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日本人駐在員を送り込むな

中国ビジネスレポート マーケティング
森辺 一樹

森辺 一樹

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2013年3月26日

 外務省の平成23年版の最新の報告書によれば、海外に在留している邦人の数は現在1,143,357人となる。平成3年の663,049人から約20年間、毎年増加している。1,143,357人の比率を見ると、日本人駐在員が含まれる長期滞在者が7割程で、残り3割は永住者となる。長期滞在者だけを見ると、多い順に米国、中国、英国、タイと続く。
 更に詳しく地域別の在留邦人数を見てみると、平成15年から約7年間で欧米やその他地域が2%程減少する中、アジアは5%以上の伸びを見せている。長期滞在社数だけであれば6%以上の伸びとなる。この調子で今後も日本企業は海外展開する上で駐在員を送り続けるのだろうか。

 最近、大企業を中心にアジア市場でのシェア拡大のため、日本人駐在員を増員する企業が増えている。しかし、駐在コストがかかり、現地事情に精通しない日本人駐在員の役割とは何なのだろうか。生産現場の管理者、日本本社とのやり取りの窓口、現地日系顧客の対応などなど、いずれも費用対効果を考えると腑に落ちない。主要ポストのトップに日本人を置くことに何の意味があるのだろうか。私自身、異国の地で会社を立ち上げた際、現地人との比較で自分がいかに劣っているかを痛感したものだ。

 一方で、欧米などのグローバル企業と言われる企業はどうか。勿論、進出当初は本国から駐在員を派遣し、異国の地で事業の基盤を立ち上げる。しかし、日本企業と根本的に異なるのは、その後だ。基盤が出来上がった後、欧米企業は現地法人の主要ポストのリーダー育成を徹底的に行う。そして可能な限り早期に現地人による現地法人の統治を目指す。その後の駐在員の役割は本社からの現地法人マネジメントだ。現地法人の運営など、任せるべき部分は任せ、それをマネジメントする側に回るのだ。非常に合理的だ。

 よく考えてみれば普通のことなのである。日本で活躍している外資系企業も外国人が本国から来て一生懸命いつまでも異国の地で頑張っているだろうか?マクドナルドにせよ、セブンイレブンにせよ、P&Gにせよ、その他どんな外資系企業でも構わないが、それら企業は皆本国から来た外国人が大きく成長させたのだろうか。応えはノーである。欧米企業は、異国での企業統治が非常に上手い。

 そして、もう一つ日本企業の残念に感じる点は、帰国した駐在員の扱いだ。異国で5年、6年と経験を積んだ駐在員は、その国で、その国の現地人と競争をすれば多くの面で劣ってしまうが、いざ日本に帰国すれば、その国を熟知する最高のマネジメント人材だ。しかし、帰国後、海外とはまったく関係のない仕事をしていたり、帰国してもポストがないなどの話しはよく耳にする。人事部は何をしているのかと不思議に思うことが多々ある。

 日本企業も駐在員を送り込む海外展開から、現地人リーダーを育成する海外展開にシフトし、帰国した駐在員に本社から現地法人をマネジメントさせ、本社のグローバル化を真剣に進めることが急務だ。

(2012年5月 執筆)

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