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ログイン2010年8月20日
1-6月期の主要経済指標が発表されて以来、7-9月期経済について様々な憶測が出ているが、国家情報センターマクロ経済情勢課題グループ(組長:範剣平、副組長:祝宝良)の報告は、経済成長を決める各要素に影響を与えるプラス・マイナスの要因をバランスよく分析しており、以下そのポイントを紹介したい。【4,368字】
はじめに
1-6月期の主要経済指標が発表されて以来、7-9月期経済について様々な憶測が出ているが、国家情報センターマクロ経済情勢課題グループ(組長:範剣平、副組長:祝宝良)の報告は、経済成長を決める各要素に影響を与えるプラス・マイナスの要因をバランスよく分析しており、以下そのポイントを紹介したい。
1.マクロ経済の概観
7-9月期の経済成長率は、調整が続く。7-9月期を展望すると、わが国のマクロ・コントロール政策の基本方向は変わらない。1-6月期に打ち出した、不動産市場のコントロール、落伍した生産能力の淘汰、輸出税還付率の引上げ[1]、為替レートの再度の改革等の政策は、経済構造調整を更に強化し、わが国経済成長の質・構造の更なる改善を推進する。
外部環境は複雑で変化に富み、政策の限界効果が逓減し、在庫投資が基本的に一段落し、前年同期のベースが高まっているなどの要因の作用の下、わが国経済成長率は引き続き穏やかな調整が続き、7-9月期のGDP成長率は9.2%前後と予想される。
経済発展方式の転換を加速し、経済構造を調整し、省エネ・主要汚染物質排出削減目標を達成するためには、速度の代償を少しも払わぬということは不可能である。わが国は国際金融危機に対応する包括的計画の実施の程度を減じないと同時に、不動産・生産能力過剰業種及び地方融資プラットホームに対する局部的政策を微調整すること、また、民間投資の奨励と戦略的新興産業の支援政策と同時に、維持するものと抑制するものを区別する構造政策を推進することにより、中国経済の減速において急降下の局面は出現しない。主要経済指標の7-9月期、10-12月期の動向から見て、「前高後低」の成長率は依然予想の範囲内である。
2.工業
(1)有利な要因
①先行指数(PMI)が依然比較的活発である。
②上半期、工業投資が4兆517億元完成し、前年同期比52.1%増となった。
うち、製造業への投資は3兆1109億元、同24.9%増であり、これが下半期の工業生産の基礎を打ち立てる。
③下半期の国際市場における、石油・鉄鉱石等の主要一次産品価格の前年同期比の上昇率は徐々に鈍化する。
国内工業品工場出荷価格に影響し、企業の生産コスト圧力がある程度軽減される。
(2)不利な要因
7-9月期は、工業成長を抑制する要因が加速要因よりも多い。
①工業品の在庫投資が一段落し、一部の重化学工業製品は再度在庫を減らす可能性がある。
②国家は、省エネ・汚染物質排出削減を強化し、エネルギー多消費業種の生産を主動的に調整している。
最近、国家はエネルギー多消費業種のプロジェクト新規着工を抑制し、落伍した生産能力の淘汰を強化し、差別的な電力価格を実行し、一部のエネルギー多消費製品の輸出税還付率を取り消す等の一連の措置を採用しており、さらに加えて不動産市場の沈静化政策を行っている。これにより、内需・外需両方面からエネルギー多消費業種の落伍した生産能力は、生産から退出を余儀なくされる。
③今年の世界経済の成長も「前高後低」の傾向が現れる。
④前年同期のベースが明らかに高まる。
(3)結論
7-9月期の一定規模以上の工業生産の伸びは12.8%前後であり、伸びは上半期より4.8ポイント減少する。うち、重工業の伸びは13.5%前後で、伸びは上半期より5.9ポイント減少し、軽工業の伸びは11.2%前後で、伸びは上半期より2.4ポイント減少する。
3.消費
(1)有利な要因
①個人所得が引き続き比較的速く伸びており、消費拡大の基礎を打ち立てる。
今年に入り、企業退職者基本年金が10%引き上げられ、一部の省市で最低生活保障基準が引き上げられた。23の省市が最低賃金基準を引き上げ、平均引上げ率は20%近い。労働力需給の変化が、一部地域の出稼ぎ農民の賃金を大幅に増加させている。
②消費拡大政策は引き続き作用を発揮する。
「家電の農村普及」及び「家電更新」政策の期限が延長され、「自動車更新」及び新エネルギー・省エネ自動車補助政策が省エネ消費・グリーン消費を促進する。
③社会保障制度が不断に整備され、消費者の後顧の憂いが減少傾向にある。
(2)不利な要因
①不動産市場コントロール政策は住宅消費の伸びの鈍化をもたらす。
これは、家具・家電・建材・内装材料等の関連商品の消費に影響する。
②自動車消費の伸びが鈍化している。
自動車販売は、3月の173.5万台をピークに急降下している。自動車販売の前年同月比は、4月34.9%増、5月28.5%増、6月23.6%増と3ヶ月連続で大幅に反落しており、前月比では、4月-10.4%、5月-7.5%、6月-1.8%となっている。
③水道・電気・天然ガス等の資源価格が上方改定されている。
④消費刺激政策の限界効果が逓減し始めている。
同時に、マイナス金利は個人貯蓄等の資産を縮小させ、個人の実質購買力に影響を与えている。
(3)結論
7-9月期の社会消費品小売総額の名目の伸びは18.2%前後、実質の伸びは前年同期よりある程度緩慢になる。
4.消費者物価
(1)上昇抑制要因
①国家がインフレ期待の管理を今年の重要な調整任務とし、政府物価主管部門が物価コントロール・監督管理を更に強化する。
②今年の夏季穀物はある程度減産したが、建国以来3番目の高収穫であり、とくに連続6年穀物は豊作になっているので在庫に比較的余裕がある。
③不動産市場コントロールが初歩的な成果をおさめ、住宅価格の速すぎる上昇に歯止めがかかり、一部地域では前月比マイナスとなっており、これがインフレ期待を緩和する。
④国際市場の主要一次産品価格は前年同期比の上昇幅が緩慢となっており、これが輸入インフレ圧力を軽減する。
(2)上昇の不確定要因
①極端な天候要因が穀物生産に直接影響を与え、農産品の安定的生産・増産に困難をもたらしている。
7月に入って以降、洪水災害等の要因の影響で、生鮮野菜・果物の価格がかなり速く上昇している。
②豚肉価格の食品ないし消費者物価への影響がかなり大きい。
豚肉価格は今後上昇の可能性が増している。
③下半期に入り、多くの地域で水道・電気・天然ガスの価格の上方改定案が打ち出されている。
④現在、わが国は労働力の構造的不足段階に徐々に入っており、年初以来の労働力逼迫が出稼ぎ農民の賃金を明らかに増加させ、企業の労働コストを上昇させている。
⑤タイムラグ要因はなお軽視できず、7月は2.1ポイント、8月は1.6ポイント、9月は1.2ポイント存在する。
(3)結論
7-9月期のCPIは3%前後の上昇、PPIは5.1%前後の上昇となる。
5.固定資産投資
(1)有利な要因
①収益の大幅な伸びが企業の投資意欲を強化している。
②5月13日に国務院が公布した「民間投資の健全な発展を奨励・誘導することに関する若干の意見」(新非公36条)等の政策が民間投資を促進する。
③下半期、社会保障の性格をもつ住宅への投資が加速する。
5月19日、住宅・都市農村建設部は各省・区・市政府と2010年住宅保障活動目標責任書を締結した。しかし、現在大部分の省市の進度は明らかに遅れており、目標責任書の制約と住宅価格が依然高止まりの背景の下、7-9月期に社会保障的性格をもつ住宅の建設進度が加速することが期待される。
④国際環境が複雑で変化に富み、国内経済に明らかに減速が現れている状況下、4兆元刺激計画の後続の投資プロジェクトの進度が加速することが期待される。
⑤西部大開発の新規投資増が総投資の伸びを奮い起こす。
同時に、中央新疆工作座談会の後、新疆の発展は明らかに加速しており、投資規模が大幅に引き上げられている。
(2)不利な要因
①新規プロジェクト着工を厳格に抑制する中央の政策が徐々にその作用を発揮しており、政府投資プロジェクトが徐々に減少している。
上半期、新規プロジェクト着工計画総投資は前年同期比26.5%増であり、昨年末より40.7ポイント減少した。
②地方政府融資プラットホームの規範化政策が、地方政府のインフラ建設等後続投資の資金源に影響を与える。
③落伍した生産能力、エネルギー多消費業種の輸出税還付率引下げあるいは取消し等の政策が、鉄鋼・建材等関連産業の投資に抑制作用をもたらす。
④不動産市場コントロール政策が不動産投資の予想リターンに一定程度影響を及ぼし、とりわけ住宅販売面積の伸びの大幅な鈍化は不動産投資の伸びに影響を及ぼす。
(3)結論
7-9月期の都市固定資産投資の伸びは22%前後であり、伸び率は上半期より3.5ポイント反落する。
6.輸出
(1)有利な要因
①世界経済の回復は度重なる困難に直面しているが、「二番底を探る」動きは出現しておらず、世界経済は穏やかに回復している。
②輸出促進・市場維持は、依然対外貿易政策の核心的任務であり、人民元の国境を越えた決済、人民元の互換協議の範囲拡大、輸出信用の限度額増加、輸出保険のカバー率の拡大等の政策が輸出の伸びを推進する。
③輸出価格指数は反転上昇しており、輸出額の伸びに資する。
(2)不利な要因
①2010年、世界経済の伸びは前高後低の構造を示しており、下半期に世界経済の成長はある程度鈍化する。
とりわけ、欧州債務危機後、財政再建は各国の関心の焦点となっており、大部分の国家は財政支出の緊縮を開始している。これは、世界経済の回復プロセスを更に抑制することになる。同時に、欧州債務危機は欧州国家の流動性を逼迫させ、貿易融資のコストの上昇をもたらした。このため、外需の伸びが鈍化しており、これがわが国の輸出に不利な影響をもたらす。
②先進国の失業率が高止まりであり、為替レートが波動しており、しかも今年は米日英等主要国家の選挙がピークとなる年であったため、各候補者は続々と保護貿易主義の大旗を打ち出し、有権者の支持を勝ち取った。
米欧国家の保護主義感情は高まっており、各国政府は本国企業に対する支援を再強化するか、あるいは更に多くの保護貿易主義的な財政刺激措置を推進し、これらの措置の実施期間を延長する可能性がある。国際保護貿易主義はわが国の輸出に影響を与える要因の1つである。
③輸出税還付の引下げは、輸出製品構造を調整する。
財政部・国家税務総局は、7月15日から輸出税還付対象商品406項目を取り消すことを決定した。主として、鋼材・非鉄金属・医薬化学工業・プラスチック・ゴム製品等の「エネルギー多消費・高汚染・資源性」業種である。これらの業種の製品は、輸出税還付取消調整前は、それぞれ5-17%の異なる輸出税還付率を享受していた。一部企業は輸出税還付取消前に争って突撃的輸出を行い、ここ2ヶ月輸出は急増していた。7-9月期は、これらの業種の輸出が大幅に減少し始める可能性がある。
(3)結論
7-9月期の輸出は、前年同期比25%前後の伸びで、輸入は29%前後の伸びとなる。貿易黒字は367億ドルで、前年同期比4.7%前後の減少となる。
(4,368字)
[1]原文は「引上げ」となっているが、「引下げ」の間違いと思われる。
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