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労働契約法&実施条例の比較

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旧ビジネス解説記事

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2008年9月30日

記事概要

9月18日、国務院は『労働契約法実施条例』(以下『実施条例』と略称)を公布し、『労働契約法』の内容を一部具体化する規定を設けた。本稿は『労働契約法』、『実施条例』の比較を通して、重要と思われる内容につき、整理と分析を加えてみたい。

9月18日、国務院は『労働契約法実施条例』(以下『実施条例』と略称)を公布し、『労働契約法』の内容を一部具体化する規定を設けた。本稿は『労働契約法』、『実施条例』の比較を通して、重要と思われる内容につき、整理と分析を加えてみたい。

 

1.使用者

 

『労働契約法』第2

『実施条例』第3条、第4

²  中華人民共和国内の企業、個人経済組織、民営非企業組織等。

²  国家機関、事業組織、社会団体。

²  会計事務所、法律事務所等の共同経営組織および基金会。

²  使用者が設立した支店、支部等で、法に基づき営業許可証または登記証書を取得しているものは、使用者として労働者と労働契約を締結することができる。営業許可証または登記証書を取得していないものは、使用者の委託を受け労働者と労働契約を締結することができる。

 

分析:営業許可証または登記証書を取得していない支店、支部等は、通常、本社の名義で労働契約を締結することができる。

 

2.従業員名簿

従業員名簿は、労働者の姓名、性別、公民身分証明書番号、戸籍地および現住所、連絡方式、雇用形式、雇用開始日時、労働契約期間等の内容を含まなければならない。

分析:従業員の戸籍地および現住所、連絡方式が比較的重要である。従業員が離職、退職していない場合、従業員の戸籍地および現住所を把握していなければ、使用者が処罰通知書または労働契約解除の通知を従業員に郵送することは不可能だからである。

 

3.勤務期間

企業の合併、関係企業内部の異動等の原因で、労働者が原使用者から新使用者のもとへ移動して勤務する場合、労働者の勤務期間は原使用者のもとでの勤務期間を新使用者のもとでのそれと合計して算定する。原使用者が既に労働者に経済補償金を支払っている場合は、新使用者は労働契約の解除、終了による経済補償金のための勤務期間の計算を行うに当たり、同労働者の原使用者のもとでの勤務期間を計算に加える必要はない。

 

4.労働契約の異なった地域での履行

労働契約履行地と使用者登録地とが異なる場合、労働者の最低賃金基準、労働安全、労働条件、危険な職業の労働者の安全および本地域での前年度の従業員平均給与基準等の事項については、以下の原則に従い決定する。

n 原則として、労働契約履行地の関係規定に従う。

n 使用者登録地の関係基準が労働契約履行地の基準を上回っており、同時に使用者が労働者と使用者登録地の規定に従うとの約定を行っている場合は、その約定に従う。

分析:使用者が労働者と使用者登録地の規定に従うとの約定を行っていない場合は、たとえ使用者登録地の関係基準が労働契約履行地の基準を上回っていても、依然として労働契約履行地の基準に従うことになる。使用者はこの点を利用して労働コストの低減を図ることができる。

 

5.試用期間の給与

『労働契約法』第20条の規定は複数の解釈が可能であるが、『実施条例』第15条は試用期間について明確な規定を設けている。使用者は以下の2種類の計算方法のいずれかを選択できる。

n その会社での同様の部署での最低給与額の80%を下回らず、かつ使用者所在地の最低給与基準を下回らないこと

n 労働契約約定の給与額の80%を下回らず、かつ使用者所在地の最低給与基準を下回らないこと

 

6.研修費用

『実施条例』第16条は、研修費用には、証憑のある研修費用、研修期間内の出張費用ならびに研修により生じた該当労働者のその他の直接費用を含むと規定している。このことは使用者が支払い証書の保存に注意すべきことを示している。

旧『実施条例草案』は、使用者が、一人の労働者のために、一回の支出が、または12ヶ月間の累計が使用者の前年度の平均給与額の30%に及ぶ額を支出して研修を行ったときは、労働契約法第22条第1項規定の特別研修費用を提供したものと見なす、と規定していたが、正式公布された『実施条例』では削除されている。このように、特別研修費用については、法律は金額上の要求を定めていない。使用者は支払った研修費用が小額であっても、服務期間の約定を行うことができることになる。

 

7.労働契約の解除

 

『実施条例』第18条は労働者労働契約を解除できる場合を以下のように規定している。

 

労働者と使用者の協議一致による場合

『労働契約法』第36

労働者が30日前までに書面で使用者に通知した場合

『労働契約法』第37

労働者が試用期間中に三日前までに使用者に通知した場合

『労働契約法』第37

使用者が労働契約の約定どおりの労働安全保護措置または労働条件を提供しない場合

『労働契約法』第38条第1項第1

使用者が労働者にすみやかに十分な額の労働報酬を支払わない場合

『労働契約法』第38条第1項第2

使用者が法に従った労働者のための社会保険費を納付しない場合

『労働契約法』第38条第1項第3

使用者の規則制度が法律、法規の規定に違反し、労働者の権益に損失を与えた場合

『労働契約法』第38条第1項第4

使用者が詐欺、脅迫の手段によりまたは人の困難につけこみ、労働者にその真実の意志に反する労働契約または変更労働契約を締結させた場合

『労働契約法』第38条第1項第5

使用者が労働契約中で自己の法的責任を免除し、労働者の権利を排除した場合

『労働契約法』第38条第1項第5

使用者が法律、行政法規の強行規定に違反した場合

『労働契約法』第38条第1項第5

使用者が暴力、脅迫または違法に人身の自由を制限することによって労働者に労働を強制した場合

『労働契約法』第38条第2

使用者規定・規則に違反して指揮、命令し危険な作業を労働者に行わせ労働者の安全を脅かした場合

『労働契約法』第38条第2

法律、行政法規が労働者が労働契約を解除できるその他の事由を規定している場合

『労働契約法』第38条第1項第6

 

『実施条例』第19条は使用者が労働契約を解除できる場合を以下のように規定している。

 

労働者と使用者の協議一致による場合

『労働契約法』第36

労働者が試用期間中に雇用条件にて起業しないことを証明された場合

『労働契約法』第39条第1

労働者が使用者の規則制度に著しく違反した場合

『労働契約法』第39条第2

労働者の職務上の怠慢、不正行為により使用者に重大な損失を招いた場合

『労働契約法』第39条第3

労働者が同時にその他使用者と労働関係を形成し、本来の使用者の業務遂行に重大な影響を及ぼした場合、または使用者が改善を要求したにもかかわらず、これを拒否した場合

『労働契約法』第39条第4

労働者が詐欺、脅迫の手段によりまたは人の困難につけこみ、使用者にその真実の意志に反する労働契約または変更労働契約を締結させた場合

『労働契約法』第39条第5

労働者が刑事責任を追及された場合

『労働契約法』第39条第6

労働者が疾病または労働災害によらない負傷により、規定医療期間満了後も以前の業務に復帰することができず、使用者の準備したその他の業務にも従事することができない場合

『労働契約法』第40条第1

労働者に業務担当能力がなく、研修または業務の調整を行っても、依然として業務担当能力がない場合

『労働契約法』第40条第2

労働契約締結時の根拠となった客観的状況に重大な変化が生じたため、労働契約の履行が不能となり、使用者と労働者の協議を経ても、労働契約の内容変更につき合意が得られない場合

『労働契約法』第40条第3

使用者が企業破産法の規定に従い再建を進める場合

『労働契約法』第41条第11

使用者の生産経営がきわめて困難となった場合

『労働契約法』第41条第1項第2

企業生産品目の変更、重要技術革新または経営方式の調整により、労働契約を変更した後も依然として人員削減が必要な場合

『労働契約法』第41条第1項第3

その他労働契約締結時の根拠となった客観的経済状況に重大な変化が生じたため、労働契約の履行が不能となった場合

『労働契約法』第41条第1項第4

 

8.労働契約の終了

 

『労働契約法』第44

『実施条例』第13条、第21

以下の事情のいずれかに該当する場合は、労働契約を終了する。

(一)労働契約の期間満了

(二)労働者が厚生年金の受給を開始したとき

(三)労働者が死亡したとき、または人民法院に死亡宣告または失踪宣告を受けたとき

(四)使用者が破産宣告を受けたとき

(五)使用者が営業許可証の取消、活動停止、廃業の命令を受けたとき、または使用者が解散を決定したとき

(六)法律、行政法の規定するその他の状況の発生

n  使用者は労働者と労働契約法第44条の規定する労働契約終了の事由以外のその他の労働契約終了条件を約定することはできない。

n  労働者が法定退職年齢に達した場合、労働契約は終了する。

 

分析:

n  使用者は、中国籍従業員に対して独自にその他の労働契約終了条件を定めることはできなくなった。

n  外国籍従業員に対して、労使間の話合いにより労働契約終了条件を約定することができるかどうかについては、議論が分かれている。上海では双方が話合いの上約定可能と認識されている。

 

9.賠償金および経済補償金

使用者が労働契約法の規定に違反して労働契約を解除または終了したことにより、労働契約法第87条の規定に従い賠償金を支払った場合、さらに経済補償金を支払う必要はない。

 

10.一ヶ月分給与支給金の基準および経済補償金の基準

n 一ヶ月分給与支給金基準:使用者が労働契約法第40条の規定に従い、労働者に余分に一ヶ月の給与を支払い労働契約を解除する場合、その余分に支給する給与は当該労働者の前月の給与を基準とする。

n 経済補償金基準:月給は労働者の取得すべき給与に基づき算定する。これには時給または出来高払い賃金ならびにボーナス、奨励金、手当等の貨幣性収入が含まれる。労働者の労働契約の解除またはその終了前12ヶ月間の平均給与が最低賃金基準を下回る場合は、当地の最低給与基準に基づき算定する。労働者の勤務が12ヶ月に満たない場合は、実際勤務月数に基づき平均給与を計算する。

 

11.労務派遣

n 使用者が労働契約法の従業員名簿作成の規定に違反した場合は、労働行政部門が期限を定めて改善を命じる。期限を超えてもなお改善が見られない場合は、労働行政部門は2000元以上2万元未満の罰金を科す。

n 使用者が労働契約法および本条例の労務派遣関係規定に違反した場合は、労働行政部門およびその他の関係主管部門が改善を命じる。その経緯が重大な場合は、各被派遣労働者につき1000元以上5000元以下の基準で罰金を科す。被派遣労働者に損失をもたらした場合は、労務派遣会社および使用者は連帯賠償責任を負う。(20089月記 4,273字)

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