくなる。

 

 

 

(つづく)

(2006年3月記・2,043字)
上海ジョイハンド(慧元)法律事務所 弁護士
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 海外支援 アドバイザー

 王 穏

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ