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新幹線問題の決着を予測する(2)

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 則明

田中 則明

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2003年10月28日

<政治・政策>

新幹線問題の決着を予測する(2) 

田中則明

政府・国民ぐるみの大型商談と言えば、航空機の商談がある。

中国政府のリーダーがヨーロッパを訪問する際にはエアバス、アメリカを訪問する際にはボーイングの注文書を手土産よろしく携えて行く。その都度発注数量が増えたり減ったりするが、それは、あたかも中国との「友好度」を示しているかのごときである。見方によっては、激しく鍔迫り合いを繰り広げている航空機生産大国を手玉に取っているようにも見える。大型国際商談というものは、このように「外交の具」とされるのが常である。

で、この航空機の商談と高速鉄道の商談は、どう違うのであろうか?

最大の違いは、一度買ったら買い替えが効かないということであろう。航空機であれば、今回はエアバス200機、次回はボーイング150機などと割り振りができるが、鉄道はそうは行かないのである。しかし、違いはそれのみならず、上海―北京に採用された方式は、将来全国に張り巡らされる鉄道網に採用される公算が極めて大きいということにある。そして、その波及効果は、広大な中国の国土を高速鉄道が覆い尽されるまで続くであろう。ということは、この商談は、航空機の商談とは比較にならない程の大型商談であることを意味する。

中国政府と中国国民は、恐らく、このことを熟知しているに違いない。熟知しているからこそ、商談の行方に神経質になっているのであろう。特に、一部の中国国民は、今、「お上に物申す」をやっておかないと、永久に浮かばれないとの思いにかられ、激烈とも思える言辞で、政府に圧力をかけているのであろう。

ここで、前回、かの宇宙飛行士が呈した疑問、「フランスよりの買い付けを決定するなどということが現時点で出来るであろうか?」に戻ろう。

これは、商談である。いかに規模が大きくとも、いかに外交関係が色濃く影を落とすことになろうとも、商談であることには変わりはない。商談であるからには、価格、納期、国産化比率、品質保証等の諸条件が各サプライヤーより提示される筈である。バイヤーは、それらの諸条件を経済合理性の観点から総合的に評価し結論を出すのが通常の商談である。

では、今回のケースで、くだんのマッサージ師がのたまわれるように、バイヤーである中国政府は、上記の通常の商談の枠を踏み外して、提示された諸条件の総合的評価なしに、「フランスよりの買い付け」に踏み切れるであろうか?

私は、「否」だと見る。

理由は、大き言って三つある。

理由1.極々当たり前のことだが、商談の最終ネゴに入る前に、「○○から買う」など宣言したら、中国側極めて不利な立場に立たされるからである。フランスもドイツも、今回の中国政府―中国国民間の日本を巡る沸騰する議論を耳にして、ほくそえんでいるに違いない。いや、「欣喜雀躍」しているに違いない。何しろ中国国民が「がんばれ!がんばれ!」と声援を送ってくれているのである。しかし、世界に冠たるビジネス魂を有する中国人に、この利害得失の構図が見えていないということはなかろう。

理由2.フランス、ドイツとの間でいつ何時予測不能の外交上のトラブルが起きるかも知れないからである。この二国と中国の間では、比較的国民感情を掻き立てるような外交上、経済上の摩擦が起こることは考えにくいが、今や63億人がひしめき合う地球のこと、どこで何が起きてもおかしくないとも言える。例えば、・・・・・・・・・(止めましょう、不吉なことを考えるのは)。

理由3.契約の全てに対して、中国政府は契約当事者としての責任を負わなければならないし、国民に対しても最終責任を負わなければならないからである。

以下、理由3.を挙げるに至った私の経験を、ご参考までに手短にお話させていただく。

約15年前、上海市が上海地下鉄掘削用のシールド・マシーンの国際入札を行った。入札に参加したのは、日本、フランス、ドイツなどの国の民間企業であった。

私が働いていた日本商社

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