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転廠に関わる増値税の課税方式について(2)

中国ビジネスレポート 税務・会計
水野 真澄

水野 真澄

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2003年5月1日

<税務・会計>
転廠に関わる増値税の課税方式について(2)

水野真澄

転廠に関わる増値税の課税方式について(1)」より続く

3.転廠に関わる増値税課税について

以上の状況を踏まえた上で、転廠に際して増値税がどのように課税されるかを検討してみたいと思います。転廠と言うのは、国内移送であるにも拘わらず、輸出入が行なわれたものとして通関手続きを行なう制度であることは前述の通りです。では、増値税課税のポイントは、下図の(2)の行為を、国内取引と捉えるか、輸出入取引として捉えるかによって変わってきます。さらに、仮に輸出入として扱われた場合には、既に解説したような増値税課税方式の不統一、つまり、進料加工が免税取引となるか課税取引となるか。さらには、課税・還付方式として、「免税・控除・還付」方式が採用されるのか、若しくは、「先徴収・後還付方式」若しくは、「不徴収・不還付方式」が採用されるのかによって、課税の要否やタイミングは異なってきます。

外国
外国の加工委託企業A
 
(1)部材の提供
 
 
(2)半製品の国内移送
 
(1)
(3)
 
(3)製品の輸出
 
 
中国
加工貿易企業B
→(2)→
加工貿易企業C
 

では、転廠に際してどのように増値税課税が行なわれるかについて、その「可能性(理論上の選択肢)」を下記してみます。

● 転廠に関する増値税課税方式の理論的可能性

(可能性1)
B及びCが共に来料加工企業である場合。
この場合は、来料加工は増値税が免税となることが増値税関連法規に明記されているため、B・Cの輸出入のみならず、転廠に際しても増値税は課税されないと考えるのが、理論上妥当と言うことができます。

(可能性2)
B及びCが共に進料加工企業である場合。さらに、B・Cの所管税務局が、不徴収・不還付方式を採用している場合。
この場合は、Bの原材料輸入に対して増値税は課税されませんし、転廠についても増値税の課税対象外取引となります。ただし、不徴収・不還付が前提となっている以上、B及びCが国内調達原材料を一部使用し、仕入れに際して増値税を支払っている場合でも、この増値税の還付・控除は一切認められず、支払済み増値税はコストとして計上することとなります。

(可能性3)
B及びCが共に進料加工企業である場合。さらに、B・Cの所管税務局が、転廠を国内取引として扱っている場合。
この場合、Bの輸入に際して、Bの所管税務局が先徴収・後還付方式を採用している場合は、輸入時に増値税を納税する事となりますし、免税・控除・還付方式を採用している場合には、輸入時に増値税は課税されません。その上で、転廠を行なうに際して、BはCより増値税を徴収の上、相当額を所管の税務局に納税する事となります。Cは輸出を行なうにあたり、引取時に支払った増値税の還付申請を行なう事となります。Cが還付申請を行なうにあたり、進料加工が免税取引と扱われれば全額が還付対象となり、進料が課税取引と扱われれば、還付の欠け目の4%相当が還付不能額としてコストとなります。

(可能性4)
B及びCが共に進料加工企業である場合。さらに、所管の税務局が転廠を輸出入取引に準じて扱い、かつ、免税・控除・還付方式を採用している場合。
Bが輸入する際には増値税の納税は不要です。さらに、転廠に際しては、所管税務当局が、進料加工を免税取引として扱うのであれば、増値税の納税は不要、一方で、課税対象取引として扱うのであれば、Bが転廠を行なった段階で4%の欠け目相当額を納税するのが理論的な対応です。C社は、転廠受け入れ時には納税が不要ながら、輸出を行なった段階で、還付の欠け目相当を納税するのが、やはり理論的な対応となります。

以上、4つのケースを想定しましたが、この他にも、「来料加工と進料加工が組み合わさったケース」、「BとCで進料加工を免税取引とするか否かの対応が違うケース」、「先徴収・後還付方式が採用される場合」、さらには、「B・Cの所管税務局に対応が、免税・控除・還付、先徴収・後還付方式で異なるケース」など、様々な可能性が考えられます。

4.転廠に関わる増値税課税の実務運用

以上は、増値税課税の可能性(理論的な選択肢)の中から、特に典型的な4つのケースを抜き出し、解説したものです。では、実務運用はどうなっているのでしょうか。現在、本件に関するアンケート調査を行なっている最中であり、最終的な結論には至っていませんが、実務的には上記の可能性のうち採用されている方法は可能性1〜3の3種類と言え、可能性4を含め、それ以外の方法が採用されているケースはほとんどど見受けられません。

この中で、可能性1、つまり双方来料加工である場合は、増値税関係法規から見ても、免税取引として扱うのが妥当と言う事ができます。問題は、進料加工の場合にどう税務局が対応するかですが、中国の公式な対応は、「進料加工は課税対象取引として扱い、かつ、転廠は国内取引として対応する」というものです。さらに、先徴収・後還付方式よりも、免税・控除・還付が最も広く採用されている課税方式となっていますので、増値税課税の方法は、上述の可能性3、つまり以下の通りとなります。

● Bは原材料を輸入するにあたり、増値税の納税は不要
● Bは転廠を行なった際に、Cより増値税相当額を徴収し、所管の税務局に納税する
● Cは製品を輸出した際に、還付申請を行なう(還付の欠け目は還付対象とはならない)

ただし、広東省、特に、東莞・深センでは、可能性2にあるような、不徴収・不還付方式が依然として採用され、転廠に際して増値税は課税されず、また、輸出入に際しても増値税課税が行なわれない方法が広く採用されています。
つまり、以下のような形式になります。

● Bは原材料を輸入するにあたり、増値税の納税は不要
● 転廠にあたり、BもCも増値税の納税が不要
● Cは輸出にあたり還付請求は行なわない(一部、国内で増値税を納税して調達している原材料・半製品があれば、それに際して支払った増値税は還付請求できずにコストとなる)

しかしながら、不徴収・不還付方式は、もともと老企業のみに認められていた方式であり、かつ、2000年末に打ち切られた制度です。これが、広東省で採用されているのは、理論的にはおかしいと言えますが、省内に加工貿易企業が多く、経済的に加工貿易に依存している部分が大きいこと、さらに、転廠が頻繁に行なわれている状況を考慮し、不徴収・不還付方式の打ち切り(転廠に関わる増値税課税方式の変更)が、大きな影響を与えることを惧れ、既に廃止されている制度をいまだに継続しているのが実態と言えるでしょう。よって、長期的には広東省においても、転廠が国内取引として扱われ、課税対象となっていく方向にあるとはいえます。ただし、加工貿易・転廠の円滑な運営を維持するために、東莞・深セン等の地域は、暫くは現在の課税方式の継続を志向すると考えられます。

このように、様々な状況が絡み合い、転廠に関しては状況の把握が非常に困難なのが実情です。むろん、将来的な方向性は、上述の如く比較的明確ではありますが、このような方向での課税方式の統一は、ある意味では、加工貿易のメリットを減少させ、広東省の外資誘致に少なからぬ影響を与えることになりますので、実現にはまだまだ時間がかかると推測されます。従って、転廠に関する課税方式は、今後も暫くは不統一な状況が継続すると考えられますので、加工貿易を行なう際、特に、転廠が必要となる際には、進出候補地・転廠先の増値税課税方式を、事前に調査する必要があるといえます。

(03年5月6日記・3,029字)
丸紅香港華南会社コンサルティング課長・広州会社管理部長
水野真澄

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