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地球巡る大口荷主(二)「キヤノン際立つ」内販に掛けろ!!

中国ビジネスレポート 各業界事情
旧ビジネス解説記事

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2003年5月1日

<各業界事情>
地球巡る大口荷主(二)
「キヤノン際立つ」内販に賭けろ!!

アジア・マーケット・レビュー 2003年4月1日号掲載記事)

取扱いコンテナ数6万6000TEUを誇る超大口荷主キヤノン。同社は今中国13億人市場へのアプローチである「内販ビジネス」に焦点を絞った。同社アジアヘッドクウォーターは現状250億円の内販売上を2年で750億円まで拡大する計画を打ち出した!!昨年9月北京では「博覧佳能」を開催、予想をはるかに上回る1万人来場を果した。さる9日の株式総額でソニーを僅差0.7%差で凌ぎ3兆7500億円を達成、電気機器でトップの座につけたキヤノンに密着取材する。


 世界を征するキヤノンは事務機器市場におけるエマージングマーケット、中国国内市場への本格浸透に向けて重い腰を上げた。連載第一回の総括論に続き、第二回では同社を巡る中国内販ビジネスの状況を追う。

 北京において「Canon Expo 2002博覧佳能」なる博覧会が開催されたのは昨年9月。デジカメ、カラーMFP(マルチ・ファンクション・プリンター)などの新商品の紹介を強力に推し進めた。キヤノンは2005年までに中国内販を現状250億円を750億円まで一気に引き上げる。その手立ては着々と打ってきた。97年北京市に設立した傘型企業、佳能(中国)有限公司(=北京社)はかねてから持つ第1の機能、中国事業株式の統括会社(持ち株会社、これは傘会社の本来の機能だ)としてのそれに加え、昨年2月にはアジア事業統括会社なる2つ目の機能を獲得。シンガポールにあったアジア事業のヘッドクウォーター(本社機能)が北京に移ったのだ。同傘会社はキヤノンにとっても最も重要な海外拠点の一つとなった。

 そして第3の機能として、佳能(香港)有限公司の持つ統括販売会社としての機能も着々同社に移管されている。北京社が狙うのは一つ、WTO加盟後に予測される量販店向けビジネスの開拓。北京社は実戦の販売会社として、6分公司を全国に設置、すでに全中国で本格的な展開を始めた。生産の側面を見ても、キヤノングループは昨年7月蘇州で、世界最大の複写機製造拠点の立ち上げに踏み切った。遅れ気味だった複写機製造拠点の移管も実現、現状50%の海外生産率もさらに拡大する見込みだ。100億円を投じ年24万台を製造する予定だ。これに先立ちレーザー・ビーム・プリンター(LBP)は第2次中国ブームの最初期、89年に大連に部品基地設置、この製造拠点化とともに珠海拠点と中山に製造拠点を設置済み、体制構築に抜かりない。中国国内で17社(および6分公司)で人員規模1万5,000名強に達する巨大外資に成長したこの巨人が内販を急ぐ理由はまさにWTO加盟後の量販店向けピジネスが期待できることだ。

内販250億円にテコ入れ!!

 中国国内流通は全体で53兆円の巨大市場なのだが、特有の諸事情に縛られ、かねてよりキヤノンの内販ビジネス開拓は遅れ気味だった。現法べ一スで4〜5億円程度が実績だが、香港経由の「トレーダールート」の売上が加わるため、大体総額250憶円程の事業だ。事務機器の直接市場としての開拓に遅れたとはいえ、製造基地としての付き合いは南巡講話に先だつ天安門直後、89年に遡る古参プレーヤーだけに商魂たぎるものがある。

 今を遡ること8年前、現代におけるキヤノンの中興の祖ともいうぺき、御手洗富士夫現社長が大号令をかけて打ち出したのが「利益重視主義」。これを達成するため最も強力なツールは生産拠点の海外移管によるコスト低減だ。この大号令の下デジカメ、デジタルオフィス、プリンターなどコアコンピタンツ4分野に注力事業が絞り込まれた。96〜98年のITに関わる好況時にいち早くパソコン事業からの撤退も決断。市場でトップにならなければ価格決定の主導権を取れない、それが理由だ。家庭からオフィス向け高速機、カラー・モノラルを問わずLBPも複写機もカメラも豊富なラインナップで、事業において十全たるポートフォーリオが実現された。にも関わらず、全てのジャンルで価格を決めるのはキヤノンだ。ではこの巨人が持つ他にない力とは何か。高度に進化しさらなる開発を止めない技術力も然りだ。例えば撤退したパソコン事業における技術さえデジタル化に関わるさまざまな商品開発に活かされている。

 さらにこれに加えてあるもの、まず本誌が注目なければならないその力とは圧倒的な生産力である。キヤノンは、90年代のIT産業に関わる巨大市場の発生に最も敏捷に対応し、アジアで確保できる良質で、廉価で、ボリュームのある生産力を最も有効に活用した輸出加工型工場進出のモデル企業ともいえる。そして、これに加え、内販のテコ入れによって、キヤノンは真の意昧で中国ビジネスの覇権を取ることになる!

 さてここで傘会社の動きに目を転じてみる。まずは北京社が獲得した第2の機能についてだ。アジアの事業は、キヤノン・アジア・マーケティングという社内グループの中に、独自のヘッドクウォーターが設けられ、これが独立機関としてアジア全域のビジネスに関わる司令塔の役割を持つ。この機能が昨春シンガポールから北京に移管された。同域内事業とは規模こそ2002年度売上15億ドルと、3兆円に迫ろうする同社の売上の中で小さいかに見えるが、年率約10%で拡大する超優良商圏だ。

2003年度にはシンガポール社、香港社、マレーシア社、フィリピン社のそれぞれの販売会社がいずれもが過去最高の売上を記録している。アジア事業として、2003年度目標も13%増の17億ドル、税前利益2,050万ドルを確保する計画だ。ところで、ここ2年で従来シンガポール、香港、北京の3大拠点が並列した事業システムが一気に変貌を遂げた。北京社は事業部、管理部、サービス部を持つアジアでキヤノン第二本社になろうとしている。中国にあって北京社が狙うのは何か。ここで間われるのがまさに内販ビジネスなのだ。

「傘型企業」佳能中国

 まず現状でキヤノンはこの傘会社に加え、製造会社9社、ソフト開発会社2社、部品関連2社、販売会社3社、他1社の合計17社体制を構築、さらに6分公司を設けている。北京社による販売体制は昨秋以来、上の6分公司以外に新たな分公司を8都市に設ける取り組みを進め、分公司拠点は2005年までに全国で15カ所が、その他40カ所のサービスデボ新設が構想されている。これで国内に縦横無尽な物流網が確立されることになる。さて、三菱商事、日本通運を巻き込んだこの計画の詳細に関しては後の紹介に譲り、まずでは傘会社の機能自体を見直してみる。

 傘型企業とは何か。これは持ち株会社を意味する概念で、メーカーでない貿易会社を嫌う中央政府方針から投資面で束縛を蒙った総合商社が保税区外で100%資本を作る唯一の方法として始まったもの。傘型企業を介して間接投資を行うことで、現地向け投資は容易になるだけでなく、これらの管理が一本化できる。

 中国進出が非常に早かった伊藤忠商事が93年設立許可を獲得したのが最初。さて非製造業である商社と違って、メーカー勢は100%独資会社設立は比較的容易ではあるはずが、何かと事業の達成に関わるしがらみが絶えない中国市場のこと、結局はメーカー勢も投資戦略に有効な傘会社を次々と設立するようになった。

 43製造拠点を有する松下電器産業が早くから動き出し最良の先行事例となった。中国ビジネスに限らず、アジアでの生産拠点関連の取り組みは松下を始め家電系が最も早かった。事務機械は常にこれに従って動いてきた。キヤノンも同じだ。さて実は3,000万ドル(36億円)の資本金が前提として要請される傘会社の申請は中国サイドにとっても誠に旨味のある申し出だ。外資側にとっては30億円もの投資をしなければならない訳で、中小企業にはなかなか縁のない制度でもある。

 勿論その点ではキヤノンは中国全土で1,000億円(株式資本の持ち株分で約390憶円)の投資を行っている上、昨年9月設立の蘇州新会社の事業では、100億円という超大型投資計画を打ち出す程の超大手の有カメーカーである。傘会社のメリットは十全に活用され、これ以降の会社設立は9社に及ぶ。うち天津社と北京のソフト会社以外はほぼ自社グループ100%会社だ。中国において100%独資として事業の完全なイニシャチブを確保することは限りなく大きな意味を持つ。次号レポートでは、キヤノンにおける内販ビジネスの秘策に迫ることになる。(続:加藤隆)

本記事は、アジア・マーケット・レヴュー掲載記事です。

アジア・マーケット・レヴューは企業活動という実践面からアジア地域の全産業をレポート。日本・アジア・世界の各視点から、種々のテーマにアプローチしたアジア地域専門の情報紙です。毎号中国関連記事も多数掲載されます。

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