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企業の撤退過程における労働紛争問題(連載の二/全三回)

中国ビジネスレポート 労務・人材
邱 奇峰

邱 奇峰

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2016年6月27日

二、特別な従業員(※1)の労働紛争問題及び企業の対応

1.「三期従業員」の特別補償をめぐる紛争

「三期従業員」とは、妊娠期、出産期、授乳期の女子従業員を指し、企業は解散時に、「三期従業員」との労働契約を終了する権利を有し、このような特別な状況について、法律では特別補償を与えなければならないとの明確な規定はない(一部地区には司法上の見解が出されているが(※2)、このような見解が出されるケースは多くはない)。にもかかわらず、「三期従業員」は残りの「三期」期間についても、賃金を全額支払い、買い取るよう主張してくることが多い。

「三期従業員」が特別補償を主張してきた場合、これに対処するうえで、以下の点に注意しなければならない。

  • ●現地に規定又は司法上の見解がある場合、企業はそれに従い実施すればよい。あくまでも特別補償であるため、これに更に上乗せして支払う必要はない。
  • ●現地に規定又は司法上の見解がない場合、企業は「三期従業員」への特別補償については、自主判断をすることができ、適切に且つ合理的に行えばよい。もしも「三期従業員」が企業の提示する特別補償基準を超えた金額を主張してきた場合、企業はこれを拒否することができる。


2.「労災従業員」の労働契約終了時間をめぐる紛争

企業は解散時に、「労災従業員」との労働契約を終了する権利があるが、「労災従業員」は労災認定、後遺障がい鑑定、労災の賠償などの一連の問題に係わってくるものであり、これら手続きの完成までに非常に長い時間を要するため、企業が「労災従業員」との労働契約を他の従業員と同時に終了させたい場合、労災鑑定結果が出ている「労災従業員」については、実現可能であるが、労災鑑定結果が出ていない「労災従業員」については実現が極めて困難である。なぜならば、「労災従業員」はこの場合、後遺障がい等級が確定されていない状況で労災保険基金(大部分の労災賠償金額を負担する)に給付金の支払いを申請することになるのだが、労災保険基金側は、「労災従業員」の後遺障がい等級が確定されてからでなければ給付金を支給することはできないため、それを待たずして企業が労働契約を終了する場合、企業は「労災従業員」から、労災賠償金全額の支払いを求められ、企業に多額のコストが発生することになるからである。

「労災従業員」の労働契約の終了のタイミングをめぐる紛争に対処するうえで、企業は終了のタイミング、労災の賠償コストなどの具体的な状況を総合的に判断したうえで対処するとよい。例えば、

  • ●「労災従業員」の怪我の状況が軽微であり、後遺障がい等級の認定を受ける可能性が極めて低い場合、当該従業員と協議のうえ、小額の上乗せ補償を適切に行い、他の従業員と同時に労働契約を終了させることができる。
  • ●「労災従業員」の怪我の状況が深刻なものではなく、鑑定を行ったとしても、後遺障がい9級から10級程度であり、人数も極めて少ない場合、企業が撤退のペースを早めたいと考えているのであれば、当該従業員と協議のうえ、企業が労災賠償金を全額負担し、他の従業員と同時に労働契約を終了することも可能である。
  • ●怪我の状況が深刻な「労災従業員」の場合、労災の賠償金額は一般的に非常に多額になり、企業が労災の賠償金額を全額負担することは困難になることが予測される。この場合、当該従業員の後遺障がい鑑定の結果が出て、労災の賠償金給付申請を行ってから、労働契約を終了するか、又は「労災従業員」と協議のうえ、当該従業員を他の関連会社に移籍させ、後遺障がい鑑定、労災の賠償金給付手続きを終えてからの対応を検討するのでもよい。


3.「病気休暇中の従業員」の特別補償をめぐる紛争

企業は解散時に、「病気休暇中の従業員」との労働契約を終了させる権利を有し、解散を理由に「病気休暇中の従業員」との労働契約を終了する場合について、法律では特別補償を与えなければならないとの規定はないが、「病気休暇中の従業員」は、医療期間中に労働契約を解除する状況にならって、医療費助成金又はこれに類似する特別補償の支払いを主張してくることが多い。

「病気休暇中の従業員」が特別補償を主張してきた場合、これに対処するうえで、以下の点に注意が必要である。

  • ●原則的には、医療費助成金及びその他特別補償の支払いはしないほうがよい。なぜならば、これは法定の要求ではないことと、また他方では、モラルハザード、即ち、他の従業員も特別補償を取得したいがために、病気休暇の証明を取得しに行くという事態発生の引き金になる恐れがあるからである。
  • ●重い病気、不治の病(企業は事前に疾病の範囲を決めておく必要がある)を羅患していることが確かである従業員のみに対して、特別補償を適切に行うことを検討する。ただし、その場合、適切な証明書類を提出するよう従業員に求めなければならない。


4.「15+5従業員」の特別補償をめぐる紛争

企業は解散時には、「本企業における勤続年数が満15年であり、且つ法定の定年退職年齢まで5年未満の従業員」との労働契約を終了する権利もあるのだが、この類の従業員も自分は特別な従業員に該当するとして、特別補償を主張してくるのが一般的である。

この類の従業員が特別補償を主張してきた場合、これに対処するにあたっては、例えば、「三期」、「不治の病」などの特別補償をする必要があるなどの特段の事由(これら事由は、一般的に人道的配慮を要するものである)がない限り、大規模な人員整理の過程では、原則的に特別補償を設けないほうがよい。なぜならば、特別補償が過度に多くなると、従業員が様々な理由を設けて、特別補償を求めることが容易となり、企業の撤退に支障を来すためである。

(里兆法律事務所が2016年4月8日付で作成)

(※1)「特別な従業員」とは通常、「労働契約法」第42条に定める従業員を指す。
「労働契約法」第四十二条 労働者が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合、使用者は本法第40条、第41条の規定に従い、労働契約を解除してはならない。
(一)職業病になる危険性のある作業に従事していた労働者が職場を離れる前に職業健康検査を行っておらず、又は職業病の疑いのある患者が診断期間若しくは医学的観察期間にある場合。
(二)本企業において職業病に罹患し又は業務により負傷し、かつ労働能力の喪失又は一部の喪失が確認された場合。
(三)疾病又は私傷により、所定の医療期間内にある場合。
(四)女子従業員が妊娠、出産、授乳の期間中にある場合。
(五)本企業における勤続年数が15年であり、かつ法定の定年退職年齢まで5年未満の場合。
(六)法律、行政法規規定のその他の場合。

(※2)
例えば:
江蘇省:「江蘇省労働仲裁案件討論会議事録」
七、企業が解散、又は法に依拠し取り消された場合、「三期」の女子従業員との労働契約を終了することができるのか。終了する場合、規定に従い、経済補償金を支払うほか、その他待遇も支払う必要があるのか。
使用者が解散する、又は法に依拠し取り消されたことは、労働契約を終了する法定の状況に該当する。従って、使用者に前述の労働契約終了の状況が生じた場合にも、「三期」の女子従業員との労働契約を終了し、かつ規定に基づき、女子従業員に経済補償金を支払う必要がある。女子従業員の適法な権益を守るために、労働者に不利益をもたらさないという原則の下、使用者は女子従業員に三期中の生活費、出産休暇中の賃金、生育費用などを一括払いする必要がある。
広州市:「労働争議案件審理に関する広州市中級人民法院による参考意見」
第二十二条
使用者の原因により、労働契約を終了又は解除することになったことで、労働者が授乳期間待遇を受けられず、損失賠償を主張した場合、労働者の前年度の本人の月平均賃金の20%を基数として、授乳期間から嬰児満1歳までの期間で計算し支払うことができる。

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