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ログイン2020年1月30日
今回特別企画として、水野コンサルタンシーグループ代表・水野真澄氏、中国の大手ECサイト運営会社・唯品会(VIPSHOP)の元日本法人代表・小林健教氏をお招きし、越境ECの現状について対談を行っていただきました。その内容を二回にわたって配信いたします。
水野氏:
中国の越境ECに対する日本人、日本企業の認識・イメージは、市場規模がとにかく大きいこと、また商品投入に際しての中国における許認可管理が比較的甘かったり、節税効果なども期待できるというものだと思いますが、中国の越境ECの実情などについてお聞かせください。
小林氏:
越境ECもオンライン取引のひとつの形態ですが、現在の中国のオンライン取引市場は150兆円まで成長しています。これは自動車産業と同じ規模ですので、中国のECが注目を集めるのも自然な流れといえます。
ただし、中国のECは国内取引がメインであり、大手のアリババやVIPSHOPなどもその9割を国内取引が占めています。したがい、国内ECと越境ECは分けて考える必要があります。
越境EC自体は、消費者にとっても購入アイテムの選択肢が広がりますし、先ほど水野さんがおっしゃった通り、売り手にとっても売り易い環境にありますので、これからどんどん市場は拡大していくと思います。
注意が必要な点としては、国内ECはもちろん、越境ECでも大手プラットフォームによるシェアの独占が顕著になってきていますので、どうしても大手の意に沿った市場が形成されてしまうこと、つまり売り手も買い手も大手に振り回されてしまう状況が今後強くなっていくのが心配ですね。
水野氏:
登場人物が非常に限定され、また中国ではまだまだインターネットに関する規制も多く、外国企業が手を出しづらい状況があり、そのなかでも中国はモノを売る側が日本に比べて強いイメージがありますので、彼らの言うことを聞かざるを得ないというのは、現状はしかたのないことかもしれません。
そういう意味では、プラットフォームは、扱う商品に対して、力の入れ加減をする、色付けするといったことがあるのでしょうか?
小林氏:
一般的には、大手プラットフォームは世界中にある子会社に対して、“wish list”というか、その国で調達が必要な商品についてリストを出しています。つまり、取り扱う商品はすでに決まっているということなので、そもそもの入り口の時点で色付けされているといえます。
このリストに挙がる商品とは、やはりタオバオなどで売れ筋の商品となりますので、ここで担当者の目に留まらないとリストに載ることはありません。そこが日本の中小ブランドとしてはハードルが高いといえます。
水野氏:
プラットフォーム側としても、買い取りのリスクはあるので、やはり売れ筋でだれもが欲しがるもの、つまりブランドが中国で完全に浸透しているというのが前提となるでしょうね。
小林氏:
おっしゃる通りです。少なくとも売り上げが確定できるものしか買い取りませんし、前職では日本のブランドでは大手化粧品・日用品・ベビー用品ブランドなどの商品が対象でした。
実は数年前までは大手ECも売上の拡大が第一目標とされており、買取商品も多種多様を極めていました。それが2017年後半以降、第一目標が売上から利益に代わり、ある意味、買い取りや在庫についてしっかり管理するようになったのです。
水野氏:
前職のお話が出てきましたが、中国の大手ECプラットフォームで働かれていたという経験から、中国EC企業、日本企業のそれぞれに対して何か思うことはありますか?
小林氏:
やはり中国の市場は動くのが非常に早いです。アリババもVIPSHOPも一緒だと思うのですが、年間計画を立てても半年で全然変わってしまいます。これは市場が、つまりお客様が変わっているということを意味しているのですが、日本のメーカーでこのスピード感についていける会社は少ないのではないでしょうか。
こういった商習慣の違いを、中国企業だからどうだというよりは、中国市場の変化が速いということを日本企業もある程度理解されたほうがよいと思います。
2015年、2016年頃は、まだ中国の市場にモノがなかったので、訪日中国人旅行者がマツキヨさんなどで爆買いする姿が頻繁に報道されていました。ただこれが2018年になると、世界中からモノが中国に集まって来て、市場は飽和状態となり、大手ブランドといえども苦戦を強いられる状況になりました。例えば有名スポーツメーカーのスニーカーなどは、2016年は仕入れられるだけ仕入れろというのがEC側の方針としてあったのですが、2018年では特定の2タイプ以外は必要ないといった極端な変更もありました。これはつまり商品が市場でだぶついているということで、すべてのカテゴリーの商品にあてはまります。
そういった意味では、市場の情報を仕入れるというのが最優先事項となるのですが、情報収集のルートがないと、どこをターゲットにするべきか、そもそも自社商品が果たして中国で売れるのかどうか、こういった点でさえもいつまでも把握できないと思います。
中国越境ECについても、単純にモノを置けば売れるという時代が終わった今、そこをどのように考えるかというところだと思います。日本で靴のメーカーさんが当たり前に行っているような市場分析からマーケティング戦略ですが、これは中国でも絶対必要になってくるので、今後は越境ECを海外事業戦略のひとつと捉えて、日本国内と同じように動かなければ道がなくなるのかなと考えています。
後編へ続く
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