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王穏弁護士の国際離婚相談(1)—夫婦共同資産について

中国ビジネスレポート 各業界事情
王 穏

王 穏

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2006年6月20日

<各種業界事情>

 

国際離婚相談(1)-夫婦共同資産について

 

王 穏

  近年中国国籍と日本国籍の縁組がハイスピードで増加する一方、当事務所で受ける離婚相談も急激に増えております。縁が尽きれば、離婚するのが、ごく自然な流れですが、離婚に合意すれば分かれられると考えるほど、簡単ではありません。財産分与、子供に対する扶養権なども絡み合っている上、日中両国にまたがり、訴訟管轄、財産の調査・把握、離婚の効力などの問題点をすべてカバーしなければならず、複雑となります。 

今回からシリーズにて、国際離婚について述べてまいります。

1回目は基本的に半々に分割される夫婦の共同財産について述べることとします。 

1.夫婦の共同財産について 

 中国でも一方が離婚したいと思ったなら、一方が離婚に同意しなくても、別居2年で離婚できるように法改正されています。日中にまたがる国際離婚の場合、一方が本国に帰国し、否が応でも別居2年という条件を作り出せます。そうなりますと、離婚自体はできるようになりますが、残るのは財産の分割です。実務上、中国の法律法規及び判例に沿って、すんなり財産分割に同意した例もありますが、多くの場合財産分割のところで揉めます。 

【半々分割される財産】 

 離婚案件について、中国法(具体的なケースによって、日本法の管轄になることもあります)においては、離婚する場合の財産分割は半々が原則です。しかし、財産項目の中身によっては、半々の実質そのものが変わりえます。 

中国法における夫婦共同所有財産の項目については、主に下記の通りです。 

C  賃金、報奨金

 

 労働賃金(賃金、報奨金)は夫婦双方が婚姻関係存続期間に得た労働所得による報酬であり、広い意味における賃金収入である。通常配当金、奨励金、手当(食事手当など含む)、補助金、服装費等も収入という意味がありますので、その中に含まれます。

 

 ただ、問題となるのは、日本では詳細な賃金等の支給記録がありますが、中国では雇用先がきっちり管理していないか、税金対策などの理由で実収入をごまかしていることがあることです。また、転職が一般的ですので、中国で就職している夫又は妻の賃金が把握しにくい実態です。報奨金は、まだ記録のある賃金よりも更に把握が困難です。

 

C       生産、経営による収益

 

 生産、経営による収益は、労働収入と資本収益(株・債券、企業経営収益などを含む)があります。投資があれば、財産詳細を確認する必要がありますが、時には、国際離婚訴訟そのものよりも困難です。

 

 賃金と同様、行政に届け出た会計帳簿、自社把握(親会社・上司に報告する)の帳簿、親会社・上司にも内緒の帳簿など二重・三重の帳簿がある可能性があります。 

  裏の帳簿をどのようにすれば入手できるか、入手できたとしてもどのように証拠として裁判所に認めさせるかなど多くの問題があります。 

  夫が自営業者だった国際離婚案件では、会社がどんどん大きくなるのに、帳簿上少ししか利益が出ていないと不審に思った妻が、その会社の離職従業員などに確認をしたら、日本や諸外国からの支払いの多くは、中国大陸にある会社に送金するのではなく、その経営者が香港で作った会社に送金させていることがわかりました。

 

C  知的所有権による収益 

この部分は受取済み収益と取得予定収益が含まれます。 

 知的所有権による収益がかなり増えており、特に一定の技能・知識を持つ技術者、会社経営者などには、場合によって前記の賃金や経営・生産による収益よりも多い収入となってきます。

 まず、受取済みの収益については、徴税の税務署さえ把握しきれないこれらの知的所有権収益をどのように個人の力で把握できるかが難問ですある離婚訴訟では、推測に基づいて財産分割を要求したものの、結局請求金額分の一しか認められませんでした。 

  その上、更に難しいのは、取得予定収益です。基本的に婚姻関係存続期間中において、明らかに取得できるであろう収益です。例えば、出版社との契約において、すでに印税が入ってくる場合などが該当しますが、関係事実が把握できれば、まだ印税の計算ができますが、ほとんど相手の仕事にタッチしないのであれば、見当もつかないので、調査しきれません。 

C  相続或いは贈与所得による財産 

  相続或いは贈与契約において受取人が明確に指定されなければ夫婦共同財産として、分割対象とされます。

  相続・贈与の財産には、公式記録の残る不動産、株券、持分などなら、調査自体に苦労するものの、調査できないことはありません。一方、現金の相続・贈与となると、仮に金額までわかるとしても、銀行で洗いざらい調査する必要があります。また、「○○元と聞いた」、「○○元を渡されたことを見た」という伝聞証言もあまり認められませんので、要注意です。 

C  その他共同所有に帰する財産 

その他共同所有に帰する財産(以下、「一般共同財産」という)は通常以下の財産があります。

(1)      一方が個人財産で投資して得た収益

(2)  双方の取得済み或いは取得している養老保険金

(3)住宅補助

(4)住宅積立金

(5) 共同財産で購入した家屋

(6)      購入した財産

(7)その他

 

  住宅手当、住宅積立金、家屋などの項目は高額であり、これらは財産分割の際にもめやすい部分でもあります。特に、住宅補助、住宅積立金などは、中国では申請制度なので、申請して定められた条件に合致すれば支払われるますので見落としがちです。 

 また、共同所有の財産については、共同財産の所在をつきとめることができても、共同所有の相手当事者との関係によって、複雑となります。また、往々にして、共同所有の当事者は、相手の親戚縁者の場合が多い実態です。敵視し、共同所有財産を与えるものかという気持ちも入り混じっているため、調査、立証、交渉が難しくなります。             

  ほかにも夫婦の共同財産となる財産がありますが、調査そのものが非常に難しいといえましょう。特に離婚すると決めた途端に、夫婦双方は、財産分割に専念してしまいます。また、相手に絶対良い思いをさせたくないとかいう報復的な気持ちも入っております。親戚縁者の多い側は、入れ知恵をもらったり、時には、実力行使までお願いしたりします。

 

(2006年6月記・2,478字)
上海ジョイハンド(慧元)法律事務所  弁護士
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 海外支援 アドバイザー

 王 穏

 

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