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経済成長の維持(8)1-3月の経済政策基本方針、雇用対策など

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2009年1月25日

記事概要

本稿では、自動車・鉄鋼産業支援策、1-3月期の経済政策の基本方針、2009年の雇用政策の方針について紹介する。

はじめに

 本稿では、自動車・鉄鋼産業支援策、13月期の経済政策の基本方針、2009年の雇用政策の方針について紹介する。

 

1.国務院常務会議(114日)

 自動車産業と鉄鋼産業の調整振興計画が決定された。その概要は以下のとおりである(新華網北京電2009114日)。

 

 1.1 決定本文

(1)自動車産業の調整・振興の加速

 積極的な消費政策を実施し、自動車消費需要を安定化・拡大しなければならない。構造調整を主線とし、企業の連合再編を推進し、新エネルギー自動車を突破口とし、自主的なイノベーションを強化し、新たな競争優位性を形成しなければならない。

①自動車消費市場を育成しなければならない

 2009120日-1231日、1.6ℓ以下の排気量の乗用車は、車両購入税を5%に軽減する。200931日-1231日、国家は50億元を計上し、三輪自動車・低速トラックを廃車にして小型トラックに買い換えるか、排気量1.3ℓ以下のミニバンを新規に購入する農民に、一時払いの財政補助を行う。

 中古車廃車・更新補助金を増額するとともに、自動車購入を規制する不合理な規定を整理・取り消す。

②自動車産業の再編を推進しなければならない

 大型自動車企業グループが合併再編を進めることを支援し、自動車部品の骨幹企業が合併再編を通じて規模を拡大することを支援する。

③企業の自主的なイノベーション・技術改造を支援しなければならない

 今後3年、中央は100億元の特定資金を計上し、企業の技術革新・技術改造・新エネルギー自動車及びその部品の発展を重点的に支援する。

④新エネルギー戦略を実施しなければならない

 電気自動車及びその重要部品の国産化を推進する。中央財政は、補助金を計上し、省エネ・新エネルギー自動車の大中都市におけるデモンストレーションの展開を支援する。

⑤自動車生産企業が自主ブランドを発展させ、自動車及びその部品の輸出基地建設を加速し、現代的な自動車サービス業を発展させ、自動車ローンを整備することを支援しなければならない。

(2)鉄鋼産業の調整・振興の加速

 総量のコントロール、落伍したものの淘汰、連合再編、技術改造、立地の最適化を重点とし、鉄鋼産業を「大」から「強」へ転換しなければならない。

①内外の市場を統一的に企画しなければならない

 内需拡大措置を実施し、国内鋼材消費を牽引する。適度に柔軟な輸出租税政策を実施し、国際市場のシェアを安定させる。

②鉄鋼総量を厳格にコントロールしなければならない

落伍した生産能力を淘汰しなければならず、単純に生産能力を拡大する鉄鋼プロジェクトを再び立ち上げてはならない。

③大グループの牽引作用を発揮させなければならない

 企業の連合再編を推進し、国際競争力を備えた大型・特大鉄鋼グループを育成し、産業立地を最適化し、集中度を高める。

④技術改造・研究開発・技術導入を強化しなければならない

 中央予算の基本建設投資の中に特定資金を区分し、鉄鋼産業の技術進歩を推進し、品種を構造調整し、鋼材の質を引き上げる。

⑤鉄鉱石の輸入市場の秩序を整頓しなければならない

 鋼材販売制度を規範化し、生産・販売のリスクを共に分担するメカニズムを確立する。

 

 1.2 関連記事

(1)新華網北京電2009115

①中国自動車工業協会の統計によれば、2008年に国内販売された500万台の乗用車のうち、外国ブランド(主として合資製品)は74%を占め、自主的なブランドは26%に満たない。

②過去10年、科学技術部は、累計で20億元近い資金を新エネルギー自動車の誘導・支援に投入している。

③新エネルギー自動車の研究開発費用は大きく、コストがかなり高い。販売価格は、伝統的なエネルギーの自動車に比べ、少なくとも20%以上高い。

(2)新華網北京電2009118

 中国自動車技術研究センターの黄永和首席専門家によれば、中国は現在千人当り38台しか自動車を保有しておらず、世界平均の139台に及んでいない。2008年末、中国の個人所有の乗用車はおよそ1800万台であるが、国内に車の購買力を有する家庭は1億世帯を超える。

(3)新華網北京電2009116

①現在、中国は大小鉄鋼企業が1200社前後あり、そのうち大中型鉄鋼企業は約70社である。鉄鋼企業の数が多すぎ、産業集中度が低すぎ、大小の鉄鋼企業が一団となって混戦状態になっている。

②中国のトップ鉄鋼企業の国内に対する影響力を高める必要がある。統計によれば、2007年の韓国浦項製鉄会社の粗鋼生産量は国内の60.61%を占め、ドイツ・日本・米国・ロシアのトップ鉄鋼企業の粗鋼生産量の国内シェアは20%を超えているのに対し、中国のトップである宝鋼は5.84%しか占めていない。

③中国の「鉄鋼産業発展政策」計画によれば、2010年にわが国のトップ10社の鉄鋼生産企業の生産量シェアを全国の50%以上とすることになっているが、現在40%にも満たない。

④中国の粗鋼生産量の国際シェアは、2001年の17.7%から2007年には36.4%に拡大し、世界粗鋼生産の3分の1以上のシェアを占めている。

⑤中国鉄鋼工業協会の統計によれば、200819月期の大中型鉄鋼企業の製鉄コストは、前年同期比で63.55%上昇した。9月には、大中型鉄鋼企業のうち23社(32.4%)が赤字となり、10月には赤字企業が60%前後に拡大した。

⑥各品目が鋼材市場に占めるシェアは、基本建設(20%前後)、不動産(2030%)、機械(30%)、家電(10%前後)、自動車(10%前後)、造船(10%前後)である。

⑦工業・情報化部と国家発展・改革委員会の責任者によれば、2009年に政府は150億元の補助金を用いて、技術改造を支援する。

⑧北京蘭格鉄鋼情報研究センターの丁根副主任によれば、4兆元の経済対策のうち23兆元は公道・港湾、鉄道、災害復興、低家賃住宅建設の4分野に落ちる。このほか、国家の10大内需拡大政策のうち4つは鉄鋼業と密接な関係があり、鉄鋼業に1.5億トン前後の需要増をもたらし、うち5000万トンの鋼材需要は200916月期に顕在化する。

 

2.国務院全体会議(119日)

 3月の全人代にかける「政府活動報告(意見徴求稿)」が審議され、今後各省・自治区・直轄市及び中央関係部門・単位から意見を求めることとなった。

 温家宝総理は、「過去の1年は、極めて尋常・平凡ならざる1年であった」としつつ、「今年は、わが国が新世紀に入ってから経済発展が最も困難となる1年である」とし、次のような指示を行った(新華網北京電2009119日)。

(1)13月期の経済政策をしっかり行い、経済成長速度の下降傾向を早急に反転させなければならない

①最近打ち出した内需拡大・成長促進の計画一覧を早急に実施し、重点産業の調整・振興計画を早急に制定・実施する

 できるだけ早く政策計画・科学技術支援計画を整備し、プロジェクト計画を認可し、財政資金を手配し、銀行に貸出をさせ、各措置を実施する。

②冬・春の農業生産をしっかり行う

 各種の農業強化・農村優遇政策を早急に実施し、とりわけ食糧への直接補助・良質な品種への補助・農業生産財への総合補助・農機具購入への補助政策ができるだけ早く農家に行き届くようにする。

③工業の平穏で比較的速い発展を促進する

 企業が製品構造を調整し、内部管理を強化し、経営コストを引き下げ、市場を積極的に開拓し、就業を安定させるよう誘導する。赤字企業は早急に増益に転換しなければならない。産業を調整・振興する各種計画を実施する。中小企業の発展支援に力を入れる。

④春節の商品供給・サービスをしっかり行い、都市・農村の個人消費を拡大する

 家電・自動車の農村普及、農機具補助等の政策を真剣に実施する。

⑤対外貿易の安定成長の維持に努める

 製品の質で勝利を勝ち取り、市場を多元化する戦略を引き続き実施し、新興市場を積極的に開拓し、輸出製品の質の向上に努めなければならない。

⑥金融の安定・安全を維持する

 国際金融危機の変化に適切に対応し、外からの衝撃を厳密に防ぐとともに、内部リスクの防止・除去を強化し、常にわが国の銀行業の穏健な運営を維持しなければならない。

(2)人民大衆の切実な利益に関わるホットイシュー・難題の解決に努めなければならな

 い

①就業活動を高度に重視する

 今年の就業情勢は十分峻厳であり、各地域・各部門は高等教育機関卒業生の就業活動7項目措置と出稼ぎ農民対策6項目措置を全て実施しなければならない。

②生産・生活の困難な大衆に関心をよせる

 各レベルの指導者は、常に災害地域・貧困地域・困難な企業に深く入り込み、大衆が直面している各種の現実問題を真剣に解決し、彼らの食事・衣服・安全な越冬を確保しなければならない。中央が確定した被災地域支援政策を真剣に実施し、対口支援を積極的にしっかり行う。

③安全な生産と社会の安定をしっかり行う

 安全生産に潜む弊害排除を全面的に展開し、人が集まる公共の場所の安全を強化し、重点業種・重点企業の安全管理をしっかり行う。社会の治安総合対策を強化し、各種の社会矛盾を積極的に除去する。各地方は豊富多彩で健康増進に資する大衆文化活動を入念に組織し、科学技術・文化・衛生の農村普及活動を深く展開し、全国人民が楽しく、穏やかで、平安な春節を過ごすことを確保する。

 

3.人力・社会保障部 尹成基スポークスマン記者会見(120日)

(1)2008年の就業政策状況

①就職・再就職目標ノルマは全面的に達成された

 都市の就業増は1113万人(目標ノルマ1000万人)であった。一時帰休・失業者の再就職は500万人(目標ノルマ500万人)であった。就業困難者の就業実現は143万人(目標ノルマ100万人)であった。200812月末の全国都市登録失業者は886万人であり、9月末より56万人増加した。全国都市登録失業率は4.2%であり、9月末より0.2ポイント上昇した。

②国際金融危機が就業に及ぼす影響に積極的かつ力強く対応した

 就業情勢の安定化政策措置をタイムリーに打ち出し、高等教育機関卒業生の就業促進8項目政策措置を国務院弁公庁名義で正式に通達した。10省市において就業関連データのスピード調査制度を確立し、就業関連データをタイムリーに把握した。

③地震被災地域への対口支援を有効に実施した

 2008年末までに、被災地域105.6万人が現地での就業を実現し、うち公益的なポストへの就業が18万人となった。組織的に労務を25.7万人移出し、うち省外への移出は15.2万人であった。

(2)2009年の就業政策

①各種就業政策を整備し、しっかりと実施する

 「政策の享受範囲を拡大し、資金助成の基準を引き上げ、政策の享受時間を延長する」という考え方を堅持する。土地の事情に合わせながら、積極的な就業政策を適切に整備・実施し、更に多くの労働者が政策支援を通じて就業を実現するよう手助けし、1年を通じて「95146」の就職・再就職政策目標の実現を確保する。「95146」とは、都市の就業増900万人、一時帰休・失業者の再就職500万人、うち就業困難者の就業100万人、都市登録失業率4.6%ということである。

②重点集団の就業政策を際立ててしっかり行う

 技能訓練の強化・就業サービスの改善・就業援助の実施等を通じて、高等教育機関卒業生・都市就業困難者・出稼ぎ農民の就業政策を重点的にしっかり行う。地震被災地域の労働者・婦女・障害者・復員軍人等の集団の就業政策を統一的に企画し、しっかり行う。

③就業ポストの開発に努める

 有力な措置を採用して企業の負担を軽減し、企業の現有ポストの安定に努める。内需拡大と就業拡大を緊密に組み合わせ、就業の門戸を広く開ける。国務院の創業による就業牽引促進指導意見を適切に実施し、創業による就業促進の積極的効果を発揮させる。

④公共就業サービス特定活動を真剣に展開する

 「高等教育機関卒業生の就業サービス系列活動」、「就業援助系列活動」、「春風行動系列活動」等の公共就業サービス特定活動を入念に組織し、高等教育機関卒業生・都市就業困難者・出稼ぎ農民等の集団に対して、タイムリーで有効な就業サービスを提供する。

2009年1月記 4,811字)

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