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経常項目に関わる対外決済の管理について

中国ビジネスレポート 金融・貿易
水野 真澄

水野 真澄

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2003年6月14日

<金融・貿易>
経常項目に関わる対外決済の管理について

水野真澄

中国では外貨取引を経常項目と資本項目に分けており、経常項目については原則自由という扱いになっています。但し、原則自由とはいっても、各種の制限が行なわれており、実務上、これらの内容を把握する事は重要です。

また、外貨管理制度の見直しは、かなり頻繁に行なわれていますが、この1〜2年で経常項目に関する制度の変更が少なからず行なわれています。

今回は、経常項目決済に関する現状を解説してみます。

1.中国の外貨管理の原則

中国の外貨管理上、外貨決済を「経常項目決済」と「資本取引決済」に分類しています。このうち、経常項目決済は「原則自由」。資本取引決済は「原則制限」という扱いになっています。原則自由の意味は、対外決済を行なうにあたり、外貨管理局の許可は原則として不要であり、銀行審査のみで対外決済が行なえることを意味しており、原則制限というのは、対外決済にあたり、外貨管理局の許可が必要となること(銀行審査のみでは対外決済を行なうことができないこと)を意味しています。

経常項目の内容は、以下の通りです。

  • 貿易取引決済
  • サービス対価の受け払い
  • 無形資産対価の受け払い
  • 配当金の受け払い
  • 利息の受け払い(借入・貸付は資本項目)
  • 不動産賃貸料の受け払い(不動産譲渡は資本項目)
  • 請負工事に伴う受け払い
  • コミッションの受け払い
  • クレーム代金の受け払い
  • 保険料、運賃、通信費等の受け払い
  • その他

2.経常項目決済のうち、外貨管理局の許可を要する取引

原則自由とはいっても、取引内容が変則的であり、外貨管理局の許可が求められる内容もいくつか規定されています。「外貨の購入、売却、支払い管理規定」第15条では、支払にあたって外貨管理局の許可が必要となる取引として、以下のような内容を例示しています。

(1) 高額の商品代金前渡金の支払い(輸入契約総額の15%超、又は、10万米ドル超)
(2) 規定を超えるコミッションの支払い(輸出契約に関わるコミッションで、2%超、または、1万米ドル千超の場合)
(3) 仲介貿易であり、代金支払いが受領に先行する取引
(4) 対外債務の利息の支払い。
(5) 1万米ドル超の現金引出。
 
ただし、今年に入って「輸入対外決済の届出義務の部分的な取り消しに関する問題の通知(匯発[2003]34号)」が出され、(1)(3)については、外貨管理局の許可が不要となりました。

よって、「外貨の購入、売却、支払い管理規定」に例示されている、外貨管理局の許可を要する経常項目決済の内、実務上銀行審査のみで支払ができないのは、「高額のコミッション支払」、「借入利息の支払」、「1万米ドル超の現金引出し」となっています。

ただし、「外貨の購入、売却、支払い管理規定」に例示されているのは、あくまでも制限される支払の一部と考えるのが妥当であり、実務にあたり、その決済の妥当性を銀行が判断しきれないような内容も少なくありません。例えば、上記では輸出に関わるコミッションのみが例示されていますが、輸入・国内取引に関連してのコミッションの支払が可能かどうかについては、十分な判断基準が無く、実務上は支払ができないケースが殆どです。

このような、明確な規定がない送金に関して対応を取り決めたのが、「現行の規則上、明確な規定がない非貿易項目の換金、送金問題に関する通知(匯発[2003]35号)」です。ここでは、規定上、明確な取り決めがない非貿易項目決済については、以下通りの運用を行なうことを取り決めています。

  • 現行の規定上、明確な規定が無く、金額が5万米ドル以下に相当する非貿易項目の外貨への換金、対外決済に関しては、銀行が審査して送金手続きを行なうことができる。
  • 現行の規定上、明確な規定が無く、金額が50万米ドル以下に相当する非貿易項目の外貨への換金、対外決済に関しては、国家外貨管理局の分局の審査・許可を取得した上で、銀行により送金手続きを行なうことができる。
  • 現行の規定上、明確な規定が無く、金額が50万米ドル超に相当する非貿易項目の外貨への換金、対外決済に関しては、国家外貨管理局の分局経由、国家外貨管理局の審査・許可を取得した上で、銀行により送金手続きを行なうことができる。

この通達以前は、規定上明確な取り決めがない項目については、ほとんどの場合において外貨管理局の確認が求められる、もしくは銀行が否定的な判断を下す傾向にあり、実務に支障をきたすケースが多かったと言えます。当該規定の施行により、実務の円滑化が図られることを期待したいものです。

3.無形資産対価の外貨決済

無形資産対価の決済には、「特許権」、「商標権」、「版権」、「ソフトウェア」、「ノウハウ」等の使用、もしくは譲渡に関わる対価の支払といった内容が挙げられます。このような無形資産の使用・譲渡対価の支払も経常項目決済に分類されますので、銀行審査のみで対外決済が可能とされています。

ただし、無形資産の特徴として、支払の妥当性・対価設定の妥当性の判断が難しい事から、対外決済を行なうにあたっては、当該技術・ノウハウが対外貿易経済部門(商務部)に登録されていることが必要であり、対外送金時には登記証を銀行に提出する必要があります。
対外決済に際して銀行に提出する必要がある資料は、「非貿易項目に関わる外貨購入・支払、及び国内個人居住者の外貨収支に関する管理操作規則・試行(匯発[2002]29号)」に明記されていますが、いくつかの内容を例示すれば、提出書類は以下の通りとなります。

  • 特許権実施許諾に関する対外決済
    申請書、契約書、請求書、国家特許主管部門が交付した特許実施許可契約記録の受取、対外貿易経済部門(商務部)が公布した「技術導入と設備輸入契約の登記発行証書」又は「技術輸入許可証」又は「技術輸入許可登記証」、技術導入契約データ表、納税証明
  • 特許権譲渡に関する対外決済
    申請書、契約書、請求書、国家特許主管部門が公布した「特許権登記簿の写し」又は「特許広告証明」、対外貿易経済部門(商務部)が公布した「技術導入と設備輸入契約の登記発行証書」又は「技術輸入許可証」又は「技術輸入許可登記証」、技術導入契約データ表、納税証明
  • ソフトウェアの使用許諾に関する決済
    申請書、請求書、版権主管部門の著作権契約登記章印のある著作権使用許可契約又は契約登記への回答書、対外貿易経済部門(商務部)の交付した「技術導入と設備輸入契約の登記発行証書」又は「技術輸入許可証」又は「技術輸入許可登記証」、技術導入契約データ表、納税証明
  • ノウハウ・技術サービス・技術コンサルティング・設計の対価の対外決済
    申請書、請求書、対外貿易経済部門(商務部)の交付した「技術導入と設備輸入契約の登記発行証書」または「技術輸入許可証」又は「技術輸入許可登記証」、技術導入契約データ表、納税証明

4.貿易取引に関わる外貨決済

輸入代金決済は、経常項目決済であり、適正な証憑があれば、銀行審査のみで外貨を購入し、対外決済を行なうことができる、というのが原則です。ただし、輸入取引の中にも特殊な形態のものも多く、中には決済が制限されるもの、決済が禁止されるものも存在します。2003年に公布された「輸入貨物の通関証明に基づいて、対外決済・核鎖を行なうにあたり、分類管理を行なうことに関する通知(匯発[2003]15号)」は、輸入取引を「銀行審査のみで対外決済が可能なもの(14種類)」、「条件付で対外決済が可能なもの(24種類)」、「対外決済が禁止されるもの(33種類)」の合計71種類に分類しています。
71種類の輸入取引形態は、具体的には、以下の通りとなっています。

(1)銀行審査のみで対外決済が可能な14種類の輸入形態。

  • 一般貿易
  • 来料以産頂進
    来料加工廠が、国内品使用奨励策(以産頂進)の対象となる産品を原材料として使用した場合で、外国の加工委託者に代わって当該製品を製造した中国企業に対して外貨の支払いを行なう場合。
  • 保税区進料成品
    保税区内で進料加工された製品の中国内販売に関わる外貨決済。
  • 保税区来料成品
    保税区内で来料加工された製品の中国内販売に関わる外貨決済。
  • 保税区進料料件
    保税区内で進料加工された製品で、国内に搬入する際に原材料に対して関税が課税されるものの中国内販売に関わる外貨決済。
  • 保税区来料料件
    保税区内で来料加工された製品で、国内に搬入する際に原材料に対して関税が課税されるものの中国内販売に関わる外貨決済。
  • 進料対口
    輸出契約と輸入契約が紐付いている進料加工における、輸入原材料代金の対外決済
  • 進料非対口
    輸出契約と輸入契約が紐付いない進料加工における、輸入原材料代金の対外決済
  • 対台貿易
    台湾からの輸入に関わる決済
  • 免税品
    免税品の輸入に関わる決済
  • 外匯商品
    空港などで販売される免税品の輸入に関わる決済
  • 三資進料加工
    三資企業(外資企業)が行なう進料加工に関わる輸入代金決済
  • 対台小額
    台湾に対する少額支払い
  • 辺境小額
    辺境貿易に関わる少額支払い

(2)条件付で対外決済が可能な24種類の輸入取引

  • 来料料件内販
    来料加工に関わる原材料を国内販売した場合、その販売に関して所管当局(税関・商務部)の事前認可を取得していれば、回収した人民元を外貨に換金の上、対外送金する事が可能となる。
  • 来料加工成品減免
    来料加工製品を、所管当局の事前認可を取得して中国内販売する場合、人民元による販売代金を外貨に換金の上、対外送金する事が出来る。尚、当該項目は、この様な来料加工製品の国内販売であって、且つ、その商品に関する関税・増値税の納付を減免された場合。
  • 加工貿易設備
    加工貿易に使用する設備の輸入代金決済。関税・増値税免税で輸入される無償提供設備(不作価設備)の場合、対外決済は認められない。又、補償貿易に関わる設備輸入代金の送金も認められない。
  • 加工設備内販
    加工設備を、所管当局の許可を受けて中国内で販売場合、人民元によって回収した代金を、外貨に換金して対外送金を行なうことが可能。なお、この場合、設備の所有権が外国の加工委託企業に留保されている事が前提となっているため、想定されている設備は委託加工に関わる無償提供設備(不作価設備)と判断される。
  • 進料深加工
    進料加工工場間の転廠(進料転進料)を行なった場合、適切な転廠許可を受けたものであれば、中国内の外貨決済が可能となる。
  • 低値補料
    委託加工に関わる少量・小額の補助材料であって、規定に基づいて加工登記手帳管理の管理対象外として扱われるものの、輸入代金決済。
  • 来料辺角料内販
    来料加工時に発生したくず・切れ端などを、所管当局の事前許可を得て中国内販売する場合、人民元により回収した代金を、外貨に換金した上で対外送金する事が可能となる。
  • 保税倉庫貨物
    保税倉庫に保管した非居住者の貨物は、国内居住者に販売された段階(保税倉庫から搬出し、輸入通関が行なわれた段階)で、対外送金を行なう事が可能となる。
  • 国輪油物料
    国際運輸を営む中国籍船舶が、保税燃料・物資を給油した場合の代金支払い。
  • 保税工場
    保税工場が輸入する原材料に関わる対外決済。保税工場には、進料加工・来料加工・来件装配・来様加工・補償貿易に関わる工場等があるが、進料加工工場であれば、原材料は有償で輸入される事が前提となっているため、対外送金は可能。来料加工・来件装配は無償支給が前提となっており、又、補償貿易は商品代金との相殺が前提となっているため、原則として代金決済は認められない。
  • 保税区倉儲転口
    保税区の倉庫を利用したスイッチ取引に関わる対外決済。
  • 修理物品
    中国内にある物品を海外で修理し、修理後国内に再輸入する場合、付加価値部分(修理価値の部分)のみ対外送金が可能となる。
  • 出料加工
    出料加工とは、中国居住者が国外で行なう委託加工であり、中国の原材料を国外に輸出し、国外で加工を行なってから中国に戻す取引である。この場合、付加価値部分(加工賃に相当する部分)の対外送金が可能となる。
  • 租賃不満一年
    中国企業が海外のリース会社から受けるリースであって、リース期間が一年に満たないものに関するリース代金の支払い。
  • 租賃貿易
    中国企業が、海外のリース会社から受けるリースに関わるリース代金の支払い。
  • 租賃征税
    中国企業が、海外のリース会社から受けるリースであり、リース期間が一年以上のもの。
  • 寄售代販
    外国企業が中国の企業に委託販売を依頼する場合。
    販売受託者が商品を販売した場合、販売代金からコスト・自分の利益を控除した差額を対外送金することとなる。
  • 合資・合作設備
    外資企業で合資・合作形態を取る企業が、設備を海外から輸入した場合の、輸入代金決済。
  • 外資設備物品
    独資企業(外資100%出資企業)が、設備を海外から輸入した場合の、輸入代金決済。
  • 貨様広告品A
    広告用のサンプル品の輸入に関わる対外決済(中国内に経営単位がある場合)。
  • 広告貨物品B
    広告用のサンプル品の輸入に関わる対外決済(中国内に経営単位がない場合)。
  • 援助物資
  • 寄贈物資
  • 退運貨物(返品貨物)

(3)対外決済が禁止される33種類の輸入取引

  • 易貨貿易(バーター取引)
  • 来料加工
  • 来料深加工(来料加工廠間の結転)
  • 来料余料結転
    来料加工廠が、余剰原材料を転廠した場合。
  • 来料料件退換
    来料加工に使用する原材料の交換。
  • 不作価設備
    委託加工に伴い、外国の加工委託者が無償提供する設備機械の輸入。
  • 加工設備結転
    委託加工に使用する設備(無償提供設備)の転廠。
  • 減免設備結転
    輸入に際して、関税・増値税の減免を受けた設備機械の転廠。
  • 補償貿易
  • 進料余料結転
    進料加工企業が余剰原材料を転生した場合。
  • 進料以産頂進
    進料加工企業が、国内産品使用奨励策(以産頂進)の対象製品を使用して加工を行なった場合の、中国内企業に対する代金の支払い。
  • 進料料件内販
    進料加工企業が、原材料を国内販売した場合の代金回収。
  • 進料料件退換
    進料加工に使用する原材料の交換
  • 進料成品減免
    進料加工企業が製造する製品の中国内販売の代金回収であって、その国内販売にあたって製品に関わる関税・増値税の減免を受けている場合。
  • 進料辺角料内販
    進料加工企業が、発生したくず・切れ端等を国内販売する場合の代金回収。
  • 保税間貨物
    保税倉庫にある貨物の移動
  • 常駐機構公用
    中国にある外国企業の常駐機構(出張所・事業所等)が、事務所用品を輸入した場合の代金決済。
  • 暫時進出貨物
    再輸出を前提として、関税を免除されて一時的に輸入する貨物に関わる代金決済。
  • 展覧品
    展覧会の為に、関税を免除されて一時的に輸入する貨物に関わる代金決済。
  • 陳列様品
    サンプル品として、関税を免除されて一時的に輸入する貨物に関わる代金決済。
  • 無対価抵償
    関税納付後の輸入物品に破損・品質不良が発見された為、海外より無償で支給される大体物品のこと。
  • 其他進口免費
    その他の無償品の輸入
  • 承包工程進口
    中国内で行なう請負工事に関連する物資の輸入。
  • 駐外機構運回
  • 駐外機構購進
  • 来料成品退換
  • 直接退運
    通関手続き完了前の輸入貨物を国外に返却する場合。
  • 進口溢誤運
    本来、他の港(国外)に下ろすべきところを、誤って荷卸してしまった貨物。
  • 進料成品退運
    進料加工製品で返品を受けたもの。
  • 後続補税
    通関証明が十分に揃っておらず、資料を追加した上で税金を納付する状況となっている貨物。
  • 其他貿易
  • 留贈転売物品
    外交機関使用物品その他の特別な扱いで輸入された物品を、事前許可を受けて国内で転売する場合。
  • その他
(03年6月14日記・6,262字)
丸紅香港華南会社コンサルティング課長・広州会社管理部長
水野真澄

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