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ログイン2015年8月20日
7月28日、李克強総理は国務院常務会議を開催し、①都市地下共同溝建設推進を手配し、公共財の供給を拡大して、新しいタイプの都市化の質を高めること、②観光投資・消費を促進する政策措置を確定し、安定成長・構造調整・民生優遇の新しい支点を作り上げること、を決定した。また、31日の国務院常務会議では、信用保証業の改革・発展の加速を決定している。これも景気テコ入れの一環である。
本稿では、会議の概要と李克強総理の28日会議での発言を紹介する。
はじめに
7月28日、李克強総理は国務院常務会議を開催し、①都市地下共同溝建設推進を手配し、公共財の供給を拡大して、新しいタイプの都市化の質を高めること、②観光投資・消費を促進する政策措置を確定し、安定成長・構造調整・民生優遇の新しい支点を作り上げること、を決定した。また、31日の国務院常務会議では、信用保証業の改革・発展の加速を決定している。これも景気テコ入れの一環である。
本稿では、会議の概要と李克強総理の28日会議での発言を紹介する。
1.国務院常務会議(7月28日)
(1)都市地下共同溝の建設
長期に存在する都市地下インフラが落後しているという際立った問題に対して、わが国の国情から出発して、国際的・先進的な経験を参考に、都市の建設において、電力・通信・広域電力・上下水道・熱力・ガス等のライフラインを集中して敷設した地下共同溝を建設し用いることを、国家が重点的に支援する民生プロジェクトとする。
これは都市インフラ建設を刷新する重要な措置であり、「道路ファスナー(休みない掘り返しで道路が傷だらけになること)」、「空中蜘蛛の巣(空中に電線が張り巡らされている状態)」等の問題を徐々に解消できるだけでなく、地下の空間資源をうまく用い、都市の総合受容能力を高め、民生の需要を満足させ、さらには有効な投資を牽引し、公共財の供給を増やし、新しいタイプの都市化の発展の質を高め、経済発展の新たな動力を作り上げることにもなる。
①各都市政府は、都市発展の展望を総合的に考慮し、「先に計画し、後で建設する」という原則に基づき、地下共同溝建設特別計画を編成し、年度建設において優先的に手配し、地下空間を留保・コントロールしなければならない。
②全国において地下共同溝建設モデルを展開し、模索して得た経験の基礎の上に、都市新区・各種パーク・広範囲の開発地域で新たに建設する道路には、同歩調で地下共同溝を建設しなければならない。
旧市街地は、都市再開発・道路改造・河川道路対策等を結びつけ、共同溝建設を統一的に企画・手配しなければならない。
既に共同溝を建設している地域では、全てのライフラインを入れなければならない。
共同溝以外の地域では、新たなライフラインを建設してはならない。
③共同溝建設と地震対策・防災等の基準を整備し、プロジェクトの計画・建設・運営の各方面において質の安全の主体責任制を実施し、終身責任と永久公表制度を確立し、プロジェクトの質と安全な運営を確保し、社会の監督を受けさせる。
④投融資メカニズムを刷新し、財政投入を増やすと同時に、フランチャイズ・投資補助・貸出利息補填等の方式を通じて、社会資本が共同溝建設と運営管理に参加することを奨励する。
ライフラインを共同溝に入れた単位は、適切な共同溝埋設費と日常の維持費を納付し、プロジェクトの合理的・安定的なリターンを確保しなければならない。
開発金融の役割を発揮させ、共同溝建設を特別金融債の支援範囲に組み入れ、共同溝の建設・運営について企業が債券・株式等を発行して資金調達することを支援する。
都市の集約的で効率の高い安全な発展を通じて、民生・福祉を向上させる。
(2)観光投資・消費を促進する政策措置
改革・イノベーション通じて観光投資・消費を促進することは、現代サービス産業の発展を推進し、雇用・個人所得を増やし、人民の生活の質を高めることにとって、重要な意義を備えている。このため、
①観光消費の環境を改善しなければならない
中西部地方の支線空港、観光地への道路、駐車場、観光地のトイレ等の建設強化を支援し、観光市場の価格と経営秩序を規範化する。
②個性化・特色化した農村観光を発展させなければならない
大学卒業生・帰郷出稼ぎ農民等が農村観光を通じて自主起業することを支援しなければならない。農村観光による貧困扶助を推進する。
③観光消費の新しいホットスポットを発掘しなければならない
オンラインによるリゾート地滞在、観光レンタカー等の「インターネット+」新業態の参入と経営許可を緩和し、オリジナルの観光商品の研究開発、観光装置製造業を発展させる。高齢者観光・研修旅行・健康観光・クルーズ経済等を発展させる。各地方の有給休暇制度実施を推進する。
④政府投入を増やさなければならない
社会のパワーを動員し、PPP等のモデルの採用による投資建設と観光プロジェクトの運営を奨励し、観光企業の資金調達ルートを開拓し、金融機関が貸出支援を増やすよう奨励する。多彩な観光により大衆の生活を豊かにし、経済発展を助ける。
2.国務院常務会議(7月31日)
市場主導と政策支援を結びつけることを顕示し、信用保証業の発展を的確に加速し、金融改革を深化させ、小型・零細企業と「三農」の資金調達の難題を解決することは、方向を定めたコントロールの重要措置であり、大衆による起業・万人によるイノベーションを推進し、「三農」を支援することによって実体経済の「細胞」の活力を増強し、国民経済の基礎を打ち固めることに資するものである。
①政府・銀行・信用保証機関の共同参加、リスクを共同で負担するメカニズム、持続可能な協力モデルを模索しなければならない
条件の整った地方が政府保証基金を設立して、銀行貸出で発生するリスクを保証し合理的に補償することを奨励しなければならない。
②国家融資保証基金を設立しなければならない
政府主導の省レベル再保証機関が3年内に基本的に100%カバーを実現することを推進し、融資保証機関と一緒に、融資保証業務のリスクを各レベルで分散しなければならない。
③省レベル、地区・市レベルを重点に、政府出資を主として、経営が規範化され、信用が比較的良好で、本業が小型・零細企業と「三農」に集中した政府融資保証機関を発展させなければならない
融資保証機関の合併再編を支援し、強く優れたものにする。
④財政支援を増やさなければならない
融資保証機関に対し営業税免除と準備金の所得控除等の政策を実施し、法に基づき担保登記を展開し、融資保証機関のために債権保護と返済請求協力を提供し、合法権益を擁護しなければならない。
⑤政府融資保証・再保証機関に対し、営利要求を減らし或いは取り消さなければならない
小型・零細企業と「三農」への貸出保証のリスク容認度を適切に引き上げ、保証業務の手数料基準引下げを推進する。融資保証機関の信用記録を健全化し、分類した監督管理方式と差別化した管理モデルを刷新し、規範化された融資保証の長期に有効なメカニズムを確立し、金融リスクを有効に防止する。融資保証が農業・企業のために力となり、起業・イノベーションを助ける役割を更に好く発揮させる。
3.7月28日会議及び5月内モンゴル視察における李克強総理の都市関連発言(中国政府網2015年7月29日)
一旦大雨が降ると、市民が揶揄するような「海のようになる」現象がいくらかの大都市で起こっている。現在中国は、都市化が急速に進展する時期にあるが、我々の地下共同溝建設は深刻に立ち遅れている。この方面の建設を加速することが必要である。
新しいタイプの都市化建設は表面を重視するだけでなく、中身も重視しなければならない。我々の多くの都市は、表面は立派だが、地下インフラが依然不十分である。表面は都市の風貌であり、中身は都市の良心である。中身を牢固にしてはじめて、表面は保たれるのであり、これが都市建設の百年の大計である。
過去、縦割り行政により、多くの都市でしばしば「一方で埋め、一方で再び掘り返し」ており、大量の浪費が生まれていた。しかし、地下共同溝建設は、各種の地下インフラを共同溝に全て引きこむことにより、「道路が工事で傷だらけ」「空中が電線のクモの巣状態」等の問題を徐々に解消できるようになるのである。
率直に言って、我々の大きな都市の容量は、財政に完全に依拠して大規模なインフラ建設を進めることはできず、総合的なビジネス運営方式を採用しなければならない。財政の乗数効果を発揮させ、必要な金融支援を提供するだけでなく、社会(民間)資本が建設と運営管理に参加することを奨励し、社会資本のために合理的な費用徴収メカニズムとこれに対応した運営管理メカニズムを確立しなければならない。
都市共同溝建設と運営管理においては、国家基準を制定・整備し、安全を絶対に確保しなければならない。
世界のその他国家の先進経験を多く吸収し、都市地下共同溝建設というイノベーションを、一部の都市でテストした後、徐々に普及させなければならない。これは、我々が新しいタイプの都市化建設を推進することにとって、歴史的な意義を有するものである。
(備考)
この記事を含め、7月末から8月上旬にかけて、李克強総理のこれまでの経済政策の功績を高く評価する記事が集中的に発表されている。例えば。第一財経日報7月30日「李克強の気配りから見た中国経済の新風の入り口[1]」、中国政府網8月4日「李克強のマクロ・コントロールの3部曲[2]」、中国政府網8月6日「李克強は大衆による起業・万人によるイノベーションを推進している国務院は22の関連文件の手配を行った」、中国政府網8月6日
「李克強はどのような経済指標を気にかけているか五重目標[3]の協調発展」中国政府網8月10日「李克強:経済のイノベーションは、まずエンジンを刷新しなければならない」等である。また、新華社・人民日報は、経済は悪くはなく、自信をもって既定路線を進めるよう、繰り返し強調している[4]。
おりしも、この時期は北戴河会議が開かれており、経済が減速するなかで、李克強総理がこれまで採用してきたマクロ経済政策が適切であったかどうかが問われていたものと思われる。これらの記事は、李克強総理への援護射撃的性格をもったものであろう。(ちなみに、昨年のこの時期は、人民日報を中心に習近平総書記が唱え始めていた「新常態」の大キャンペーンが展開された)
(8月15日記)
[1]改革と成長の融合、新たな対外開放、政府の執政の改革、民生改善を指す。
[2]「区間コントロール」(成長・物価・雇用・所得・環境保護といった多重目標の協調発展)、「方向を定めたコントロール」(より多く改革の方法に依拠し、より多く市場のパワーを運用し、「湧水による灌漑」「点滴灌漑」を的確に実施する(バラマキは行わない))、「タイミングを見計らったコントロール」(経済情勢の変化に対して、機を逸せず即断する)を指す。
[3]成長、物価、雇用、所得、環境保護を指す。
[4]たとえば、新華社8月2-4日評論員論文、人民日報8月3日評論員論文等。
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