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日系企業社員の告発状を読む(13) 最終回

中国ビジネスレポート 労務・人材
田中 則明

田中 則明

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2007年1月22日

記事概要

 董事長の最後の感想は、「A総経理及び会社経営の改善策について何ら提案がなされていない」でした。董事長によれば、この最後の部分が最大の不満とのことでした。

董事長の最後の感想は、「A総経理及び会社経営の改善策について何ら提案がなされていない」でした。

 

 董事長によれば、この最後の部分が最大の不満とのことでした。即ち、起・承・転・結や枕詞などなくても良いから、この部分の「本音」だけは是非書いてもらいたかったそうです。ですが、残念なことにこの告発状には、「何をして欲しい」「何をすべきだ」が全く書かれていません。

 

 手紙の形式を取っていますが、もしこれを面と董事長に向かって言ったらどうなるでしょうか?恐らく、「董事長、A総経理は問題ですよ」、或いは、「董事長、しっかりして下さいよ。人を見る目がないですね」位にしかならないと言うのです。その位、この告発状は、

「ぶっきらぼう」な物言いに聞こえてしまうと言うのです。

 

 董事長としては、せめて、

「A総経理は即刻クビにしてください。そして、残った私達幹部の中から、総経理を選出してください。誰が選ばれても、A総経理よりはずっとましな仕事をしますよ」

とか、

「A総経理を別の人と交替させてください。現在の会社に適当な人材がいなければ、他から引っ張って来てもよろしいのではないでしょうか?」

とか、

「A総経理を即刻交替させて下さい。A総経理の代わりは、Bさんが最もふさわしいと思います。理由は・・・・・・・」

位は最低限書いて欲しかったと言うのです。

 

 会社経営者である董事長にしてみれば、常に「人」の問題は、最大の問題の一つです。ですから、常に、「○○○○で良いのかな?」という目で全ての社員を見ている訳で、「○○○○さんは、辞めさせてください!!!」などという要求を受け取ったところで、それ程

どうっていうことはない、場合によっては、日常茶飯事に属する事柄だと言うのです。

 

 ここまで、董事長の偽らざる感想を聞いて来て、私は、董事長に少し変なお願いをしました。そのお願いとは、「もし、董事長が書き手であったら、どういう告発状を書いたか?」即ち、「董事長の心を揺さぶる告発状はどう書けば良いのか?」を示して欲しいというものでした。

 

 案の定、董事長は、「いや、私は文才がないから、お手本なんか書けませんよ」と拒否されました。ですが、結局、多くの在中日系企業の経営を助けると思って一肌脱いでいただきたいとの私の懇願に根負けし、模範的「告発文」を書いてくれました。以下が、その全文です。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

○○○○董事長 様

 

◇◇◇の経営に関する提案の件

拝啓

 日一日と寒さが身に染みるこの時節柄、董事長におかれましては、

公私に亘り大変お忙しい毎日を送られているものと推察申し上げます。

 

 さて、突然、このような手紙を、しかも、A総経理が不在の折に受け取られ、驚かれたことでしょうが、実は、日頃から会社に関していろいろと思うところがあり、数人の社員と意見交換をした折、

多くの社員が同じような思いをいだいていることが分かりました。その多くは、建設的な意見であり、それを董事長に知っていただくことがこの会社の更なる発展にとって役立つと判断し、誠に不躾とは存じますが、筆を取った次第です。

 

 以下、社員有志の腹蔵のない意見として、聞いていただければこの上ない幸せです。なお、以下に述べる意見は、決して個人に対する恨みや妬みから出たものではございません。あくまで、会社全体、経営者、社員のためを思ってのものです。

 

 私共は、総じてこの会社はうまく行っていると見ていますが、かといって、問題が全くない訳ではないということで意見の一致を見ました。私共がまとめた現在この会社が抱えている問題は、下記の通りです。(優先順位の高いものから並べています)

 

1.A総経理のリーダーシップ

(1)A総経理が会社トップとしての資質に欠ける点

   人間性:a.利己的である。

       b.他人に対する思いやりが欠如している。

   能力 :a.管理能力が欠如している。

       b.業務能力が欠如している。

  (2)A総経理の行動が招いた悪影響

   対社内:a.人材の流失を招いた。

       b.社員のやる気を低下させた。

       c.顧客を失った。

       d.会社の損失を招いた。

   対社外:a.会社の社会的評判を落した。

       b.訴訟を起された。

       c.役所の改善指導を受けた。

 

2. 社員持ち株制度

 

 

3. 業績考課システム

 

 

 その中でもとりわけ、1.の問題は、早急に解決しなければならない課題だと考えます。

 

  私共としましては、ここ数年、ことある毎に、A総経理にリーダーとしての役割を存分に発揮していただくよう働きかけを行って来ました。ですが、最近では、その努力の甲斐もなく、一向に事態は改善しないとの判断を余儀なくされております。勿論、「人」に係る問題ですので、その解決は、一筋縄では行かないこと重々承知はしておりますが、私共としましては、早急に董事長には私共が述べたことが本当かどうかの調査着手をお願いしたいと存じます。また、もし、上記が事実であると判明した場合には、早急に、対策を打っていただけますよう切にお願い申し上げます。

 

 また、2.3.の問題に関しても、早い機会に何らかの手を打っていただければ幸甚に存じます。

 

 以上、私共の力不足を棚に上げ、お耳に痛いことを申し述べましたが、これらは全て会社のためを思ってのこととご容赦いただけ

ますようお願い申し上げます。

 

 では、まもなく寒い季節が到来しますが、董事長におかれましては、風邪など召されませぬようくれぐれもご自愛下さいませ。

              ◇◇◇会社 有志   (完)

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