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中国で使用した設備のベトナムでの再利用

アジアビジネスレポート ベトナム
水野 真澄

水野 真澄

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2017年7月10日

(共同執筆者:Mizuno Consulting Vietnam Co., Ltd.執行役員 安藤崇)

中国で使用した設備機械を、ベトナムに輸出して再利用する事が検討される場合があります。
中国・ベトナムの双方で、中古設備の輸入に付いては規制がありますが、ベトナムの方が、それなりに規制が緩い面が有る一方、制度が明確化されておらず、判断が難しい点も有ります。

更に、設備を輸出する側の中国では、その設備がどの様な状態かによって、輸出手続きが変わってきます。例えば、中国内で購入した設備、一般貿易輸入形態で輸入した設備であれば、特段の制限なく輸出できます。一方、輸入時に保税・免税措置の適用を受けている設備の場合は税関監督下にあるか(依然として税関リストに掲載されているか)、監督解除が行われているかによって、手続と注意点が異なります。
中国使用済設備のベトナム輸出に関して、双方の注意点を解説します。

1.中国で使用した保税・免税設備の輸出

保税・免税形態で輸入した設備を中国外に再輸出する場合の、中国側の注意点を、当該設備の状態(輸入時の処理)、税関監督解除方法、再輸出手続きに分けて解説します。

(1)保税輸入設備(無償提供設備)

1)設備輸入段階の手続と課税
加工貿易取引を行うに当たり、委託者である外国企業が、中国の加工企業に無償で貸与する設備を無償提供設備と言い、中国側で保税輸入が認められます。
企業の無償提供設備は、従前は、関税・増値税共に保税措置の適用が受けられましたが、2009年1月1日に増値税の免税措置が打ち切られ(財政部・税関総署・国家税務総局公告2008年第43号)、現在では、増値税は課税、関税のみが保税措置適用対象です。
増値税の免税措置打ち切りの理由は、増値税暫定条例改定により、設備機械購入時に支払った増値税の控除・還付が受けられるようになったため、これに伴い、輸入免税措置も廃止されたものです。但し、無償提供設備は外国企業に所有権が留保された設備である事から、輸入段階の増値税に付いても、設備の所有権者である外国企業が負担すべきという考え方を税務機関は持っており、中国の加工貿易企業がこれを負担しても、還付・控除が認められず、原価として処理する必要が生じます(税コストとして扱われる)。

2)監督解除
無償提供設備には5年間の監督解除期間が設定されていますので、当該期間は、税関リストに載せられ処分が制限されます。
「税関総署公告2001年第16号」・第3条には、監督期間を満了した設備は国外に積み戻すのが原則であり、そうしない場合は輸入手続を行う事が規定されています。
実務的には、監督期間終了後も当該設備を使用するケースが多いため、企業は、監督解除を申請する(輸入手続きを取る)、若しくは、申請せずにそのまま使用するという選択をする事になります。これは企業の任意ですが、税関の保税品管理実務軽減のため、早期監督解除申請指示を出す地域もあります。
無償提供設備は、輸入時に機電輸入許可と検疫手続が免除されていますので、監督解除を行う場合は「機電産品輸入許可証」と「検験検疫証」の取得手続が必要となりますが、自社工場内で継続使用する場合は、この手続が免除されます(機電産品輸入管理弁法:商務部・税関総署・質量監督検験検疫総局2008年第7条)。
尚、無償提供設備の監督解除時に、輸入から5年(監督期間)が経過していれば、輸入段階で課税留保された関税・増値税の追納は不要ですが、未経過の場合は、税関総署・対外貿易経済合作部[1998]外経貿政発383号に基づき、未経過期間に対して月単位で関税・増値税を納付する必要が有ります(2009年以降の輸入で増値税課税を受けている場合は関税のみ)。

3)再輸出
無償提供設備を再輸出する場合、監督解除済みか否かで手続は変わってきます。

● 監督解除されていない場合
監督解除されていない場合は、そのまま国外に無償で積み戻す事になります。
監督解除されていない場合、無償設備の所有権は外国企業に留保されているため、設備の返却という手続となるためです。
尚、輸出に当たり、関税・増値税の課税を受ける事はありません。

● 監督解除されている場合
監督解除されている場合は、手続が複雑になります。
監督解除の一義的な意義は、税関リスト(処分制限リスト)からの削除であり、設備の所有権に本質的な変更を与えるものではない筈です。但し、実務上、監督解除は輸入手続を伴う(監督解除時に加工貿易企業が機電輸入許可を取得し、輸入手続きを行う)事から、この段階で「外国企業から中国企業(加工貿易企業)に対して設備の無償譲渡が行われた」と見なした税関処理が行われます。結果として、一旦監督解除をすると、無償提供設備の返却が不可能となり、一般貿易形態で輸出せざるを得なくなります。また、一般貿易形態で輸出する場合、無償輸出は原則として認められず、適切な輸出貨物代金を設定する事が税関より求められます。
尚、税関許可が認められた場合、輸出は免税措置が適用されます。つまり、輸出に際しての増値税の徴収はありませんが、輸出還付も受けられません。これは、上述の通り、無償提供設備の輸入段階で課税される増値税は還付・控除が認められないためです。

(2)奨励分類外資企業が総投資の枠内で輸入する免税設備

1)輸入段階
奨励分類外資企業が総投資の範囲内で輸入する自己使用設備は、国発[1997]37号に基づき免税輸入措置が適用されます。
従前は、関税・増値税双方が免除措置の対象でしたが、無償提供設備と同様、2009年に増値税の免税措置が打ち切られたため、現在では関税のみ課税免除が認められます。
ただ、輸入時に課税された増値税の扱いが無償提供設備と異なるのは、免税輸入設備の場合は、当該外資企業が一般納税義務者であれば、増値税暫定条例の規定に基づき輸入段階で支払った増値税の還付・控除が認められる点です。
これは、(所有権が外国企業に留保される無償提供設備とは異なり)免税輸入設備は、輸入段階で当該外資企業に所有権が移転するためです。

2)監督解除
免税設備の監督期間は無償提供設備と同様5年となります。無償提供設備と異なる点は、免税輸入設備の場合は、原則として5年経過すれば自動的に監督解除が行われる点です。
監督解除期間満了後に当該設備を国内処分(売却等)する場合は、輸入段階で免除された関税・増値税の追納は不要ですが、監督期間内の場合は、無償提供設備と同様、未経過期間に対して関税・増値税を納付する必要が有ります(2009年以降に輸入したものは、増値税は課税済みであるため関税のみ)。
また、監督解除時の「機電産品輸入許可証」と「検験検疫証」の取得手続に付いても、無償提供設備と同様です。

3)再輸出
免税輸入設備を再輸出する方法として、「監督解除を行い(5年未経過期間に対する関税・増値税を追納した上で)、一般貿易形態で輸出する方法」と、「免税状態のまま積戻し(退運)する方法」の2種類があります。
共通するのは、輸出=売却行為になるため、適切な対価を設定する事(輸出貨物代金の設定と回収)が義務付けられ、無償譲渡は原則不可な点です。

● 監督解除後の一般貿易形態
この方法で再輸出を行う場合、5年未経過の設備であれば、税関に監督解除申請をし、関税・増値税を追納した上で輸出許可申請。許可取得後、検験検疫局に消毒申請をした上で輸出する事になります。
輸出に際しては免税措置が適用され、増値税の輸出還付は受けられません。これは、「中古設備輸出増値税還付(免税)暫定弁法(国税発[2008]16号)に、免税輸入設備を再輸出した場合、増値税の輸出還付は受けられない事が明記されているためです。

● 免税状態のままの積戻し
積戻しの場合は、免税措置継続のまま再輸出されるため(監督解除する訳ではないため)、監督期間中の再輸出でも輸入段階課税の追納は不要というメリットはあります。
但し、手続が規範化されておらず、所管税関や関連政府機関(商務主管部門等)の運用に委ねられる面が有り、以下の様な要求を受ける場合もあるため注意が必要です。
・ 当該設備が現物出資されたものである場合、減資要求を受ける場合がある(外資企業の減資許可取得は極めて困難)。
・ 輸入価格と同額で再輸出する事を要求される場合が有る。
尚、この形態の再輸出に付いても、増値税に付いては免税措置が適用され、増値税の輸出還付は認められません。

2.ベトナム側の輸入に関する注意点

ベトナム側では、加工貿易企業の無償提供設備の保税輸入、投資法投資優遇分野・地域案件に関する設備の免税輸入は可能です。但し、中古設備の輸入には一定の制限が有りますので、注意が必要です。

(1)保税・免税輸入
財務省通達番号38/2015/TT-BTCにより、加工契約に基づき輸入され、契約終了後に再輸出される機械設備の輸入税の免除(保税措置)が認められています(第7章・第103条・第4項・第a.4号)。このため、加工貿易企業が輸入する設備に付いては、保税輸入が可能となります。
また、投資法(番号67/2014/QH13)に定める投資優遇分野・地域等への新規投資・拡張に関する機械設備の輸入に関しては、原則として輸入税が免除されます(同法第15条)。

(2)中古設備輸入制限
科学技術省通達(23/2015/TT-BKHCN)では、製造後10年を超過する設備の輸入を原則として禁止していますので、中国側で使用した設備がこれに抵触する場合は、輸入が制限されます。また、製造時期だけでなく、ベトナムの使用基準、若しくは、G7各国の安全・省エネ・環境保護基準に合致する事が求められるため(第6条・第1項)、これを証明する設備の製造企業、若しくは、認定機関の鑑定書提出が求められます(第7条・第2項)。
認定機関は科学技術省が選定しますが、日本の組織では海事検定協会が授権されています。尚、現在のところ、中国・香港の鑑定機関は認定されていません。
鑑定書には、製造日、設備名称、ブランド名、シリアルナンバー、型番、製造企業、ベトナム国家基準等への準拠を記載する必要が有り(第10条・第1項)、輸入日より6ヶ月以内に作成されたものである必要が有ります(通達第10条・第3項)。

中古設備輸入の原則は上記の通りですが、特例として、新規・拡張プロジェクト(会社の新設・増資)の申請に際して、中古設備一覧を提出して許可を取得した場合、中古設備の鑑定書の提示は免除されます(第6条・第2項)。また、この結果として、10年を超過した設備機械も輸入が認められます。
よって、中古設備の輸入を行う場合、この方法を採用するのが、最も実効性の高い選択肢であると言えます。
この措置の適用を場合、投資登録証明書の公証済みコピー1部、許可取得時に提示した中古設備一覧1部を税関に提出し、輸入手続を行う事になります(同通達第7条・第1項)。

以上

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