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人事労務は経営者の仕事:“当たり前”って実は深いんですよね

中国ビジネスレポート 労務・人材
小島 庄司

小島 庄司

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2015年9月9日

コラム概要
とても便利な「当たり前」という表現。皆さん、海外で使っていませんか?
この「当たり前」、「ふつうでしょ」、「当然だろ」、「常識やで」という便利でよく使いがちな表現は、実はお互いの理解や信頼関係を壊しかねない危険ワードなのです……。
【1,742字】

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このところ、毎月一週間近くタイで仕事をしています。天津からは直行便がないので、北京や香港を経由して行きますが、どちらでも感じるのは中国人観光客の多さ。雰囲気やお土産の少なさを見ていると、もうかなりカジュアルな旅行という雰囲気ですね。海外(陸続きですが)旅行慣れした人が増えていくということは、仕事人の考え方や価値観も、また変わっていくことにつながるでしょう。

●当たり前を難しくする三つの壁

今回は「当たり前」について。中国でもタイでも経営者の方と話をしていると、「当たり前のことを当たり前にやるようにする。まずここから」という話になります。私も社員に言ったりします。でも、この当たり前って、一歩日本から出てしまうと、実はかなり難しいですよね。なぜ難しいのか改めて考えてみると、壁は三つあるように思います。

壁①:ムラにより違う
ムラとは、自分が所属する社会的単位のこと。国間だけでなく、地方間、会社間、仕事人と学生などでも当たり前は違います。

例えば、日本では出かけるときにハンカチを持っているのは当たり前。私のころは学校で指導されました。でも中国ではハンカチではなくティッシュペーパー(これだって地域などで違うかも)。社内で今日初めてすれ違ったとき、「お疲れさまです」が当たり前の会社もあれば、「おはようございます」の会社もある。

私の失敗談でいえば、iPhone 5S。iPhoneふだん中国にいるため、耳にするのも発音するのも中国語(アイフォンウエス)。ある日、弟の結婚式で彼と話していたら私の話が通じない。何度か変な会話をしていたら突然弟が「あー、ファイブエスね。何言ってるか分からんかった」と笑う。そう、私は中国流に「ごえす」と言っていたのです。iPhoneが誕生したのは私が中国に来てから。日本のテレビを見るのも稀なので日本での読み方を知らなかった……。しかし、まさかバカにされるだけじゃなくて、本当に理解できないとは。くそー。

壁②:どこが違うか分からない
二つ目の壁は、私の失敗みたいに分かりやすい違いであれば気づけても、仕事上の考え方ややり方だと、いろいろな要素が絡みすぎているため、何が当たり前の違いによるものか分からないということです。

例えば、部下の評価でいつも高い点数ばかりつける。これは客観的に部下を評価できない、評価制度の趣旨を理解できていない、理解しているが自己都合を優先してしまう、などの原因が考えられます。でもそれ以外に、中国の学校教育の影響で当たり前が日本と違うことも原因の一つかも。中国の小学校では満点でも当然、90点未満は問題視されるような環境。B以下の評価は部下に失格の烙印を押すように感じている可能性はあります。でも評価の問題から当たり前の違いに気づくのはかなり難しいと思います。

壁③:なぜなのか説明できない
最後は、当たり前の違いに気づいて、その差を埋めようとしても、なぜ違うのかお互い説明することはこれまた難しいということ。日本流に合わせるよう伝えたくても、なぜその方がよいのか説明できない。先ほどのハンカチ文化とティッシュ文化。職責範囲を明確にするのか線引きしないのか。多能工化か分業化か。

当たり前とは「誰がどう考えても、もっともなこと」なので、そのムラで理由や合理性を改めて考えたことがない。だから、理由や合理性を説明しようとしてもできないのは自然なことなのです。

だから、安易に「当たり前」、「ふつう」、「当然」、「常識」などと言ってしまうと、同じ当たり前を共有していない相手にはさっぱり伝わりません。理由や背景が分からないので相手は同じ間違いや行き違いをまた犯す。再度注意を受ける。注意を受けても理解も納得もできない……。こうして皆さんに不満や不信を抱くことになります。これらは相互理解を断ち切る危険ワードなのです。

このように、現地法人の最初の目標である「当たり前のことを、当たり前にやれるようにする」ことは、なかなかどうして奥が深い課題。安易に着手すると手を焼くことになるかもしれません。まずは「当たり前だろ!」と言いかけた言葉をぐっと飲み込んで、「なぜ当たり前なのか?自分は合理的に説明できるだろうか」と考えてみてください。これがまた意外に難しかったりするのです。

ではまた次回!

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