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サプライサイド構造改革(2)

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2016年2月3日

はじめに
習近平総書記は1月26日、中央財経領導小組を開催し、サプライサイド構造改革等について検討した。会議には、李克強総理、劉雲山政治局常務委員、張高麗副総理が出席し、国家発展・改革委員会、財政部、住宅・都市農村建設部、人民銀行、国有資産監督管理委員会が、生産能力削減、在庫削減、脱レバレッジ、コスト引下げ、不足補充に関する8大政策方案の考え方について報告を聴取した。本稿では、習近平総書記の重要講話の概要と識者の解説を紹介する。

1.習近平総書記の重要講話
サプライサイド構造改革の根本目的は、社会の生産力水準を高め、人民を中心とする発展思想をしっかり実施することである。
総需要を適度に拡大すると同時に、生産能力を削減し、在庫を削減し、脱レバレッジを進め、コストを引き下げ、不足部分を補充し、生産分野から供給を強化・最適化し、効果のない供給を減らし、有効な供給を拡大し、供給構造の適応性と柔軟性を高め、全要素生産性を高めることにより、供給体系を需要構造の変化に更に好く適応させなければならない。

方案をしっかり制定することは、サプライサイド構造改革をしっかり行うための基礎である。サプライサイド構造改革に関する党中央の政策決定・手配に思想・認識を統一しなければならない。
生産能力を削減し、在庫を削減し、脱レバレッジを進め、コストを引き下げ、不足部分を補充することは政策の重点であり、サプライサイド構造改革のスタートに関わることであり、第13次5ヵ年計画のスタートに関わることである。
各地方・各部門は、自信を確固とし、断固として行動し、早急にしっかりと実施に取り組み、確実に実効を上げなければならない。

政策方案をしっかり策定するに際しては、
①情況をはっきりさせなければならない
現状がどうなっているかを明らかにし、深く調査研究し、基礎データを測定・計算し、詳細を明らかにして、実際の情況をはっきりさせ、情況をよく把握し、目標を定めて行動しなければならない。
②目的を明確にしなければならない
方向と目的が何かを明らかにし、手段をしっかり把握して、事物それだけの得失を論じて甚だしきは本末転倒に陥ることを防がなければならない。
③任務は具体的でなければならない
いったい何をすればいいのかを明らかにし、確定した任務を具体化し、操作可能にしなければならない。
④責任をもたせなければならない
誰がやるのかを明らかにし、督促・検査・問責を可能にしなければならない。
⑤措置は有力でなければならない
どうすればいいのか、どのような政策・措置を用いればよいかを明らかにし、政策・措置を実際に符合させ、有効・有用にし、操作性をもたせて、地方と関係部門にどのように実施するかを知らせなければならない。

2.識者の解説
(1)国務院発展研究センター王一鳴副主任(新華社北京電2016年1月26日)
サプライサイド構造改革方案は5部門に及び、少なくとも生産能力過剰を解決するプロセスにおける財政支援、企業の経営コストの引下げ、不動産在庫削減の促進、国有企業の合併再編等の主要任務は密接に関係している。
サプライサイド構造改革を推進し実質的な進展を得てはじめて、より質の高い、より効率的で、より公平で、より持続可能な発展を実現できるのである。

(2)国家行政学院張占斌教授(新華社北京電2016年1月26日)
サプライサイド構造改革を推進するには、情況をはっきりさせることは前提であり、目的を明確にすることは基礎である。任務を具体化し、責任をもたせ、措置を有力にするのは、実際上改革方案が強い操作可能性をもたねばならず、政府と各関係部門が何をすべきか、もしうまくいかなかった場合はどのような責任を負うべきかを明白に示さなければならないことを強調しているのである。このようにしてはじめて、各改革措置は有力・有効・持続可能となる。

(3)華夏新供給経済学研究院賈康院長(中国証券報2016年1月27日)
わが国が現代化を実現するカギは供給であり、まずは制度の供給である。改革は「生産関係の自己革命」によって生産力解放の問題を解決しなければならない。
現在最も主要な発展理念として第一の動力と位置づけられるイノベーション駆動は、実際上制度革新・管理革新・技術革新が結びついたものであり、三つが互いに影響し合うことが肝心である。制度供給を筆頭とした全面改革段階の堅塁攻略・困難克服をしっかり把握し、サプライサイドの革新を主とした系統的なプロセスを通じて、新たな生産力の発揮を実現しなければならない。
サプライサイド改革が実際上強調するのは、改革を導きとし、構造最適化を着眼点とすることにより、供給体系の質・効率を高め、改革深化の中で生産力を解放
する系統的プロセスだということである。

(4)中国企業研究院李錦執行院長(中国証券報2016年1月27日)
供給構造の調整を通じて、経済成長を促進するのは必然である。サプライサイド構造改革が提起しているのは、中国経済が不断に発展するための選択である。
2010年4-6月期以降、経済の四半期の成長率は既に連続22四半期変動の中で低下している。一面において、サプライサイドの不足の弊害が既に際立っており、国内の供給能力が個人の消費構造のグレードアップへの需要に適応できず、あるいは質の高い消費財・サービスへの個人の需要に適応できず、ますます多くの中国の消費グレードアップの需要が外に溢れ出しているのである。
他方で、現実に存在するサプライサイドの不足という多くの要因が、経済成長を制約している。たとえば、多くの効率の低い・非効率な産業・企業が過剰に生産資源を占領し、立ち遅れた制度要因が企業の活力を抑制している。
短期的にみて、できるだけ速やかに企業の資金調達コストを引き下げ、大規模な減税を行い、独占・行政規制を開放し、多方面から企業の供給制約を引き下げなければならない。
中期的にみて、市場化手段を通じて、生産が成熟・老化した産業から、できるだけ速やかに新しい供給が形成・拡張の段階にある業種に生産要素を移転し、供給構造を更新しなければならない。
長期的にみて、サプライサイド改革を深化させ、労働・土地・資金・管理・技術等各生産要素の供給抑制を減らし、供給効率を高め、供給コストを引き下げ、5つの富の源泉を十分流通させ、中国経済の新たな上昇サイクルを切り開かなければならない。
サプライサイド構造改革は、2016年の国有企業の発展の主題である。2016年の経済政策の5大任務は、生産能力を削減し、在庫を削減し、脱レバレッジを進め、コストを引き下げ、不足部分を補充することであるとしたとき、生産能力の削減を中央は首位に置いている。
サプライサイド改革の背景下、国有企業の再編を生産能力の撤退と一緒に結びつけるのである。国有企業のサプライサイド構造改革を進めるには、過剰生産能力の有効な解消を促進し、産業の最適化・再編を促進しなければならない。第13次5ヵ年計画期間、中央は重大措置を打ち出し、生産能力過剰問題を解決することができる。
生産能力の削減の主要対象は重工業である。これには、鉄鋼・石炭・セメント・ガラス・石油・石油化学・鉄鉱石・非鉄金属の8大業種が含まれ、これらの業種は大量の国有企業に集中している。
現在、生産能力削減の実際的な操作は、4大ルートを通じて展開できる。

①ゾンビ企業の解決から着手し、閉鎖・合併・財産権譲渡等の方式を通じて、早急に整理・退出させる。
②企業の合併・再編を加速し、業種の集中度を高める。

③輸出を拡大し、新しい市場を開拓し、需要サイドから生産能力削減を加速する。

④生産能力の輸出を加速し、工場を海外に移転し、サプライサイドで生産能力を消化する。

このプロセスにおいて注意が必要なことは、生産能力の削減と安定成長の間には一定程度の矛盾が存在し、人の問題と債務の問題を解決する必要がある。このため、さらにいくらかの付帯措置を採用する必要がある。

(1月28日記 3,286字)

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