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環境保護政策の圧力が企業に与える影響を法的視点から考察する

中国ビジネスレポート 法務
邱 奇峰

邱 奇峰

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2018年5月9日

2016年以降、国は環境保護への取り組みをますます重要視し、中央環境保護監督検査組による全国各省での一斉監督検査、北京・天津・河北における「青空を取り戻す」運動、環境保護税法の正式な発効などの「環境保護政策圧力」の影響を受け、多くの企業が環境条件の改善、移転、ひいては会社閉鎖、稼働停止に追い込まれている。例えば、「三廃」とされる廃水、廃ガス及び固体廃棄物の排出問題があることを理由に、環境保護部門に800万元超の巨額な過料に処されたため、最終的には生産を停止せざるを得なくなってしまったA社のケース、また、その入居先の園区が環境アセスメントを通過していなかったため、住所移転を検討するしかないB社のようなケースもある。

企業を閉鎖する場合も、一時的に生産停止したうえで移転する場合も、企業と従業員との労働関係に影響が生じてくるはずであり、また、企業が住所を移転する際には、転出元となる場所での固体廃棄物の処理や転入先の選択における対応が不適切であった場合には、企業自身にも影響が及んでくることになる。よって主にこの2つの視点から、環境保護政策の圧力が企業に与える影響を簡潔に分析する。

一、環境保護政策の圧力が企業と従業員との労働関係に与える影響

(一)企業の生産停止、環境条件の改善と従業員への給与の支払い

環境保護政策の圧力のもと、企業が生産停止及び環境条件の改善を求められた場合、企業は生産停止期間における従業員給与を支払うのかという法律問題に直面することになるが、この問題について、以下の通り簡潔に分析する。

■労働部が1994年に公布した「給与支払暫定規定」(労部発[1994]489号)第12条規定によると、労働者の原因によらず、組織が操業停止、生産停止した場合、最初の1カ月目については、使用者は従来の給与基準に基づき労働者に給与を支払わなければならない。1カ月を経過した後において、労働者が正常に労働を提供した場合、労働者に支払う労働報酬は現地の最低給与基準を下回ってはならない。

■企業が操業・生産を停止して1カ月を経過した時点で、労働者が正常に労働を提供しなかった場合、「労働関係に係る問題を適切に処理することに関する労働社会保障部弁公庁による通知」(労社庁函[2003]257号)第2条の規定によると、企業は従業員に生活費を支払わなければならない。但し、当該法令において生活費の基準についての規定は設けられておらず、その場合、企業は現地の規定にならう必要がある。例えば、「北京市給与支払規定」、「安徽省給与支払規定」、「山東省企業給与支払規定」などの法令規定では、生活費は現地最低給与基準の70%を下回ってはならないとされている。「江蘇省給与支払条例」、「河北省給与支払規定」などの法令規定では、生活費の基準は現地最低給与基準の80%を下回ってはならないとされている。

(二)企業の移転と労働契約の解除について

環境保護政策の圧力のもとでは、企業によっては、例えば、入居先の園区が環境アセスメントを通過していなかったなど、企業自らの原因によらずに、住所移転を求められることもあるが、このような場合、もしも従業員に労働契約の解除及び経済補償金の支払いを要求されたならば、企業はどのように対処すべきかについて簡潔に分析する。

■企業が同一市内で移転する場合、通常、労働者の契約履行に顕著な影響をもたらすことはない。広東省高級人民法院による「労働争議案件における難題の審理に関する返答」(粤高法[2017]147号)第9条の規定を参照すると、企業がそれを補うための合理的措置(例えば、送迎バスの提供、交通手当の支給、勤務時間の適切な調整など)を講じたならば、労働者が労働契約解除を主張する理由に欠けると認定されるべきであり、企業は経済補償金を支払う必要はない。

■企業が省や市の枠を超えて移転するのであれば、移転することで労働者に不利な影響がもたされることは確かであり、また、企業がそれを補うための措置を講じたとしても契約履行が困難である場合には、労働者からの労働契約の解除及び経済補償金の支給といった主張は合理的な要求となり、通常、労働仲裁機構又は裁判所に支持されるはずである。

二、環境保護政策の圧力が企業移転に与える影響

(一)転出元での対応について

■まず、「工業企業の閉鎖、移転及び元の場所の再開発利用過程における汚染防止改善作業を強化することに関する通知」(環発[2014]66号)の規定を踏まえ、企業が閉鎖し移転する前に、移転において引き起こし得る突発的環境事故の危険源及びリスク要素をしっかりと点検したうえで、それぞれのケースを踏まえた環境緊急対応マニュアルを制定し、必要に応じて、所在地の県級環境保護部門に届け出ておくとよい。

つぎに必要に応じて、企業は専門機構に委嘱し、元の場所について、環境調査及びリスク評価を行っておくとよい。敷地環境調査及びリスク評価認定の結果、場所が汚染されていると認定された場合、移転企業は浄化処理方案を作成し、浄化処理責任を負わなければならない。

■また、国務院の公布した「土壌汚染防止処理行動計画」(国発[2016]31号)の規定によると、土壌については「汚染した者が浄化処理する」という原則を採用しているため、土壌汚染をもたらした組織又は個人が浄化処理と修復の主体責任を負わなければならない。もしも土壌汚染が生じてしまった場合、企業は元の場所について土壌汚染調査評価及び修復作業を速やかに行わなければならず、このようにしてようやく円滑な転出を進めていくことができるのである。

(二)移転先の選択

■「環境保護の重点作業を強化することに関する国務院の意見」(国発[2011]35号)及び「産業園区計画段階環境アセスメント関連作業の強化に関する通知」(環発[2011]14号)の規定によると、工業園区は法に依拠して、計画段階環境アセスメント作業を展開し、且つ係る環境影響報告書を作成しなければならないとされている。従って、企業が移転先を選択する際には、移転先が計画段階環境アセスメント許可を取得しているかどうかについても注意を払う必要がある。

■「中華人民共和国水質汚染防止改善法(2017年改正)」第45条の規定によると、工業集約型エリアでは、付帯施設として汚水集中処理施設を建設し、自動モニタリング設備を設置しなければならないとされている。よって、企業が移転先を選択する際には、汚水処理施設等の公共施設が法律上の要求及び自社の需要を満たしているかどうかを確認する必要がある。

■また、企業が移転先を選択する際には、当該移転先に入居している企業のタイプ、川上・川下企業の状況、及び移転先の環境キャパを把握し、当該移転先が自社の実情に適合するかどうかについて、ある程度の事前判断を行っておかなければならない。

(里兆法律事務所が2018年2月2日付で作成)

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