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減税時代の税務リスクマネジメント(1)

中国ビジネスレポート 税務・会計
傅 嘉欣

傅 嘉欣

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2013年5月7日

報道によると、今年(※2012年執筆)から試行する上海市の増値税改革は第一四半期で約20億元の減税効果が出ているようである。同改革は7月より北京市にも展開する予定であり、天津、広州、深セン等を始め多くの都市が後に続く。その反動もあり、一方では当然ながら課税の強化が予想される。税務調査は移転価格、過少資本、タックスヘイブンなどの特定項目の調査と一般納税調査とに大別される。これまでは当局の要請に応じて提出すればよかった移転価格文書であるが、今年は企業所得税確定申告資料と共に提出が求められた地域もあり、また7月頃を期限に提出が要請される地域も多くありそうな気配である。上海市の増値税改革による年間の減税額が80億元に達するとすれば、前年と同じ税収を確保するために更正税額が1億元の移転価格案件を80件立件しなければならなくなる。一般納税調査は3年前に行われた45社の大企業グループ連合調査の続きとして省、市レベルの選定する大企業の調査に広がりを見せている。税務調査のポイントとして上げられている項目に、税務リスクを自律的に発見し更正する機能が会社の体制にビルトインされているか、すなわち内部統制に過少申告を発見する制度が組込まれているか、という事項がある。 本稿では数回に分けて税務調査のリスクマネジメントについて解説する。まずは移転価格調査である。
 
移転価格文書の位置づけ
文書提出要求に応じないことでは調査を受けるリスクを高めてしまうが、提出が免罪符というわけではない。会社の定める移転価格ポリシーが守られないということであれば、文書は結局のところ後付けの理屈にしかすぎない。税務リスクの根絶は、企業による移転価格ポリシーの遵守度合いによる。文書作成義務を機会として捉えて「関連取引対価設定の妥当性」、「実行の程度」、「設定見直しの必要性」について毎年議論する場を持ちたいものである。

移転価格調査の出発点
負担している機能・リスクと損益結果が明らかに整合していないこともそうであるが、結果を招いた要因を担当者が正しく認識していなければ初動対応もままならない。税務当局との最前線に立つ現地会社の経理責任者・担当者の会社経営に対する十分な理解は、税務リスクの低減に大いに役立つ。税務当局からのファーストコンタクトが一般に非公式のものであるからこそ、正式立件に至る前の段階での火消しが有効である。また当局に提出する如何なる資料、説明も、会社の事情を十分考慮したものであることを確保する制度・手続を構築しよう。いくら担当者のコミュニーケーションが重要であるといっても野放図な状況は避けるべきである。
 
調査に対する感度
移転価格調査は、初めから移転価格調査を行なうということではなく、一般税務調査としての資料収集から始まり、移転価格問題がクローズアップされて(或いは他の税務上の問題となる項目がないことから)立件に進む、というケースが多くみられる。従って、一般税務調査であっても他の税務事項への調査に発展する可能性を念頭に、要求される資料や電話での問い合わせ内容に注意し、当局の意図を汲み取ることができる感度を身につけておこう。

(2012年6月執筆)

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