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ログイン2012年7月5日
報道によりますと、今般、中国国家税務総局は「特別納税調整重大案件共同審査」に関する内部規定を制定し、同じく制定した「特別納税調整業務内部規程」と合わせ、移転価格調査の更なる規範化と強化の方向性を明白にしました。
公開通達ではないものの、税務当局のこれからの調査手法・流れの変化が予想できますので、リスク管理の観点から重要なポイントを理解しておきましょう。
1. 重要案件とは?
原則として登録資本金1億元以上且つ調査対象年度における年間平均売上高が10億元以上の会社が対象となるほか、全国連合調査の対象として選ばれた会社及び取引スキームの複雑な会社も対象となります。
2. どこが変った?
これまでの調査手順では、規模を問わずに全ての案件は結果通知書を被調査企業に出す前に総局の審査を受けなければなりません。今回の変更によれば、通常案件は総局まで上げなくてもよい、つまり省レベルの税務局に最終決定権を委ねています。一方、重要案件は総局のみならず、各地の税務局からの選抜メンバーも含めた共同審査となるようです。
3. 共同審査の方式は?
資料の共有、メールでの検討及び合同討議が基本となるでしょう。昨年来、各地の税務局に対して行われたトレーニングに加え、審査チームメンバーへの特別トレーニングを実施し、On the Job Trainingを通じて人材の育成と有効活用を志向しています。また、納税者と利害関係を有する担当官が案件に関与することを禁止する規定も盛り込まれています。
4. 納税者への影響は?
費用対効果の観点から、当局の調査に投入する事務コストが多いほど更正税額の目標が高くなるでしょう。総局の人手不足解消及び全国に散在する移転価格専門官を組織的にまとめあげる体制作りは簡単ではありませんが、数年内には達成可能でしょう。
担当官の重要案件への傾斜、案件数から更正額への重点移行、調査効率の向上が、中国に複数の拠点を有する企業グループ、大企業管理司及び各地の大企業管理部門が管轄する会社に対する移転価格税務リスクを上げています。即座に調査に対応できる社内体制の構築は必須です。移転価格同期資料の整合性チェックとグループとしての価格設定方針の整備は待ったなしです。
また、通常案件において当該地域外の税務担当官が審査に加わることで、地元有力者の人脈関係を使った問題回避手段が逆効果になることもあるので要注意です。地元の税務事務所の当局との関係のみに依存し、理論的主張の弱い状態で当局との交渉に臨むことは厳に慎むべきでしょう。
一方、各省レベルの国税局の判断権限が増したことで、これまでの硬直的な更正結果から幅が広がりそうな気配です。それだけに、担当官を納得させられる自社の主張を定性的、定量的にまとめておきましょう。
移転価格課税を受けた場合の救済措置としては、上位税務局への異議申立て、裁判所への提訴による更正結果の是正がありますが、納税者の意見が取り上げられた事例は極めて限定的であるのが実状です。また、相手国税務当局との相互協議による対応的調整(二重課税となった部分の相手国における還付)も、二国間協議が滞っている現状を見ても現実的ではなりません。何といっても事前の予防が一番であることは確かなようです。
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