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2010年下半期の経済政策(1)

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2010年7月29日

記事概要

本稿では、全人代財経委員会全体会議、銀行業監督管理委員会経済金融情勢テレビ電話会議、国家発展・改革委員会高官の経済情勢分析、党外人士座談会における胡錦涛総書記重要講話、及び党中央政治局会議の議論等の内容を紹介する。【11,989字】

はじめに
 本稿では、全人代財経委員会全体会議、銀行業監督管理委員会経済金融情勢テレビ電話会議、国家発展・改革委員会高官の経済情勢分析、党外人士座談会における胡錦涛総書記重要講話、及び党中央政治局会議の議論等の内容を紹介する。

1.全人代財経委員会全体会議(7月15-16日)

 国務院関係部門から上半期の経済運営状況の報告を聴取し、分析・討論を行った。全人代のその他専門委員会の責任者も会議に列席し、華建敏副委員長が出席し講話を行った。議論の概要は以下のとおりである(新華網北京電2010年7月16日)。

(1)現在、わが国経済は引き続きマクロ・コントロールの予期する方向に向けて発展しており、運営の総体としての態勢は良好である。
 投資・消費は比較的速く伸びており、内需は引き続き経済成長の主要な牽引力となっており、対外貿易は急速に回復している。
 夏季穀物は再び豊作となっており、工業生産の反転上昇の勢いは強く、企業収益は大幅に上昇している。
 財政収入の伸びは比較的速く、金融運営は総体として平穏である。
 物価総水準は基本的に安定しており、就業・個人所得は引き続き増加し、人民の生活は持続的に改善している。
 実践は、中央の情勢判断及びマクロ・コントロールの政策決定が正確であり、各地域・各部門が中央の政策決定・手配を力強く貫徹・実施し、明らかな成果を得ていることを証明している。

(2)現在、内外環境は依然複雑・峻厳であり、経済運営において不確定・不安定要因がかなり多い。
 世界経済の回復の基礎は比較的脆弱であり、国際金融はなお不安定である。国内では自然災害が頻発しており、農業生産と被災地域の大衆の生産生活にかなり大きな影響を与えている。エネルギー多消費・高汚染の業種の成長はかなり速く、省エネ・汚染物質排出削減の情勢は十分峻厳である。インフレ期待の管理の任務は煩雑で骨が折れ、地方政府の債務がかなり多く増加しており、財政金融分野のリスクが増大している。

(3)下半期の経済政策をしっかり行い、経済運営における際立った問題に対する研究・分析を更に強化し、マクロ・コントロールの連続性・安定性を維持しなければならない。
 既に打ち出された各種政策措置を適切にしっかり実施し、経済の平穏で比較的速い発展の維持・経済構造の調整・インフレ期待の管理の関係をうまく処理しなければならない。
今年は、第11次5ヵ年計画の目標の最後の詰めの年であり、第12次5ヵ年計画の実施のための良好な基礎を打ち固めるカギとなる1年でもある。経済の回復の良好な勢いを強固とすると同時に、科学的発展観を断固として貫徹実施し、(「速い」よりも)「良好」という字を優先させることを堅持し、経済構造の調整に力を入れ、発展方式を転換し、経済運営において長期に存在する体制上・メカニズム上の問題の解決に力を入れ、経済の長期にわたる健全で持続可能な発展のために堅実な基礎を打ち固めなければならない。

(4)今年に入り、異常気象がかなり多く、自然災害が頻発し、とりわけ秋季の穀物の作付けがあまねく遅延しており、秋季の穀物の収穫への影響がかなり大きい。
 田畑の管理と災害の防止・対策を適切に強化し、秋季穀物の良好な収穫を勝ち取り、今年・来年2年間の食糧供給を保障しなければならない。

(5)経済発展方式の転換には所得分配改革を深化させることが必要であり、国民所得分配構造の調整案を早急に制定し、打ち出さなければならない。
 農民と都市低所得層の所得水準を引き上げ、経済成長に対する消費の牽引作用を更に発揮させなければならない。
 現在、財政収入の伸びが比較的速いので、予算に基づき各種支出をしっかり手配し、とりわけ民生投入を保障しなければならない。同時に、管理を強化し、行政管理コストを引き下げ、資金の使用効率を高めなければならない。地方の債務問題の防止を高度に重視し、各種投融資プラットホームの整理・規範化を適切にしっかり行わなければならない。

(6)マネー・貸出の適度な伸びを実現するには、経済発展の合理的な資金需要を満足させるだけでなく、物価上昇にマネー面での条件を提供することを防止し、インフレ期待を適切にしっかり管理しなければならない。
 貸出構造を更に最適化し、引き続き「三農」・小企業・民営経済への金融支援を強化し、実体経済の発展に対する金融支援を強化する。引き続き、不動産市場へのコントロールをしっかり行い、一部地域の住宅価格の速すぎる上昇に断固として歯止めをかけ、社会保障的性格をもつ住宅の供給を適切にしっかり行い、広範な人民大衆とりわけ中低所得層の基本的な住宅需要を満足させる。

(7)第11次5ヵ年計画の省エネ・主要汚染物質排出削減目標を達成し、エネルギー多消費・高汚染業種の速すぎる成長に歯止めをかけることに力を入れなければならない。
 省エネ・環境保護の法規及び関連する参入基準を厳格に実施し、更に有力な価格・財政・税制手段を制定・実施して、落伍した生産能力を断固として淘汰し、省エネ・主要汚染物質排出削減目標の達成を確保しなければならない。
 戦略的新興産業を積極的に育成・発展させ、サービス業とりわけ現代サービス業を大いに発展させ、サービス業の発展水準及び国民経済に占める比重を引き上げる。中小企業とりわけ小企業への支援を強化し、各種行政上の許認可手続を整理・簡略化し、手数料をみだりに徴収する行為を処置し、企業負担を適切に軽減する。

(8)改革を深化させることを堅持し、科学的発展を制約する深層の矛盾・問題をできるだけ速やかに解消し、科学的発展に資するよう体制メカニズムを健全化しなければならない。
 改革の深化を通じて、幹部の考課メカニズムを整備し、経済成長の速度を片面的に追及する傾向を正し、各レベルの政府が発展方式の転換・構造調整・民生活動をしっかり行うことを更に重視するようにしなければならない。市場メカニズムを更に整備し、資源配分における市場の基礎的な作用を更に十分発揮させる。独占業種の改革を深化させ、市場参入を緩和し、民間投資を積極的に奨励・誘導・拡大し、積極的措置を採用して民間投資の活力を奮い立たせる。

2.銀行業監督管理委員会経済金融情勢テレビ電話会議(7月20日)

 劉明康主席は、「中国経済は総体として、引き続きマクロ・コントロールの予期した方向へ向かっているが、経済構造調整及び発展方式の転換はなお試練に直面している。現在、マクロ経済金融環境はなお複雑で変化に富み、銀行業の持続的・健全な発展は、多くの方面の試練に直面している。とりわけ、政府の融資プラットホーム、不動産、過剰生産能力等の分野のリスクは注意に値する」とし、次の4点を要求した。

(1)融資プラットホーム
 「地方政府融資プラットホーム会社の管理強化に関する問題の国務院通知」を真剣に貫徹実施し、地方政府の融資プラットホームへの貸出管理を更に強化し、地方政府融資プラットホームの代償リスクを防止し、引き続き「中身を明らかにし、1つずつチェックし、再評価を行い、全体を改善し保全する」という整理要求に基づき、既定のタイムスケジュールに従って、貸出を厳格・正確に分類し、引当を十分に行い、不良債権の償却を行い、整理後の残った貸出については分類処置を進め、新規プロジェクトへの貸出を厳格に抑制し、貸出リスクの管理を強化しなければならない。

(2)不動産
 「一部都市の住宅価格の速すぎる上昇に断固として歯止めをかけることに関する国務院通知」を引き続き貫徹実施し、「商業銀行の個人住宅ローンのうち2番目の住宅の認定基準に関する通知」の要求を厳格に執行し、コントロールの程度を堅持し緩めず、政策実施の安定性・持続性を確保しなければならない。不動産開発融資のリスク管理を更に強化し、不動産及び関連業種の融資圧力の測定検査を引き続き深く展開する。

(3)3業種
 業種貸出のリスクを高度に重視しなければならない。「エネルギー多消費・高汚染」、生産能力過剰、生産能力落伍等の3種類の業種への与信を厳格に抑制する。貸出リスクの分類を厳格に進め、相応の十分な引当を行い、償却・処置を強化し、差別的な金利・特別引当等の手段を運用して、「3種類」の業種への貸出衝動を有効に抑制する。国家の政策に違背し、調査の職責を十分に果たさず、ルールへの適合・リスク・信用審査等の管理要求に違反したことにより、貸出損失を発生させた場合には、関係者の責任を厳格に追及しなければならない。

(4)コーポレートガバナンス
 銀行のリスク対応を根本からしっかり管理しなければならない。コーポレートガバナンスを更に整備し、根本・川上からしっかり把握し、健全な内部規制メカニズムを確立し、リスク対応・防止の長期的に有効なメカニズムを早急に確立しなければならない。各種形式で預金をひっぱってくる行為を厳格に禁止し、各種の預金仲介を取り締まらなければならない。科学的な考課・奨励メカニズムとリスクコントロールに関する賞罰制度を確立し、リスク防御の強化・慎重かつ周到な経営の基礎の上に経営効率を高める。案件の端緒に対する敏感性を維持し、内部審査・責任追及・処罰の程度を適切に強化し、重大リスク事件・案件の上層部への通報、専門調査機関への移管制度を厳格に執行する。

 劉主席は次のように強調した。「各銀行は、当面の情勢の複雑性をはっきり認識し、リスク管理の主動性と先見性を適切に高め、経済発展方式の転換を大いに支援すると同時に、預貸比率・自己資本比率によるリスク管理を堅持し、流動性・安全性・営利性という経営管理の優先秩序を堅持し、体制・メカニズム・業務の変革を積極的に推進し、従業員の素質・能力を高め、安全で安定し、リスクをコントロールでき、持続的な発展が可能な銀行システムの構築に努力しなければならない」。

3.国家発展・改革委員会高官の分析

 人民日報海外版2010年7月22日は、国家発展改革委員会マクロ経済研究院の王一鳴副院長のインタビューを掲載している。その概要は以下のとおり。

(1)上半期のマクロ経済運営の感想
 公布された数値から見ると、上半期のマクロ経済は平穏で比較的速い成長という基本態勢を維持した。経済成長の動力構造という点からすると、内需と外需が更に協調に向かっている。上半期の経済成長は主として内需が牽引したものである。世界経済が緩慢・温和に回復するにつれて、わが国の輸出情勢も好転し始めており、このようにして内需・外需が総体として更に協調に向かっている。

(2)4-6月期の経済成長率の反落について
 まず、相当程度は(昨年の)ベースが原因である。もしこのベース要因を除去したなら、今年4-6月期と1-3月期の成長率は同じ程度となる。
 第2に、今年1-3月期は11.9%であり、上半期は11.1%であった。もし、年間を通じてこのように高い速度が維持されたなら、潜在成長率を超えてしまい、経済の総需要の圧力が過大になってしまう。したがって、マクロ・コントロールは方向性としても、成長速度を適度に減速させているのである。我々が上半期に打ち出した市場流動性の管理、地方融資プラットホームの整理、過剰生産能力・エネルギー多消費産業の圧縮等も、速すぎる伸びを比較的合理的な区間に一定程度向かわせることになった。

(3)成長率の反落は経済の二番底をもたらすのか?
 過去30年の趨勢からすると、わが国の年平均成長率は9.9%であり、このため潜在成長率は一般に9%から10%の間と認識されている。しかも、中国の経済ベースが増加するにつれて、潜在成長率はある程度反落する可能性がある。上半期の11.1%の水準は、なお潜在成長率の上にあると言うべきで、適度な反落は心配不用である。底に向かうとは何を意味するか?もし昨年1-3月期の6.5%を「底に向かう」と言うのならば、今年は明らかにこのような速度に反落することはなく、したがって「二番底に向かう」可能性はない。経済の合理的な反落は、構造調整に資するものである、バランスのとれた持続可能な成長に資するものである。この意義からして好ましい事と言ってよく、過度に心配する必要はない。

(4)株式市場への影響
 内部から見ると、市場の流動性管理の強化、不動産のコントロール、地方融資プラットホームの整理、エネルギー多消費業種の圧縮等は、市場のファンダメンタルズの予想に一定の影響を与えた可能性がある。上海証券取引所の指数は年初の3277ポイントから2319ポイントに下落したが、これは多くの市場関係者の予想を超えていた可能性がある。さらに、メディアの下半期経済が下降するというこれまでの各種予測が加わったことにより、人々のこのような市場の予測への影響が更に強まった可能性がある。このため私は、下半期には株式市場に影響を与える積極的要因が徐々に顕在化すると考えている。そうなれば、株式市場の段階的な好転にとって、一定の積極的な作用をもたらす可能性がある。

 このほか、下半期には経済発展を促す措置があり、これも資本市場の発展推進に一定の積極的作用をもたらすことになろう。例えば、産業面からすると、現在国家は戦略的新興産業計画を制定中である。これは、新エネルギー、バイオ医薬、新世代情報ネットワーク、新素材といったものであるが、これら新興産業はいずれも投資価値があり、成長性が強い。
 さらに、「国家による西部開発戦略の新たな10年」の戦略が実施されるにつれ、西部地域においても多くの大型投資プロジェクトが始動することになる。一部の分野は投資戦略の対象となろうし、これも一定程度ファンダメンタルズの予想の回復にとって積極的な作用をもたらす。

(5)不動産対策
 不動産については、このような短期政策によるコントロールが必要なだけでなく、もっと重要なことは将来の不動産市場の構造であり、制度的枠組みが必要である。わが国は、1998年の住宅制度改革以降、不動産の市場化競争が非常に速かった。しかし、このプロセスにおいて、社会保障的性格をもつ住宅というものが欠けていた可能性がある。過去、わが国はこの点が不足していたのであり、将来の制度的枠組みにおいては、いくつかの面をしっかり行う必要がある。

①中国の住宅制度は中国の国情に合わせなければならず、米国モデルは参考にできない。
②市場化の方向は堅持しなければならない。
 現在、住宅価格が高すぎるからといって、後戻りはできない。
③社会保障的性格をもつ住宅の体系を再構築しなければならない。
 今年、総理も政府活動報告において、「社規保障的性格をもつ住宅、とりわけ低家賃住宅及び公的賃貸住宅を主体として、低所得者が『住む家がある』ようにする」と提起している。
④不動産市場もマクロ・コントロールが必要であり、完全に市場任せで調整してはならない。

 今回の調整は、主として過度な投資的・投機的需要に対するものである。これを敷衍するならば、なぜ投資・投機需要は不動産の分野に集中するのであろうか?これは、わが国の資本市場のイノベーションに対し、更に多くの産業投資ファンドを発展させ、投資家に投資ルートを与えることができるかどうか、という要求をつきつけるものである。これには、国際市場への進出、QDIの更なる拡大その他のルートが含まれる。このため、現在我々は投資家のための更に多くの投資ルートを創造しなければならない。

(6)下半期の経済動向
 今年上半期は、経済は総体として平穏な成長を維持し、大幅な下降は出現しなかった。これは、下半期の経済成長にとって良好な基礎を創造した。しかし、現在の経済情勢は複雑であり、現在経済に明白な下降が出現していないことは、決してわが国の経済運営が既に安定成長ルートに入ったことを示すものではないし、決してわが国経済の運営が根本的に好転したことを示すものでもない。このため、我々は経済情勢の複雑性を十分認識しなければならない。
 下半期の趨勢からすれば、有利な条件はなお多い。

①世界経済の回復の態勢はますます明らかになってきている。
 特に、最近IMFはマネーの伸びの予測を4.2%から4.6%に調整した。このように回復の趨勢が明らかになってきている。
②国内を見ると、我々の政策の基本的方向は不変であり、マクロ政策の総体としての緩和を維持することができる。
 この点は明確である。
③重要なことは、政府が積極的かつ有効なコントロールを行うと同時に、市場の駆動力も増しており、経済成長の動力構造に積極的な変化が発生しているということである。
 民営投資の成長率は国有投資の成長率を超えており、民営資本が活発化している。市場のパワーは、その作用を発揮し始めており、これらも下半期の経済成長の持続的好転にとって積極的な要因となる。
 当然、多くの複雑な要因もある。

①下半期の経済は、以前(昨年の)ベースが高いという問題に直面している。
 我々はいったい短期的速度を必要とするのか、それとも長期的速度を必要とするのか、これは1つの選択である。
②下半期は、なお一定のインフレ圧力に直面するため、引き続きインフレ期待の管理を堅持する必要がある。
③昨年の4兆元投資の経済への貢献度が大きかったため、今年生産能力過剰問題が際立つにつれて、投資の伸びや工業は下半期一定程度反落する。この反落は経済に影響を及ぼす可能性がある。
④企業からすると、賃金コストの上昇、為替レート形成メカニズムの調整、原料価格の一定の高止まりは、いずれも企業の生産コストに一定の影響を与えるので、これらの要素を下半期に考慮する必要がある。

 ただし、総体として見ると、私個人は今年1年の経済成長に非常に自信を持っている。最も保守的な推計では、中国の経済成長は年間9%以上は問題ないといえる。私は9.5%から10%の間と考えている。もし予想できない大きな事件が発生しないならば、この点につき私個人はなお自信をもっている。

4.党外人士座談会における胡錦涛重要講話(7月20日)

 胡錦涛総書記主催により、民主諸党派、全国工商連、無党派人士から下半期の経済政策について意見を聴取した。その際、胡錦涛総書記は次のような重要講話を行っている(新華網北京電2010年7月22日)。
 「今年に入り、我々は引き続き国際金融危機の衝撃に対応する包括的計画を実施し、マクロ・コントロールを強化・改善し、経済発展方式の転換と経済構造調整を積極的に推進し、国民経済は引き続きマクロ・コントロールの予期した方向へと発展している。
 成績を十分肯定すると同時に、我々は憂患意識・リスク意識を増強し、現在わが国経済の運営が直面している困難・試練をはっきり認識し、信念を確固とし、各方面を併せ配慮して統一的に企画し、中央の政策決定・手配を適切に実施し、政策の誘導と施策の程度を強化し、わが国経済の平穏で比較的速い発展を断固として維持しなければならない。
 下半期の経済政策をしっかり行うことは、第11次5ヵ年計画が確定した目標・任務を全面的に達成することにとって、十分重要な意義がある。我々は、内外経済情勢の新たな変化・新たな特徴を正確に把握し、マクロ経済政策の連続性・安定性を維持し、政策コントロールの的確性・柔軟性を高め、経済の平穏で比較的速い発展を維持しなければならない。

①積極的財政政策と適度に緩和した金融政策を引き続き実施し、同時に経済のモニター・
 予測・アラームを強化し、マクロ経済政策の協調的な組合せを強化し、政策コントロールの程度・テンポを注意してしっかり把握し、深層の矛盾・問題の解決を推進しなければならない。
②農業発展政策を引き続きしっかり行い、夏季の作付け・管理と秋季の穀物生産をしっかり行い、年間で農業の再び良好な収穫を勝ち取り、洪水・旱魃対策と防災・減災活動をしっかり行わなければならない。
③内需拡大の長期に有効なメカニズムを引き続き構築し、経済成長に対する消費需要の牽引作用の増強に力を入れ、消費拡大政策を実施・整備し、政府投資の質・効率を高め、国家の奨励する産業及び脆弱部分に民間資本を更に誘導しなければならない。
④経済構造調整に対する支援・誘導を引き続き強化し、戦略的新興産業の育成・発展を加速し、自主的なイノベーションの成果の産業化を推進し、サービス業の発展水準を全面的に引き上げ、チベット・新疆その他民族地域の早急な発展を推進しなければならない。
⑤省エネ・汚染物質排出削減を引き続き推進し、省エネ・主要汚染物質削減目標の達成を動揺させず、緩めないことを堅持し、目標責任制を全面的に実施し、落伍した生産能力を断固として淘汰しなければならない。
⑥改革開放を深化させ、財政・税制、金融、価格、不動産、社会保障等の方面の改革推進を加速し、対外貿易の発展方式を数量・規模型から質・効率型に転換することを推進し、「海外進出」戦略の実施を強化し、新たな開放の分野・空間を開拓しなければならない。
⑦引き続き民生を適切に保障・改善し、社会建設を強化し、教育・労働就業・社会保障・医薬衛生・住宅等の方面での人民大衆の基本的需要を満足させることに努め、災害復興政策をしっかり実施し、安全生産活動を強化し、社会の調和・安定を維持しなければならない。

 以上の各政策をしっかり実施すると同時に、現在に立脚し、長期に着眼して、今後一時期の内外経済社会の発展動向を正確に把握し、第12次5ヵ年計画の編制をしっかり行なわなければならない」。
 なお、温家宝総理もこの会議に次のような報告を行っている。

 「下半期の経済政策をしっかり行うには、
①マクロ・コントロールをしっかり行うことを堅持し、政策の安定を主たる基調とし、経済の平穏で比較的速い発展の維持・経済構造の調整・インフレ期待の管理の関係をうまく処理することをマクロ・コントロールの核心とし、政策実施の程度・テンポ・重点を始終しっかり把握しなければならない。長期に存在する体制上・構造上の問題を解決するにせよ、経済運営における際立って緊迫した問題を解決するにせよ、いずれも経済が平穏で比較的速く発展しているという前提の下で進めなければならない。
②内需とりわけ消費需要の拡大を堅持し、消費拡大の政策措置を実施・整備し、消費の持続可能な発展の体制メカニズムを早急に確立し、政府投資の質・効率を高め、民間投資の健全な発展を奨励・誘導しなければならない。
③短期と長期を結びつけることを堅持し、末梢的な問題とその源となる問題を共に解決し、経済運営における際立った問題の解決に力を入れ、来年さらには長期の経済の比較的速い発展のための基礎を打ち立てなければならない。
④経済体制改革を深化させることを堅持し、経済発展の内在的動力・活力を奮い立たせ、経済発展方式の転換と経済構造調整を促進し、経済ができるだけ速やかに内生的成長・イノベーションによる駆動の軌道に乗るよう推進しなければならない」。

5.党中央政治局会議(7月22日)

 胡錦涛総書記が主催し、10月に党17期5中全会を開催し、第12次5ヵ年計画に関する建議を検討することが決定された。また、当面の経済情勢・経済政策が検討された(新華網北京電2010年7月22日)。

(1)第12次5ヵ年計画について
 第12次5ヵ年計画期間は、小康社会を全面的に建設するカギとなる時期であり、改革開放・経済発展方式の転換加速の堅塁攻略の時期である。内外情勢の新たな変化・新たな特徴を深刻に認識し、かつ全面的に把握し、第12次5ヵ年計画に関する建議を検討・提起することは、①第12次5ヵ年計画を科学的に編制することにとって、②引き続きわが国の発展の重要な戦略的チャンスの時期をしっかり掴み、うまく利用して経済の平穏で比較的速い発展を維持することにとって、③小康社会の全面的建設の新たな勝利を勝ち取り、中国の特色ある社会主義事業の新局面を切り開くことにとって、十分重要な意義のあることである。

 第12次5ヵ年計画の制定に際しては、中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、鄧小平理論と「3つの代表」重要思想を指導とし、科学的発展観を深く貫徹実施しなければならない。内外情勢の新たな変化に適応し、各民族・人民の更に良い生活を送るという新たな期待に順応し、科学的発展を堅持し、経済発展方式の転換を加速し、改革開放を不断に深化させ、民生を適切に保障・改善しなければならない。国際金融危機の衝撃に対応した成果を強固にし、拡大することにより、経済の長期に平穏で比較的速い発展を促進し、小康社会の全面的建設にとって決定的意義をもつ基礎を打ち立てなければならない。

(2)当面の経済情勢
 今年に入り、複雑で変化に富む内外経済環境に対し、内外からの各種重大な試練に対し、党中央・国務院の正確な指導の下、各地域・各部門は科学的発展観を深く貫徹実施し、国際金融危機の衝撃に対応する包括的計画の実施を堅持し、マクロ・コントロールを的確に強化・改善し、経済発展方式の転換と構造調整を積極的に推進し、国民経済は引き続きマクロ・コントロールの予期する方向へと発展している。

 経済は平穏で比較的速く成長し、夏季穀物は再び良好な収穫で、投資・消費の伸びは協調しており、物価総水準は基本的に安定しており、省エネ・汚染物質排出削減と構造調整は積極的な成果をおさめ、改革開放は積極的に推進され、就業は持続的に増加し、人民の生活は更に改善され、経済社会の発展態勢は総体として良好である。

 成績を十分肯定すると同時に、当面わが国経済の発展はまさに回復好転から安定成長への転換のカギとなる時期にあり、経済発展が直面している内外環境は依然として錯綜し複雑で、経済の平穏な運営を制約する矛盾・問題はなお少なくないことを見て取らねばならない。我々は冷静に観察し、科学的に判断し、転ばぬ先の杖により、沈着に対応し、経済政策の主動権をしっかりと把握し、経済社会の発展の良好な情勢を強固にしなければならない。

(3)下半期の経済政策の基本方針
 下半期の経済政策をしっかり行うことは、国際金融危機の衝撃に対応して勝ち取った成果を強固にし、経済の平穏で比較的速い発展を維持し、第11次5ヵ年計画の目標任務を全面的に達成し、第12次5ヵ年計画期間の発展のために良好な基礎を打ち立てることにとって、いずれも重要な意義を有するものである。

 経済の平穏で比較的速い発展の維持・経済構造の調整・インフレ期待の管理をうまく処理することをマクロ・コントロールの核心とし、積極的財政政策と適度に緩和した金融政策を引き続き実施し、マクロ経済政策の連続性・安定性を維持し、マクロ・コントロールの的確性・柔軟性を高めなければならない。経済の平穏で比較的速い発展の促進に努力し、経済発展方式の転換に力を入れ、経済構造の調整に力を入れ、自主的なイノベーションの推進に力を入れ、省エネ・汚染物質排出削減に力を入れ、改革開放の深化に力を入れ、民生改善の保障に力を入れなければならない。経済の回復好転の勢いを増強し、経済成長の質・効率を高め、今年の経済社会発展の各種任務の全面的達成を確保しなければならない。

(4)具体的政策
 各地域・各部門は、思想・行動を中央の情勢分析・判断及び政策の総体的手配に統一し、信念を強固にし、イノベーションを開拓し、しっかりと実施し、ぜひとも実効をあげなければならない。

①あらゆる手を尽くして、農業の安定的発展を促進しなければならない。
 秋季穀物の生産を適切にしっかり行い、防災・減災活動をしっかり行い、農業の総合生産能力の建設を推進し、水利建設を強化しなければならない。
②内需の持続的で安定した成長を推進しなければならない。
 都市・農村住民の収入を引き続き増やし、消費拡大政策を実施・整備し、投資の合理的な伸びを維持し、投資の質・効率を高め、民間投資の活力を奮い立たせなければならない。
③物価総水準の基本的安定を維持しなければならない。
 貸出の程度・テンポ・重点をしっかり把握し、重要農産品市場の供給と物価の基本的安定を保障し、市場の監督管理を強化しなければならない。
④省エネ・汚染物質排出削減に更に力を入れなければならない。
 規定違反の建設プロジェクトを断固として整理し、落伍した生産能力の淘汰を加速し、省エネ・汚染物質排出削減の特別監察を展開しなければならない。
⑤構造調整の推進に力を入れなければならない。
 戦略的新興産業を育成・発展させ、重点産業の調整・振興を推進し、サービス業・中小企業の発展環境を改善し、地域の協調的な発展を促進しなければならない。
⑥対外貿易・外資利用の水準を引き上げなければならない。
 輸出の安定的発展と構造の最適化を促進し、輸入の拡大に努力し、外資を積極的かつ有効に利用し、企業の「海外進出」を推進しなければならない。
⑦資源環境・国有企業・財政・税制・金融等重点分野の改革を深化させ、農村総合改革を段階的に推進しなければならない。
⑧民生を適切に保障・改善しなければならない。

 大衆が最も関心があり、最も必要としている分野から着手し、更に多くの公共資源を民生分野に投入し、就業の安定的成長を維持し、調和のとれた労働関係を構築しなければならない。社会保障体系の建設を推進し、教育・衛生・文化事業の改革・発展を加速し、不動産市場のコントロールと住宅保障をしっかり行わなければならない。災害復興をしっかり行い、被災地域の大衆の生産生活をしっかり手配し、社会サービス・社会管理を強化し、社会の調和のとれた安定を維持しなければならない。

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