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楼継偉財政部長、財政・税制改革を語る

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2014年7月18日

はじめに
党中央政治局が「財政・税制改革深化総体方案」を決定したことを受け、人民日報2014年7月6日は、楼継偉財政部長にロングインタビューを行った。本稿は、その概要を紹介する。

1.新たな財政・税制改革の特徴
党18期3中全会は、改革全面深化の総目標が中国の特色ある社会主義制度の整備・発展であり、国家のガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化推進であることを明確に提起し、財政は国家ガバナンスの基礎・重要な支柱であることを強調した。これは、中央がわが国現代化建設の全局に着眼して下した重要な判断であり、新たな財政・税制改革に対して提起したより高い要求でもある。

財政制度の按排は、政府と市場、政府と社会(民間)、中央と地方等多方面の基本関係を体現してきたし、経済・政治・文化・社会・生態文明・国防等の分野に深刻に影響を与えてきた。財政・税制は国家ガバナンスにおいて、常に基礎的・制度的・保障的役割を発揮してきた。新たな財政・税制改革の意義は重大である。

新たな財政・税制改革の目標は、「国家のガバナンスシステムとガバナンス能力の現代化に適応する」現代財政制度を確立しなければならないというものであり、これは1994年の財政・税制改革[1]とは大きく異なる。当時の改革は、主として国家と企業、中央と地方の収入関係を規範化するものであり、わが国の主たる税目はあの時に確立されたものである。20年の発展を経過して、現在わが国の税制には多くの変化が生じ、公共財政の機能が強化され、財政・税制と庶民の関係はますます密接となっている。財政・税制改革の深化は、政策上の弥縫ではなく、本来の基礎の上に全局に立脚し、長期に着眼して、制度の刷新とシステムの再構築を進めるものである。

2.制度の刷新・再構築の基本的考え方
新たな財政・税制改革の基本的考え方は、簡単に言えば、「立法を整備し、権限を明確にし、税制を改革し、税負担を安定させ、予算を透明化し、効率を高める」というものである。現在最も緊迫した任務は3つある。即ち、①予算管理制度を改善し、②税制を整備し、③権限と支出責任が適応した制度を確立することである。

3.予算方面の改革
予算方面の改革は内容が比較的多い。これには透明な予算制度の確立、政府予算システムの整備、年度予算コントロール方式の改善、移転支出制度の整備、予算執行管理の強化、地方政府の債務管理の規範化、及び税制優遇政策の全面規範化等の7つの任務が含まれる。

透明な予算制度を確立するための核心は、予算公開を推進することである。今後政府予算・決算の公開内容を更に詳細にし、部門の予算・決算の公開範囲を拡大しなければならない。

重点支出と財政収支の伸び率あるいはGDPがリンクしている事項の整理を検討し、一般にはリンク方式を採用しないこととする。リンク方式は、特定の発展段階において一定の積極的役割を発揮したが、政府の財政支出の硬直化をももたらした。現在、財政収支の伸び率あるいはGDPにリンクしている重点支出は7種類に及び、全国財政支出の47.5%を占めている。半分近くの財政支出が上から下まで硬直化し、科学的でないうえに実際からも乖離しており、実際に基づき支出が計上されるよう改めなければならない。当然、リンクを取り消すことは決してその事業の重要性を否定するものではない。この7種類の支出はいずれも重点ではあるが、重点を保障することは必ずしもリンクさせなければならないわけではない。

年度予算コントロール方式を改善し、年度を越えた予算の均衡メカニズムを確立し、支出予算と政策の余地を拡げなければならない。財政の本質は中長期的な制度手配であり、もし中期計画がなく、予算を毎年均衡させ、財政資金の按排を1年ごとに考慮し、1年ごとに事業を定めていたのでは、長期的な配慮に不利となる。中長期財政計画があれば、皆に将来を見渡すよう誘導することができ、我々は何をすべきか、どれだけの資源があるのか、どれだけの効果があるのかを考慮できるようになる。どこが不十分か分かれば、まずそこを手当し、資金計上において投入を保障することで、より実際に符合することになる。

4.移転支出の整理・規範化
移転支出制度の核心は決して資金規模の大小ではなく、移転支出の方式・構造が合理的であるかどうかを主として見なければならない。わが国の現在の問題は、一般移転支出[2]のウエイトがかなり小さく、特別移転支出[2]の項目が多すぎ、規模が大きすぎ、資金が分散しているということである。

特別移転支出の項目が多すぎると、「地方政府が中央の部門に駆け込んで金を無心する」「バラマキ」現象が容易に形成されるのみならず、中央部門の資金の按排を通じた地方の権限への不適切な干渉を容易に生みだし、はなはだしきは腐敗の温床を醸成することになる。これは大問題であり、整理・合理化・規範化しなければならない。今年は、特別移転支出をすでに220項目から150項目前後に減らしたが、今後さらに減らさなければならない。

改革の主要方向は、「一般を増やし、特別を減らし、業績効果を高める」ということである。「一般を増やす」とは、一般移転支出の安定的な増加メカニズムを整備し、移転支出資金の分配の科学性・公平性・公開性を高めることである。「特別を減らす」とは、特別移転支出を整理・合理化・統合することである。「業績効果を高める」とは、特別移転支出の的確性・適時性を強化し、特別移転支出の定期評価・退出のメカニズムを確立することである。

予算執行管理を強化し、予算制約をハードにすることも改革の重要方面である。全ての支出は予算計上されねばならず、予算に未計上の事項は全て支出してはならない。

5.税制改革の内容
税制改革は主として、次のものが含まれる。
①増値税改革の推進
営業税を増値税に改める範囲を引き続き拡大することを含む。
②消費税制度の整備
改革は、課税範囲・税率構造・課税段階にまで及ぶ。
③資源税改革
資源税の従価課税への改革を推進する。
④環境保護税制度の確立
営業税を増値税に改めることをさらに全面的に実行し、範囲を生活関連サービス業、建築業、不動産業、金融業等の各分野に徐々に拡大しなければならない。

わが国の現行の税制優遇政策、とりわけ地域的税制優遇政策は多すぎる。すでに地域的優遇政策が50項目打ち出されており、全省を包括しているかのようである。企業によっては、地方で投資を行う際、往々にして「多くの店を比較して買い物をする」ようになり、優遇が多いところに投資している。これは構造の最適化・社会の公平の実現に不利であり、公平な競争と市場の統一という環境づくりに影響を与え、現代財政制度確立の要求に適合していない。

今後、専門の税法を除き、その他の法規・発展計画・地域政策を起草する際には、国家の統一した財政・税制、国家が規定した税制優遇政策を突破してはならない。国務院の批准を経ていなければ、企業に対して財政優遇政策を規定してはならない。

6.権限と支出責任の適応
権限と支出責任が適応した制度を確立することは、現代財政体制確立の重要方面である。平たく言えば、中央と地方の「誰が何をやるべきか」に基づき、「誰が支出するか」を決め、さらに分税・移転支出メカニズムを通じて「金」と「権限」を釣り合わせるわけである。

改革の内容としては、主として次のものが含まれる。

(1)現行の中央・地方政府の収入構造が概ね不変であることを堅持する前提の下、税制改革の推進情況に応じて、中央と地方の収入区分をさらに調整する
中央と地方の収入区分を合理的に調整し、公平・簡便・効率等の原則を遵守し、税目の属性・機能を考慮する。
①収入の変動が比較的大きく、比較的強い再分配作用を備え、課税ベースの分布がアンバランスで、課税ベースの流動性が比較的大きい税目を中央税に区分し、あるいは中央の取り分をやや多くする。
②地方の掌握する情報が比較的十分であり、現地の資源配分への影響が比較的大きく、課税ベースが相対的に安定している税目を地方税に区分し、あるいは地方の取り分をやや多くする。
③収入区分の調整後、地方で形成された財政力不足は、中央が税収返還方式を通じて解決する。

(2)各レベル政府間の権限と支出責任を合理的に区分し、中央の権限・支出責任を適切に強化する
①国防、外交、国家安全、全国統一的な市場ルール・管理に関わる事項は中央に集中し、委託事務を減らし、統一管理を通じて全国的公共サービスの水準・効率を高める。
②地域的公共サービスは、明確に地方の権限とする。
③中央と地方の共同権限を明確化する。
④権限が明確になった基礎の上で、中央と地方の支出責任をさらに明確化する。
⑤中央は移転支出メカニズムを用いて、一部権限の支出責任を地方に委託し負担させることができる。

7.財政・税制改革の路線図・タイムスケジュール
新たな財政・税制改革は、ロジックからすると、予算管理制度改革がベースとなり、これを先行させなければならない。

収入区分改革は、関連税目・税制の改革が基本的に完成した後進める。

権限と支出責任が適合した制度の確立には、量的指標とコンセンサスを形成する方案が必要である。

全体の改革は、任務が重く、難度が大きく、時間が迫っている。

今年と来年がカギである。中央の手配・要求に基づき、予算管理制度改革は決定的進展をみなければならず、税制改革は立法・推進面で顕著な進展をみなければならず、権限と支出責任の区分改革は基本的にコンセンサスを達成しなければならない。

2016年に財政・税制改革深化の重点政策・任務を基本的に完成し、2020年に各改革を基本的に完成させ、現在財政・税制を基本的に確立する。

(7月8日記)

[1]楼継偉は1994年の財政・税制改革の立案者の1人である。
[2]日本の地方交付税に近いもの。
[3]日本の補助金に相当。

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