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増値税暫定条例改訂に伴う変更点のポイント(その2)

中国ビジネスレポート 税務・会計
水野 真澄

水野 真澄

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2009年3月20日

記事概要

今回は、中古資産の売却に伴う増値税、掛売り・割賦販売の納税時点、来料と進料の増値税コスト比較について解説します。

前回に引き続き、増値税暫定条例改定の、実務上の影響に付いて解説します。
今回は、中古資産の売却に伴う増値税、掛売り・割賦販売の納税時点、来料と進料の増値
税コスト比較です。

3.中古資産の販売に伴う増値税課税
増値税改定により、固定資産購入に際しての税額控除が認められた事を受け、中古設備に
関する課税軽減制度も廃止が予想されていました。ただし、1月19日に財政部・国家税務
総局より、「一部の物品に対して増値税の軽減税率・簡易方法による課税を適用する政策
の通知(財税[2009]9号)」が公布され、従来の政策の継続が認められています。
中古資産売却に際しての増値税課税方法は、税法改訂前後で以下の通りです。

① 旧税法に基づく課税(2008年12月末まで)
税法改訂以前の中古資産売却に際しての課税は、「財税[2002]29号(中古品及び車両等に
関する増値税政策の通知)」に規定されていました。
同通知では、中古資産販売時に際しては、一般納税義務者・小規模納税義務者の区別なく、
2%の税率(4%の税率を半減した上で適用)を適用する事を規定していました。
また、仕入控除の可否、その他の特例に付いては、以下の通りとなっていました。

● 自動車、バイク、ヨット
   自己使用資産の場合は仕入控除不可。営業目的の場合は仕入控除可能。
   また、自己使用資産の場合で、販売額が購入額を下回る場合には、課税免除の特例が
認められていました。
● それ以外の資産
   仕入控除不可

② 新税法に基づく課税(2009年1月1日以降)
制度改定後の中古資産売却に付いては、財税[2009]9号、及び、「増値税制度の改革を全
国で実施する事に関する若干の問題の通知(財税[2008]170号)」に定められています。
ここでは、以下の通りの課税方法が規定されています。尚、軽減税率が適用される場合は、
関連資産の仕入控除は認められません。

1)自己使用固定資産
新税法で、仕入控除の対象外と規定される資産を売却した場合は、2%の税率(4%の半
減)で増値税が課税されます。
それ以外の資産(仕入控除の対象となる資産)を売却した場合は、以下の通り対応となり
ます。

● 一般納税義務者
   2009年1月1日以降に購入した固定資産の場合は、通常税率に基づいて課税(それ以前
に購入したものの場合は、2%の税率で課税)。
   固定資産以外の使用済物品を売却した場合は、通常税率(17%)で課税。

● 小規模納税義務者
   固定資産を売却する場合は2%の税率を適用。
   固定資産以外の使用済物品を売却する場合は、通常税率(3%)で課税。

2)販売目的の資産売却
   中古品を商業目的で売却する場合は、2%の税率(4%の税率の半減)により、増値税
が課税されます。また、対象となる資産には、中古自動車、バイク、ヨットが含まれます。

4.掛売り・割賦販売の納税時点
改定後の増値税暫定条例実施細則第38条では、掛売り・割賦条件等の取引に関する納税時
期に一部変更が加えられています。掛売り・割賦販売の場合は、契約書に代金支払日が明
記されていない場合、商品引き渡し時に納税義務が発生する事が規定されました。

<改定前>
(1)直接代金受取方式を採用している財貨の販売は、財貨の発送に拘わらず、売上代金
の受領、または、売上代金取立て証憑を受領し、且つ、貨物引き換え証を購入者に引き渡
した当日とする。
<改定後>
(1)直接代金受取方式を採用している財貨の販売は、財貨の発送に拘わらず、売上代金
の受領、または、売上代金取立て証憑を受領した当日とする。

(2)代金取立て依頼と銀行委託回収方式を採用する財貨の販売は、財貨を発送し、代金
取立て依頼の手続を完了した日とする。⇒ 変更なし。

<改定前>
(3)掛け売りと分割代金回収方式を採用する財貨の販売は、契約に定める代金支払い日
の当日とする。

<改定後>
(3)掛け売りと分割代金回収方式を採用する財貨の販売は、契約に定める代金支払い日
の当日とする。契約がない場合、若しくは、契約に代金支払日が明記されていない場合は、
貨物を引き渡した当日とする。

<改定前>
(4)代金前受け方式を採用する財貨の販売は、財貨を発送した当日とする。

<改定後>
(4)代金前受け方式を採用する財貨の販売は、財貨を発送した当日とする。
ただし、生産工期が12ヶ月を超過する大型設備機械、船舶、飛行機等は、前払金受領日、
若しくは、契約に約定した支払い日とする。

<改定前>
(5)その他の納税者に財貨の代理販売を委託する場合は、代理販売者が販売した代理販
売精算書を受領した当日とする。

<改定後>
(5)その他の納税者に財貨の代理販売を委託する場合は、代理販売者が販売した代理販
売精算書を受領した当日とする、若しくは、全部、或いは一部の代金を受領した当日とす
る。代理販売精算書を受領していない場合、代金を受領していない場合は、貨物引き渡し
後180日後とする。

(6)課税役務の提供は、役務を提供すると共に売上額を受領したか、または、売上代金
取立て証憑を受領した当日とする。⇒ 変更なし。

5.来料加工と進料加工の増値税コストの比較
増値税改革に伴い、外商投資企業の輸入免税制度が、増値税に関しては廃止となる事、更
に、これは無償提供設備にも適用される事になりましたが、この結果、売上増値税が発生
しない来料加工形態は、無償提供設備の輸入通関時に支払った増値税の控除を受ける事が
出来ない(相殺控除対象となる税額がない)事から、税コストの増加に繋がります。よっ
て、増値税法改訂が、来料加工形態の採算に悪影響を与える事は確かですが、そもそも、
来料加工と進料加工は、増値税の観点から見てどちらが有利でしょうか。

① 来料加工と進料加工の課税の原則
増値税の課税対象は、財貨の販売、及び加工補修役務となっています。ただし、来料加工
形態の場合、増値税関連法規(国税発[1994]031号)等で、財貨の輸出入・加工賃の免税
が規定されていますので、原則として、増値税は課税されません(地域により加工賃に対
する増値税課税が行われている例はあります)。
一方、進料加工は免税・控除・還付方式で増値税の課税が行われます。

② 進料加工形態の免税・控除・還付方式とは
進料加工形態では、原材料の輸入段階では保税措置が享受できます。つまり、輸入段階で
は増値税の課税が留保されます。その上で、輸出時に、「中国での付加価値(製品の輸出
FOB-免税輸入原材料)に不還付率(課税率-還付率)を乗じた金額を納税する」事と
なります。この金額(中国での付加価値に不還付率を乗じた金額)を、還付・控除不能額
と呼称します。国内販売・仕入れがある場合には、(前月よりの控除枠の繰り越しを無視
すれば)以下の算式で納税額が計算されます。

納税額=国内販売税額-仕入税額+控除還付不能額

つまり、国内販売時に預かった(仮受けした)増値税から、仕入時に支払った(仮払いし
た)税額を控除し、それに、控除還付不能額を加えた金額が納税額となります。

③ 税額の比較
以上の通り、進料加工に付いては、(17%の還付率が適用される財貨でない限り)必ず何
らかの増値税課税を受ける一方、来料加工は増値税が免除されています。

よって、仕入税額が発生しない場合、つまり完全に輸入原材料を使用する場合を相対比較
すれば、来料加工の方が、増値税課税上有利という事になります。

進料加工が有利になってくるのは、国内原材料の調達を開始する等、仕入税額が発生する
場合でしょう。来料加工の場合は、上記の通り増値税の免税取引ですので、一旦、仕入税
額が発生した場合、これを還付・控除の対象とする事はできず(増値税暫定条例第10条)、
原価として処理する事になります。一方、進料加工の場合は、免税・控除・還付方式によ
り、売上税額との控除、輸出還付が認められますので、支払い税額の還付・控除が可能と
なります。この様に、来料加工と進料加工の増値税コストの違いは、その企業の仕入・販
売方式によっても変ってくる事になります。

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