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出るも地獄、残るも地獄

中国ビジネスレポート マーケティング
森辺 一樹

森辺 一樹

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2013年10月9日

 今回は、先日、私がお招き頂いたある経済団体の会合でのエピソードをお話したい。その団体は、売上数十億円~数百億円の中堅中小企業の経営者で構成されており、業界は様々だが、その多くが製造業であった。

 私の著書、”「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法”(中経出版)を題材にした講演の後、経営者の皆様と様々な経営課題についてお話をする機会を頂いた。中でも最も多かったのが、国内市場の長期的低迷で、今後も業績の伸びに大きな期待が持てない以上、海外展開を更に強化していく必要は感じているものの、その大きな経営判断に悩んでいるというものだった。
 
 売上数十億~数百億の中堅中小企業というと、完成品メーカーへ部品を納める企業が多い。多くが既にアジアに工場を持っている。当初は、完成品メーカーに付いて海外へ出たが、今迄の欧米市場向けの製品とは違い、アジア新興国を中心とした市場向けの製品においては、完成品メーカーも市場からより安価な製品を求められるため、部品の調達を現地企業にシフトさせる動きが強いという。そうなると、完成品メーカーに合わせて更に海外展開を積極化させ、工場設備に大きな投資をしても、採算が取れなくなる可能性が高いというものだった。

 出なければ商売は拡大しないし、出てもいつ切られるか分からない。正に、「出るも地獄、残るも地獄」といった状態だ。

 この現実は今後益々深刻化していくだろう。完成品メーカーのグローバル競争は更に激化するからだ。部品メーカーの場合、いくら品質の良い部品を作っても、アジア新興国では、完成品メーカーがそこまで高い品質の製品を市場から求められないケースが多く、品質以上にコストが優先される。そうなれば、当然部品にも品質以上にコストが求められる。 
 また、仮に、コアな技術を必要とする部品で、現地企業への切り替えが当面は難しい場合でも、完成品メーカーがグローバル競争に負ければ、部品メーカーも一緒に負けることになる。沈む船に乗れば、自分も一緒に沈むということだ。今迄の様に、日本の完成品メーカーは無敵という神話に期待は持てない。

 では、これら部品メーカーは今後どう舵を取るべきなのだろうか?

 確実に言えることは、国内大手への依存体質から脱却する必要があるということだ。日本の中堅中小企業は、過去、日本が好景気だった頃からの大手完成品メーカーへの依存体質が未だに根強い。そこさえ見てれば安泰で、海外へ行くにも何をするにも基本は大手への依存だ。その結果、国内外を問わず営業力やマーケティング力が弱く、海外へ出ても結局は日本で取引をしている大手日系の現地法人との取引に留まっているケースは少なくない。

 しかし、今後、世界の市場で勝つのは他国の完成品メーカーかもしれないし、世界の市場での競合は日本企業ではなく他国の企業かもしれない。だからこそ、今迄の依存体質から脱却し、世界中の顧客候補に目を配り、世界中の競合に目を光らせる、新たな海外進出の時期に来ていると強く感じる。

(2012年10月 執筆)

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