華南地域(広東省)の最近のビジネストピックスを、地方通知などを踏まえてご紹介します。
1.国務院による広州南沙において世界に向けて広東・香港・マカオの全面協力を深化する総体方案の公布に関する通知(国発[2022]13号)
昨年、珠海横琴及び深セン前海の2つの広東・香港・マカオ協力方案が公布されてから、中央政府は広東・香港・マカオ大湾区(グレーターベイエリア)の全面的協力を深化させるため、新たに重要な計画を制定し、2022年6月14日、国務院による同「南沙方案」が公布されました。
「南沙方案」では、2025年と2035年の2段階に分けた開発目標と5つの課題を挙げています。
1)段階の目標
2025年、2035年の時点で、南沙に対し、南沙・広東・香港・澳門連合科学技術革新体制のメカニズム、公共サービスのレベル、ビジネス環境等の短期及び長期の目標を掲げ、南沙は広東・香港・澳門の全面協力の重要なプラットフォームになります。
2)5つの課題
・革新を堅持し、科学技術革新産業協力基地の建設を加速する
・発展の機会を創出し、青年の起業・就業協力のプラットフォームの構築を加速する
・高レベルな対外開放への門戸の共同建設を加速する
・ビジネス環境を最適化し、規則の連結メカニズムの構築を加速する
・居住環境を向上させ、質の高い規範的な都市発展の建設を加速する
特に国際経済協力の強化においては、日韓・ASEAN諸国との経済貿易協力を強化・深化させることに言及し、南沙における「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP)の高品質な遂行を支援し、先行して経験を積み重ねます。
「アジア太平洋地域における経済連携協定」(CPTPP)、「デジタル経済パートナーシップ協定」(DEPA)等の国際高水準の自由貿易協定規則を手本とし、圧力テスト(高い基準を設定して実施する自己点検のこと)の強度を拡大する。
EU、北米先進経済体との協力を強化し、金融、科学技術革新等の分野での統合を促進し、地域経済及び世界経済を一層融合させ、国際経済協力の最前線となる地域を建設することが謳われています。
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原文)
2.広東省人民政府による広東省における国務院の経済安定への一括政策措置の着実な実施に関する通知(粤府[2022]51号)
2022年5月24日に国務院が推進した「経済安定への一括政策措置」を着実に実行するため、6月1日、広東省人民政府による広東省における実施方案が公布され、6つの方面から33条131項の具体的な支援政策を提出しました。
1)財政政策
(1)増値税期末未控除額還付政策の一層の拡大を図り、実施する
(2)財政支出の進捗を加速する
(3)地方政府の特別債券発行の使用を加速し、支援範囲を拡大する
(4)政府による融資担保等の政策をより良く活用する
(5)中小企業を支援するため、政府の仕入先を中小企業に拡大する
(6)社会保険の延納政策を着実に実施する
(7)雇用安定を更に支援する
2)貨幣金融政策
(8)中小企業融資、個人事業者の融資、トラック運転手に対する融資、コロナ禍の影響を受けた個人住宅ローンや消費ローン等に対して、元金及び利息の返済延期を実施することを奨励する。
(9)中小零細企業に対する融資支援を強化する
(10)実際の貸出金利の安定的な低下を引き続き推進する
(11)資本市場の融資効率を向上させる
(12)インフラ施設の建設及び重大プロジェクトに対する融資機構の支援
3)安定投資・消費促進への政策
(13)省の重点プロジェクトの推進を強化する
(14)計画に組み込まれ、条件が成熟したと論証された水利プロジェクトを推進する
(15)交通インフラ投資の促進を加速する
(16)地方に応じて都市の地下総合管理(配管廊下の管理)の建設を引き続き推進する
(17)民間投資を安定・拡大する
(18)インターネットプラットフォーム経済(Eコマース事業)の規範的かつ健全な発展を促進する
(19)自動車、家電等の各分野の消費を安定・拡大する
4)食糧・エネルギーの安全政策の保護
(20)食糧収益保障等の政策を健全化・完備させる
(21)一連のエネルギープロジェクトの実施を加速する
(22)石炭の備蓄能力及びレベルを向上させる
(23)原油等のエネルギー資源の備蓄能力を強化する
5)産業サプライヤーチェーンの安定政策の保護
(24)市場主体の水・電気・インターネットに関するコストを引き下げる
(25)市場主体の住宅賃貸料の段階的減免策を推進する
(26)コロナ禍の影響を受けた民間航空等の業界企業への救済支援を強化する
(27)企業の操業再開・生産目標達成政策を最適化する
(28)交通・物流の円滑化政策を完備する
(28)物流センター及び物流企業への支援を統合的に強化する
(30)重大な外資プロジェクトの推進を加速し、積極的に外商投資を誘致する
6)基本的な民生政策
(31)住宅積立金の段階的な支援策を着実に実施する
(32)農業移転人口及び農村労働力の就業・起業の支援政策を完備する
(33)社会民生の保障措置を完備する
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原文)
3.広東省市場管理局による経済安定のための市場主体に対する的確な支援に関する若干の措置に関する通知(粤市監総[2022]251号)
6月2日、広東省市場監督管理局は経済安定を維持するため、市場主体を確実に支援する5方面、16項目の具体的措置を提出しました。通知の主な内容は以下の通りです。
1)市場主体の発展・強大化の推進
市場参入の最適化、審査・認可プロセスの削減と期限の短縮等
2)市場主体への救済支援
知的財産金融を発展させ、関連企業の費用徴収を規範化し、減税・費用引下げを実施し、零細企業や個人事業者向け融資の緩和を支援し、雇用困難を緩和する
3)市場主体の競争力向上を支援
製品の品質向上を推進し、産業の核心競争力を強化し、サービス企業の海外発展を推進する
4)関連重点業界の支援強化
食品産業の発展を支援し、医薬産業の支援を強化し、公告産業の質の高い発展を促進する
5)公平な競争市場環境の維持
プラットフォーム経済の規範的かつ健全な発展を促進し、消費の質の向上とグレードアップを助力し、寛大で慎重な監督管理の法執行を推進する
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原文)
4.広東省人民政府弁公庁による広東省におけるサービス業界の困難業種の回復発展に関する若干措置の通知 (粤弁函[2022]40号)
「サービス業界における困難業種の回復発展に関する若干政策」(発改財金[2022]271号)を着実に実施するため、広東省人民政府は当該措置を制定し、7方面、47条の措置を明確に打ち出しました。
一般的な優遇措置のほか、飲食業、小売業、観光業、道路・水路・鉄道運送業、民間航空業の5つの業界に対しての対策は、以下の通りです。
1)減税・賃貸料引下げの政策強化、サービス業への金融支援
サービス企業の実際状況に応じて、13条の優遇政策を打ち出し、困難企業への救済を支援する
2)飲食業・小売り企業へのPCR検査の補助金支給、デリバリー手数料引き下げ誘導
飲食業・小売り企業の従業員に対しPCR検査の補助金を支給し、デリバリープラットフォームの手数料引き下げを誘導し、金融支援等の具体的な救済支援措置を講じる
3)観光・交通・民間航空業界の増値税減免及び補助金支給
困難救済支援のため、鉄道運送業及び民間航空業に対し、増値税の予納を1年間停止し、EVバス、旅客・貨物運送航路、インフラ建設プロジェクトに対して補助金を与える
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原文)
5.広東省人民政府による中国(韶関)等8市の越境電子商取引総合試験区の実施方案に関する通知(粤府函[2022]58号)
5月5日、広東省政府は、国務院により設立許可された広東省8都市の越境電子商取引総合試験区に対して、実施方案を公表しました。
国務院が2月8日に、27の都市と地域に越境電子商取引総合試験区の設立を許可し(「国函[2022]8号」)、広東省の韶関、河源、汕尾、陽江、清遠、潮州、揚陽、雲浮8都市が含まれています。
同通知は、8都市の総合試験区に関するそれぞれの実施方案が含まれます。地方の特色に応じる発展目標、発展路線、主な建設任務及び革新措置などが明確にされています。越境電子商取引総合サービスプラットフォームの建設を加速し、政府の監督管理・産業発展・サービスの3つのレベルをもとに越境電子商取引全産業チェーンの閉鎖型生態圏を構築することを共同目標としています。
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原文)
6.広東省人民政府弁公庁による広東省電子印鑑管理暫行弁法に関する通知(粤弁函[2022]49号)
電子印鑑の普及応用及び規範管理を更に強化し、「広東省デジタル経済促進条例」の実施を支持するため、省政務サービスデータ管理局は関連部門と共同で「広東省電子印鑑暫行弁法」(以下「弁法」という。)を制定しました。5月19日から施行され、有効期間は3年間です。
同暫行弁法は7章24条から構成され、総則、電子印鑑システム、電子印鑑の申請及び作成、電子印鑑の使用及び管理、情報安全要求、法的責任及び付属規則等が記載されています。主な内容は以下の通りです。
1)適用範囲と管理部門の明確化
省政務サービスデータ管理局は本省の行政機関及び事業体電子印鑑の規範管理を担当し、公安機関は社会組織、企業、個人事業者及びその他組織の電子印鑑の規範管理を担当し、省密碼管理局は電子印鑑の暗証番号の応用管理を担当する
2)電子印鑑システムの分類構築・運営
省政務サービスデータ管理局は本省の電子印鑑システムの建設を統合的に計画し、全省党政府機関及び事業体等に電子印鑑サービスを提供する。本省範囲内の社会組織、企業、個人事業者及びその他組織は市場化の原則を採用し、統一基準を採用したサービス機構を選択して電子印鑑サービスを利用する。作成した電子印鑑は規則に従って公安機関にて届出を行う
3)電子印鑑の全プロセス管理の強化
電子印鑑の申請、審査・許可、作成、保存、確認、使用、保管、抹消等について具体的な要求を提出する
4)情報セキュリティと法的責任の強調
電子印鑑に関する情報の厳密な秘密保持を要求し、国家基準と関連規定に合致する技術及び製品を採用し、健全かつ安全なシステム及びデータの安全なメカニズムを構築し、情報の安全保護を強化する
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原文)
7.電子発票の全面デジタル化試行業務の更なる展開に関する公告(国家税務総局広東省税務局公告2022年第2号)
広東省税務局は、課税徴収管理改革深化を着実に実施するため、4月1日から、広東省(深?市を除く)における電子発票(「全電発票」と略称)の全面デジタル化の試行措置を実施しています。
同公告は、「全電発票」の試行範囲、発票受領者範囲、プラットフォームのURL、発票の様式、申請手続きなどが詳しく明記されています。概要は以下の通りです。
1)2022年4月1日から、広東省(深?市を除く)において、一部の納税者に対して、「全電発票」を試行する。電子発票サービスプラットフォームを使用する納税者が試験対象となり、具体的な範囲は広東省税務局が確定する。
2)「全電発票」の法的効力と基本用途等は紙質発票と同じである。
3)広東省の全電発票は、国家税務総局広東省税務局の監督のもと実施する。
4)試験納税者は、実名認証の上、電子発票サービスプラットフォームで直接発票を発行することができる。税務制御専用設備(UKey)の使用、以前発行した発票の検査は不要である。全電発票は発票種類の確定と発票用紙の受領申請は不要とする。
5)税務機関は試験納税者に対し、起票金額の総枠を管理する。
6)電子発票サービスプラットフォームは、税務データ口座に対して、自動的に発票データを統計して、試験納税者による発票の調査、確認、ダウンロード、印刷、用途確認、及び税収政策調査、起票総枠の調整申請、発票リスクリ管理などの機能がある。
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原文)
8.全面デジタル化電子発票の受領者範囲拡大に関する公告(国家税務総局広東省税務局公告2022年第3号)
6月16日、広東省税務局は、全面デジタル化電子発票(「全電発票」と略称)の普及・利用を引き続き強化することを決定しています。前段階の試験結果を踏まえ、広東省(深?市を除く)において発行された全電発票の受領者の範囲は、広東省から全国に、段階的に拡大していきます。具体的な適用範囲拡大ステップは、各省税務機関の試行公告に基づきます。
広東省の試験納税者は、内モンゴル自治区、上海市の試験納税者が発行した全電発票を受領することができます。また、同公告は、赤字発票の発行について明確にしています。
2022年6月21日から施行されています。
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原文)
9.広東省財政庁・国家税務総局広東省税務局「財政部・税務総局による横琴広東・マカオ深度協力区における個人所得税の優遇政策に関する通知」(粤財税[2022]1号)
「横琴広東・マカオ深度協力区の建設総体方案」を着実に実行し、横琴広東・マカオ深度協力区の建設を支援するため、横琴広東・マカオ深度協力区における個人所得税優遇政策に関する通知が公布されました。主な内容は以下の通りです。
1)協力区で勤務する境内外ハイエンド人材と緊急不足人材に対する個人所得税金額は、課税所得額15%を超過した部分が免除される。ハイエンド人材と緊急不足人材リストは広東・香港・マカオ大湾区の建設指導グループが審査・許可する。
2)協力区で勤務するマカオ居民は、マカオでの個人所得税の納税金額が超過した部分が免除される。
3)優遇政策を享受する所得は、協力区から取得した総合所得(給与、労働報酬、原稿料、特許権使用料の4つの所得)、経営所得及び地方政府の認定を得た人材補助金所得が含まれる。
4)優遇適用対象者は、協力区で個人所得税の年度確定申告を行う際に、優遇政策を享受する。
5)有効期間は2021年1月1日から2025年12月31日までとする。
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原文)
10.広東省財政庁・国家税務総局広東省税務局による「横琴広東・マカオ深度協力区における企業所得税の優遇政策に関する財政部・税務総局の通知」(粤財税[2022]17号)
5月25日、広東省財政庁と広東省税務局は、横琴広東・マカオ深度協力区の財政局と税務局に、財政部・税務総局の通知を転送しました。協力区の企業所得税優遇政策は、2021年1月1日から実施されています。優遇の要点は以下の通りです。
1)協力区に設立された、条件に合致する企業の企業所得税は15%を適用する。
2)協力区に設立された観光業、現代サービス業、ハイテク産業企業は、新規の海外直接投資によって取得した所得に対しては、企業所得税が免除される。
3)協力区に設立された企業は、新規購入の固定資産、無形固定資産(自社建設・開発)の単位価値が500万元(500万元を含む)を超過しない場合、当期原価に一括計上し、課税所得額を算定するに際して控除する。新規購入の固定資産、無形固定資産(自社建設・開発)の単位価値が500万元を超過した場合、減価償却期間、償却期間を短縮するか、加速償却方法を採用することができる。
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参考資料:
横琴広東・マカオ深度協力区における企業所得税の優遇政策に関する「十問十答」(中文
原文)
11.深セン市前海管理局による「前海における企業所得税優遇政策産業認定のサービス案内」に関する通知
前海の企業所得税優遇政策の完遂を目的として、深セン市前海管理局は、「前海における企業所得税優遇政策産業認定サービス案内」を制定しました。2022年5月20日から実施され、有効期間は5年間です。
「財税[2021]30号」及び深セン市政府の授権に基づいて、税務当局は前海深セン・香港現代サービス業協力区(以下「前海」という。)における企業の主要営業収益が「前海深セン・香港現代サービス業協力区の企業所得税の優遇政策目録(2021版)」(以下「優遇政策目録」という。)に該当するかどうかの判定が難しい場合、深セン市前海深セン・香港現代サービス業協力区管理局(以下「管理局」という。)が解釈に責任を持ちます。
1)適用対象
「財政[2021]30号」の規定に基づき、主要営業収入が「優遇政策目録」に該当するがどうか、税務当局の判定が難しい企業。
2)作業プロセス
税務当局は「財政[2021]30号」の要求に基づいて、主要営業収入が「優遇政策目録」に該当するかどうか、判定が難しい企業に対して管理局に企業の名称及び関連情報を提供して判定を依頼する。
管理局は、税務機関の判定依頼を受けた日から10営業日以内に、対象企業に対し判定に関する必要書類を提供するよう通知する。対象企業が提供した書類が完全であり、規定された形式に合致した場合、管理局は受理する。管理局は、原則として受理決定日から30営業日以内に税務機関に意見を提出する。特別な状況の場合、20営業日以内延長することができる。
3)与信管理
前海の与信税収ランクにより分類された「1類企業」に対し、管理局は書類抽出検査或いは現場検証サービス等の方法で作業の効率を向上させる。
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12.東莞濱海湾新区の「香港・マカオの人材による濱海湾新区での新たな革新起業に関する暫定弁法」の通知(濱海湾発[2022]第6号)
4月19日、東莞濱海湾新区管理委員会は、香港・マカオ・台湾の人材(中国公民の身分を有する香港・マカオ・台湾の住民、または香港・マカオ・台湾の大学に就学した中国本土の公民)によるイノベーション・起業及び就業などを支持するため、同通知を公布しました。
東莞濱海湾新区に指定された産業(新生代情報技術・人工知能・生命健康・現代サービス業など)に関連するイノベーション・起業及び就業は、8方面におよぶ優遇策が適用され、大湾区の他の地域より高い基準で補助金が支給されます。
個人所得税については、新区に納付した税額が年間2.5万元以上に達し、東莞市の境外ハイエンド人材または緊急不足人材に認定されていない香港・マカオ・台湾の人材を対象に、税率15%を超過する部分に対して、財政補助を支給します。
同通知の有効期間は2022年5月19日から2024年12月 31 日となります。
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