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中国企業所得税法における損金算入項目について

中国ビジネスレポート 税務・会計
水野 真澄

水野 真澄

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2003年4月1日

<税務・会計>
中国企業所得税法における損金算入項目について

水野真澄

企業所得税税引前控除弁法という規定が2000年5月に公布されています(国税発[2000]84号)。これは、中国の内資企業に適用される「企業所得税暫定施行条例」及びその実施細則を補足する意味で、税務上の損金算入項目の明細を規定したものとなっています。よって、「外国投資企業及び外国企業所得税法(以下、外資企業所得税法)」が適用される外資企業とは、直接的な関係はないこととはなりますが、中国の税法における各種の損金算入制限の概念がよく分かり、参考になる点も多い(外資企業の税務上の扱いにおいても、参考とされる可能性が高い)ため、その内容を紹介します。

  1. 損金算入の金額・範囲が制限される経費・原価

     会計上は経費・原価として費用処理されたとしても、税務上は損金算入できない、もしくは損金算入額が一定の範囲に制限される様な内容として、以下のようなものが例示されています。

    (1) 管理費
     所管の税務機関の認可を受けた場合を除き、関連企業に対して支払う管理費は、損金として処理できないことが規定されています。これは、外資企業所得税法にも、同趣旨の規定があります。

    (2) 広告費
     この規定では、広告費の内容を、「広告費」と「業務宣伝費」に分けています。

    • 広告費
       工商部門の認可を得た専門機構を通じて製作されたものであり、一定の媒体を通じで広告されるものを指します。この場合の損金算入制限は、販売営業収入の2%以内とされています。但し、2%を超過した部分については、期間を限定しないで、以降の納税年度に繰り越すことが出来ます。
    • 業務宣伝費
       広告費以外の宣伝費であり、媒体を通じない広告性支出を含みます。これは、販売営業収入の0.5%以内が損金算入制限となります。当該項目については、損金不算入部分の時期繰り越しは、規定されていません。

    (3) 交際費
     交際費の損金算入制限については、以下のとおりとなっています。

    • 年間の販売営業収入純額が15百万元以下の場合は、販売営業収入額の0.5%以内。
    • 年間の販売営業収入純額が15百万元超の場合は、当該超過部分については、販売営業収入額の0.3%以内

    (4) 支払いコミッション
     損金算入が可能なコミッションは、下記の条件を満たすものと規定されています。

    • 適切な証憑があるもの。
    • 独立したエージェント(適正な納税者)、もしくは、当該支払い企業の雇員以外の個人であること。

     この条件を満たす支払いについては、原則として5%以内の口銭率による口銭の支払いが可能とされています。

  2. 在庫・固定資産・無形資産に関する処理と償却費の扱い

    (1) 評価方法
     在庫・固定資産・無形資産は原則として原価法により評価され、定額法による償却が行なわれます。会計基準の変更により、株式会社・外資企業については、減損会計を取り入れた「企業会計制度」が適用されますが、これに基づいて計上された評価損失引当金は、原則として損金不算入となりますし、会計上定額法以外の方法で行なった減価償却についても、損金算入可能額は税法基準に合わせて修正されます。
     なお、合併・企業分割があった場合は、関係する資産に含まれる価値増加、または損失が、税務上の実現要件を満たしている場合は、再評価後の価値に基づき原価を確定することができると規定されています。

    (2) 固定資産の減価償却年限
     固定資産の減価償却年限については、外資企業所得税法と同様の規定となっています。

    • 建物・建築物:20年以上
    • 列車・船舶・機器・機械・その他の生産設備:10年以上
    • 電子設備・上記以外の輸送機・器具・工具・家具:5年以上

     なお、奨励される産業であって、かつ、減価償却年限を短縮することが妥当な環境において使用される設備に付いては、所管税務局の承認を受ければ加速度償却が可能となります。

    (3) 在庫・固定資産の評価損の計上
     在庫の価値の劣化、固定資産の「永久的損害」が発生した場合、所管税務局の認可を受ければ、回収可能価額までの評価損の計上(損金算入)が可能となります。

    (4) 減価償却の損金算入制限対象
    以下については、償却費の損金算入が出来ないことが規定されています。

    • のれん(自己創造・外部からの購入を問わない)。
    • 寄付・寄贈を受けた固定資産・無形資産

     ただし、固定資産の寄贈を受けた場合、会計上は資本準備金(受贈益準備金)処理をするものの、受贈益を課税所得として算入することを求める規定も別途でています(国税発[1999]195号)。理論上、一旦、益金として課税したにも拘わらず、見合いの減価償却の損金算入を制限すると言うのは、合理性を欠く対応であるともいえ、実務処理上は、この整合性を確認する必要があるといえます。

    (5) 固定資産の修繕費
     固定資産の収税費用は、当期の費用として損金算入が可能ですが、「固定資産改良費」と見なされる場合は、固定資産原価に算入する必要がでてきます。
     固定資産改良費と見なされるものは、以下の1つの条件に合致するものとされています。

    • 発生した修繕支出が、固定資産の取得原価の20%以上となる場合。
    • 修繕により、固定資産の耐用年数が2年以上延長される場合。
    • 修繕後の固定資産を、従来とは異なる用途に用いる場合。

     なお、対象となる固定資産の減価償却が完了している場合は、固定資産改良費については、繰延資産として扱い、5年以上の期間で償却することとなります(この点、実務処理上は、新しい会計規則との整合性の確認が必要となってきます)。

    (6) コンピューターハードウェアに付帯するソフトの扱い
     この様なソフトウェアについては、単独で価格計算しないものについては、ハードに組み入れて、固定資産として計上・償却を行ないます。
     ただし、単独で価格を計算するソフトについては、無形資産として計上・償却することとなります。

  3. リースに関する内容

     リースに関して支払うリース料(賃借料)ついては、オペレーティングリースについては、リース料を期間費用として処理できるが、ファイナンスリースについては期間費用として処理できず、減価償却費に相当する金額だけを損金として扱うことが出来ると規定されています。ファイナンスリースとは、実質的に対象となる資産の所有権と、関連するリスクと報酬を移転するリースの一種類と規定しています。具体的には、以下の条件の一つに合致するリースはファイナンスリースであると規定しています。

    • リース期間満了時に、リース資産の所有権がレッシーに譲渡される。
    • リース期間が資産の耐用年数の大部分(75%以上)である。
    • リース期間内におけるリース最低支払額が、リース開始日の資産の価値以上である。

  4. 財務費用の扱い

    (1) 固定資産・無形資産の取得に関わる借入費用
     固定資産の購入、建設等、当該資産の使用以前に発生した借入費用は、資産原価に算入する(期間費用として処理できない)、一方、使用開始後に発生する借入費用については、期間費用として処理できることが規定されています。
     これは、外資企業所得税法にも同種の規定があります。

    (2) 過小資本税制
     関連当事者からの借入金が、登録資本の50%を超過する場合は、超過部分の支払い金利に付いては、損金不算入となることが規定されています。
     これは、過小資本税制に準じる考え方ですが、外資企業に対してはこの様な規定が無く、内資企業が対象となっていること、更に、基準が非常に厳しいことが特徴として挙げられます。

  5. 貸倒費用の扱い

     貸倒れ費用については、以下の通り規定されています。

    (1) 一般引当
     総債権に基づく引当ができる納税者については、年度末の売掛金残高(受取手形の金額を含む)の0.5%以内で一般引当を計上することが出来ます。
     なお、外資企業所得税法では、一般引当の計上が出来るのは、金融(銀行・リース)業のみで、所管の税務局の認可を受けた上で、営業債権残高の3%以内の範囲で一般引当の計上が認められます。

    (2) 個別引当
     個別債権に紐付く引当(損金算入)については、以下の条件に合致するものと規定されています。

    • 債務者の破産により、回収不能が生じる場合。
    • 債務者の死亡により、回収不能が生じる場合。
    • 重大な自然災害、事故等の要因により、回収不能が生じる場合。
    • 法院の採決を経て、回収不能が確定した場合。
    • 3年以上経過して、なお回収されない場合(外資企業所得税法の場合は2年)。
    • その他の場合で、税務局の認可を受けたもの。

     なお、関連会社間の貸倒費用は、損金として認定されません。これは、外資企業に対しても同様の扱いとなります。

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