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経済閣僚記者会見(1)

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2012年4月5日

記事概要

全人代では、最終日の総理内外記者会見以外にも、会期中に主要経済閣僚の記者会見が行われる。本稿では、政府3報告と重複していない内容を中心に、国家発展・改革委員会の張平主任の会見(3月5日)の概要を紹介する。【4,960字】

はじめに
 全人代では、最終日の総理内外記者会見以外にも、会期中に主要経済閣僚の記者会見が行われる。本稿では、政府3報告と重複していない内容を中心に、国家発展・改革委員会の張平主任の会見(3月5日)の概要を紹介する。

1.2011年が9.2%の成長だったことについて
 昨年が9.2%だったことについては、我々は全面的に正確な認識をもつ必要がある。ここには、2つの1.2の概念がある。昨年定めた経済成長率の予期目標は8%であり、我々は9.2%を実現した。つまり、予期目標に比べ1.2ポイント超えている。しかし、一昨年の10.4%に比べれば、1.2ポイント反落している 。この問題をどう見るか?私は以下の方面から見るべきだと思う。
(1)9.2%の成長率は依然比較的速い成長速度であり、言い換えれば、この成長率はなお比較的速い区間にある。
 昨年の世界経済の成長率は3%前後にすぎなかったが、このような峻厳・複雑な情勢下で、我々は9.2%を実現した。
(2)これは、我々が主体的にコントロールした結果であり、言い換えれば、このような発展速度は我々のマクロ・コントロールの予期目標に向かって発展しているということである。
 党5中全会及び第12次5ヵ年計画要綱は、いずれも第12次5ヵ年計画期間の経済成長率の予期目標を7%と提起している。昨年はスタートの年であり、我々は目標を8%と定めたが、これは1つのつなぎ、あるいは過渡的なものである。
(3)経済成長率を適度に少し鈍化させ、少し低く定めた目的は、科学的発展を主題とし経済発展方式の転換加速を主線とする経済発展路線を更に好く貫徹させるためである。
速度が少し低くなれば、需給の矛盾を緩和し、資源・環境の制約を緩和し、物価上昇圧力を緩和することができ、更に多くの注意力を経済発展方式の転換、経済構造の調整、経済発展の質・効率の向上に向けることができる。したがって今は、政策の注力点を経済発展方式の転換に向けることができると期待している。
 昨年の経済成長率は9.2%で、前年より1.2ポイント鈍化したが、中国経済の発展が長期的に好い方向に向かっているという基本面は変わっていない。このため、経済発展全体は、なお長期的に平穏で比較的速い発展という軌道を実現可能である。我々はなお戦略的チャンスの時期にあり、これも変わっていない。このため、私は昨年の9.2%について、このような正確な認識をもたなければならないと思う。

2.2012年の成長率を7.5%としたことについて
 主として、以下のような考慮に基づくものである。
(1)経済発展の動向を客観的に反映した
 国際経済情勢は依然峻厳・複雑であり、これには欧州ソブリン危機、地域のホットイシュー、先進国が回復過程で多くの困難に遭遇していることが含まれ、外部環境は楽観できない。国内では、我々はなお科学的発展観を貫徹し、多くの精力を経済発展方式の転換に向けなければならない。このため、このような考慮に基づいて、我々は今年の成長率予期目標を7.5%と定めた。これは、経済発展の趨勢を反映したものである。
 しかも、峻厳・複雑な情勢に直面しながら7.5%の成長率を実現するには、非常に困難な努力を払わなければならない。言い換えれば、7.5%は低い成長率ではない。我々も、各方面が政策の注力点を経済発展方式の転換・経済構造の調整に向け、持続可能な発展を更に好く実現することを希望している。
(2)我々の発展速度を第12次5ヵ年計画の目標にリンクさせるためである
第12次5ヵ年計画の成長率目標が7%であることを考慮すると、昨年8%と定め、今年7.5%と定めたことは、第12次5ヵ年計画目標に徐々に接近或いはうまくリンクしてきている。
このような按配は、経済発展における際立った矛盾をも緩和する作用があると思う。このため、このような目標はわが国の実際に符合しており、科学的発展観の要求に符合しており、全国各方面が共同して努力してこそ実現できるものである。

3.国有企業改革
 国有経済分野において、我々は大企業の制度改変・再編を実行し、国有企業に対して株式制・会社制度の改造を実行し、吸収合併・再編を実行した。中央企業は、過去には190社余りあったが、昨年末はわずか117社となり、その60%は会社制度或いは株式制の改造を既に実現している。主営業・親会社を含め、いくらかの企業は既に上場会社となっており、株式制改造を実行した。
 次に我々は、個人・私営経済の発展に力を入れる。いささかも動揺することなく公有制経済の発展を支援すると同時に、いわさかも動揺することなく民営経済の発展を奨励・誘導する。

4.当面及び2012年の物価動向
 我々も真剣に分析・判断している。我々は今年の物価を安定させる有利な条件を備えているが、当然いくらかの試練にも直面している。
(1)有利な条件
 農業は連続8年豊作であり、食糧在庫は充実している。現在各地は、養豚・野菜生産を高度に重視しており、生産も安定している。食用油・砂糖の需要についても在庫は充足しており、保障されている。工業消費財は、総体として供給過剰の状況にある。
 これに加えて、我々は備蓄条件の改善、流通秩序の整頓、流通コストの引下げ、市場監督管理の強化を行っており、これら一連の措置が今年の物価を抑制するものと、私は非常に自信をもっている。
(2)直面する試練
 これには輸入インフレが含まれる。一部の大口商品、たとえば我々は石油・鉄鉱石・食用油を輸入しなければならず、これらの大口商品価格は高止まりで振幅している。国内の一部農産品の需給関係は逼迫した均衡状態にあり、今年の自然条件とりわけお天道様が我々にどのような天候条件をもたらすか、なお大きな不確定性がある。
 このほか、我々は一部の資源性産品の価格を調整しなければならず、価格改革のために一定の余地を残しておかなければならない。とりわけ、国内の一部の生産要素のコストが上昇しており、この傾向は比較的長期間存在する可能性がある。例えば、賃金の上昇、土地価格の上昇、これらは比較的長期間存在し、言い換えれば一種の趨勢となっている。
 このような試練があるため、我々は今年の物価安定政策について気を緩めてはならないし、軽視してはならない。

5.2011年の成長率の内訳
 2011年の9.2%の成長率の資本形成の寄与度(寄与率)は、5ポイント(54.2%)、最終消費は4.7ポイント(51.6%)、純輸出は-0.5ポイント(-5.8%)であった。

6.消費の拡大策
 簡単に次の点を述べておきたい。
(1)庶民に消費の金を持たせる
 個人の消費能力を増やし、個人の所得水準を高めなければならない。これには、就業の拡大、農産品最低購入価格の引上げ、最低賃金基準の調整、賃金の正常な増加メカニズムの確立等が含まれる。
(2)庶民にあえて消費をさせる
 金があれば、あえて使うようにさせることである。中国人の伝統的な習慣では貯蓄をしなければならず、将来の病気を防がなければならず、子供の就学を準備しなければならず、老後に金を使わなければならない。庶民にあえて金を使わせるため、最も重要な措置、言い換えれば問題を解決する方法は、社会保障制度を確立・整備し、庶民の後顧の憂いをなくすことであり、そうしてこそ、あえて金を使うことができるようになるのである。
(3)庶民に喜んで消費をさせる
 これには、いくらかの奨励政策・措置を採用しなければならない。例えば、皆が省エネ・材料節約・節水・環境保護の製品を買うことを奨励するため、税の減免或いは補助を与える。また、新エネルギー自動車を買った場合には、国家が一部を補助する。そうすれば、庶民は喜んで消費することになる。
(4)庶民に便利に消費させる
 消費環境・消費の条件を改善する。これには、流通インフラの改善、たとえば都市・農村の販売ネットワーク、ブロードバンド通信の建設、交通インフラの建設等が含まれる。また、新型消費業態の発展、例えばインターネット購入等も含まれる。
(5)庶民に安心して消費させる
 市場監督管理を強化し、市場の詐欺行為を防止し、偽物・劣悪製品を防止しなければならない。

7.外需の役割
 当然、外需については軽視してはならないし、放棄してはならない。我々は引き続き対外開放を拡大し、対外貿易発展方式を転換し、新興市場を開拓することにより、我々の対外経済協力・外需が持続的発展を維持できるようにしなければならない。内需と外需は相補うものであり、一方をおろそかにしてはならない。このようにしてこそ、我々の経済は長期にわたし平穏で比較的速い成長を維持できるのである。

8.不動産コントロール
 不動産業は、一地方経済の発展に大きな影響力をもっている。このため、現在一部の地方に住宅購入を奨励するための政策を採用する動きがある。中央政府の態度は非常に明確である。即ち、不動産業へのマクロ・コントロールの各種政策を動揺させないことを引き続き堅持し、不動産業の長期に健全で安定した発展を促進しなければならない。
 現行の政策措置を堅持する基礎の上で、我々は現在不動産マクロ・コントロールの長期有効なメカニズムの確立を検討している。当然、最近のコントロール目標からすれば、我々は不動産価格が合理的に回帰できることを希望しており、これは温家宝総理が「政府活動報告」で特に強調していたことである。

9.民営経済の発展
 民営経済の発展を誘導・奨励することについては、党・政府は常に高度に重視している。それゆえ、2005年に36項目政策を打ち出し、2010年には再び36項目政策を打ち出したのである。この2つの36項目は、いずれも民営経済の発展を誘導・奨励するものである。2010年の36項目は、問題への対応性を更に強めた。その対応とは、市場参入問題であり、民間投資が法律が認めた業種・分野に参入することを奨励・誘導するものである。
 党・政府の指導・関心・支援の下、民営経済は大きく発展した。昨年の都市固定資産投資の伸びは23.8%であるが、民間資本は34%成長した。2010年に新36項目が打ち出されて以降、17の省が36項目を貫徹する具体的措置を打ち出し、多くの部門も36項目を貫徹する実施細則を打ち出した。このため、民間資本の発展を誘導・奨励するうえでは、大きな進歩があった。
 しかし、はばかることなく言えば、我々は多くの不十分なところがあり、完全には心にかなっていないところがある。一部の業種・分野には、なお「ガラスの門」「バネ仕掛けの門」現象があり、中は見えるが入ることができず、或いは少し入ると撥ね返されてしまうのである。民営経済は強大な活力があり、中国経済の発展は民営経済と不即不離である。したがって、我々は断固として基本的経済制度を貫徹し、引き続き民間投資・民営経済の発展を奨励・誘導しなければならない。
 このような認識・判断に基づき、最近国務院は、市場参入問題を解決することについて、各関係部門は具体的実施細則を打ち出し、「ガラスの門」「バネ仕掛けの門」現象を解決するよう強調しており、かつ既に明確に期限を切って今年上半期に関連実施細則を出さねばならないとしている。温家宝総理の言い方を用いれば、これは「絶対命令」である。

10.省エネ・環境保護目標
 昨年、各種要因の影響により、省エネ・主要汚染物質排出削減目標に達成は十分良好ではなかった。具体的には、3つ完成し、未達成も3つであった。
未達成の3つは、
①エネルギー消費
 GDP単位当りエネルギー消費の年初目標は-3.5%前後であったが、実際には-2.01%だった。
②二酸化炭素
GDP単位当り二酸化炭素排出強度も未達成だった。これは、エネルギー消費の構造と関係がある。昨年の重要要因は、南方地域の旱魃により降雨が減少して以降、水力発電が完全には出力せず、エネルギー構造とりわけ電力構造において、火力発電の伸びが大きくなり、水力発電が下降した。このことにより、GDP単位当り二酸化炭素排出量の減少率は、エネルギー消費強度の減少率に及ばなかった。
③二酸化窒素
 年初の目標は-1.5%前後であったが、実際の結果は下降せず、5.73%増加した。
 達成した3つは、①二酸化硫黄-2.2%(目標-1.5%前後)、②化学的酸素要求量-2%(目標-1.5%前後)、③アンモニア性窒素-1.53%(目標-1.5%前後)である。

(3月30日記4,960字)

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