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過信が生む中国市場への安易な期待

中国ビジネスレポート 各業界事情
森辺 一樹

森辺 一樹

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2012年9月18日

先日、上海にできた日系のファッション専門施設を視察しに行ってきた。日本のアパレルブランドの中国販売は専門家に言わせると非常にハードルが高い分野である。ブランド企業側は進化しすぎた日本の市場で育ち、高いセンスと品質を持ち合わせているものの、ブランド力は国内限定。その影響力が及んでも、韓国、台湾止まりである。また、ドメスティックな企業が多い業界であるのも事実。その為、私はファッション専門施設が日本のファッションブランドを引き連れ中国展開することにある種の期待を持っていた。しかし、その期待は見事に裏切られてしまった。

平日週末と視察をしたのだが、その客数の少なさに唖然とした。土曜日の日中、しかもバーゲンセール開催中というのに、全フロアーの客数は数えられてしまえる程なのだ。オープン当日こそ大勢の人で賑わい、日本のテレビ報道では、あたかも「大人気の日本ファッションの専門施設がオープン!!」的な報道が行われていたが、現実とは程遠い。

立地は最高の場所に位置している。日本でいうところの渋谷、表参道のメインストリートと言って良いだろう。目と鼻の先には大型商業施設やマクドナルド、スターバックス等が立ち並び、事実、そちらは連日大盛況なのだから。

要因は、明らかに事前のマーケティング不足による中国人消費者の不理解である。商業施設側も出店ブランド側もまったく自社の中国市場におけるポジショニングや消費ターゲットが定まっていなように感じた。とにかく価格が高すぎるのだ。殆どの商品が日本と同等以上の価格で売られている。箱(商業施設)も無名であれば、中身(日本のファッションブランド)も無名、にも関わらずの値段設定は中国人消費者を理解せず、己を過信しているとしか思えない。
ラーメンの相場は700円と決まっている。1万円のラーメンは何をしても売れないし、3,000円のラーメンを売りたければ、それなりのことをしなければ売れない。それと同じである。「日本ブランドである」だけでは、「それなりのこと」にはならない。中国人消費者は、「良いものだから」、「日本製だから」、高くても買うは間違いだ。また、「日本ブランド」の影響力も「自動車や家電」と「ファッション」では異なる。グッチやプラダに高いお金は払っても、無名の日本のファッションブランドに高いお金は払わない。

中国のファッション市場を扇に例えると、扇の右はヨーロッパを始めとした高級ブランド。圧倒的なブランド力を誇り、ごく限られた層をターゲットとしている。そして扇の右はローカルや海外のファストファッションブランドが占める。どちらにも当てはまらない日本のファッションブランドは正に扇の最も広い中央部分に当たる。この層における消費者は多岐に渡るため、マーケティング戦略を確り組み立てないと成功は無い。ブランド側も商業施設にただ頼るのではなく、自社独自のマーケティング戦略を持つ必要がある。まだ始まったばかりだ。今後の活躍に期待したい。
(2011年2月)

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