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ログイン2013年9月3日
日本と中国の関係が一時的に冷え込んだ2012年後半以降、日系企業の投資の矛先が中国からインドネシアを始めとする東南アジアに更に分散及びシフトしたと言われます。それは2013年になっても、インドネシア経済の更なる成長を追い風にして今では東南アジアの中でも投資に関しては「最もホットな国」とも呼ばれるようにまでなりました。
日本にとっての最大の投資国
もともと日本にとってインドネシアは長年に渡り、ASEAN域内で最大の海外直接投資国でした。インドネシアの外国投資を管轄する投資調整庁から発表された2012年の外国投資実現額によると、日本は前年比26%増の25億米ドルで、シンガポール(49億米ドル)に次ぎ国別で2位であり、過去に渡っても常に5位以内に位置しています(表)。
(表)国別の外国直接投資の推移(金額ベース)
順位 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | ||||||
1 | シンガポール | 3,748 | モーリシャス | 6,477 | シンガポール | 4,341 | シンガポール | 5,005 | シンガポール | 5,123 | シンガポール | 4,856 |
2 | イギリス | 1,685 | シンガポール | 1,487 | オランダ | 1,198 | イギリス | 1,892 | 日本 | 1,516 | 日本 | 2,457 |
3 | 韓国 | 627 | 日本 | 1,365 | 日本 | 678 | アメリカ | 930 | アメリカ | 1,487 | 韓国 | 1,950 |
4 | 日本 | 618 | イギリス | 513 | 韓国 | 624 | 日本 | 712 | オランダ | 1,198 | アメリカ | 1,238 |
5 | 台湾 | 469 | マレーシア | 363 | オランダ | 587 | オランダ | 608 | 韓国 | 1,218 | モーリシャス | 1,059 |
(投資調整庁より、単位:百万USD)
インドネシアへの外国直接投資の案件は、大きく三つのタイプに分かれます。ひとつは石油、天然ガスなどの地下資源、農林水産資源などインドネシアの豊富な資源を利用する「資源輸出指向型」、総人口2億の国内消費を対象とする「国内市場指向型」、そして豊富、安価、良質な労働力を活用した「加工輸出指向型」です。「加工輸出指向型」は以前は製造業が中心でしたが、最近ではIT企業等のオフショア開発も増えつつあります。
地域的には、日系企業の多くはジャカルタ周辺に進出しており、ジャカルタ以外では、シンガポール対岸のバタム島や、ジャワ東部のスラバヤ周辺に進出する製造業が多くあります。バリ島への進出は観光に関連するものが多いのが特徴で、それ以外の地域への進出は、農業や天然資源を対象としたものが多く見られます。
インドネシアに進出している日系企業はその半数以上が製造業であり、次いで卸売業、サービス業となっています。また、自動車関連業種が全体の1割を占めているのも特徴的です。日本車製造の技術力に対するインドネシア国民の信頼度は絶大であり、インドネシア自動車工業会から出された2011年の統計によると、インドネシアの新車販売に占める日本車のシェアは95.4%を占めているということです。二輪車においては99%にも達しています。現地生産・販売体制を行い、徹底したアフターサービスを行うことで消費者からの支持を獲得、インドネシアにおける日本車の地位は長年に渡り安定的なものとなっており、韓国勢に押されがちな家電業界等と比較しても、自動車業界における日本車主導の流れは更に続くものと見られています。昨今では中小企業を中心とした二次請け・三次請けや裾野産業の進出が顕著になっています。しかしながら、2011年12月から外国投資の最低資本金額がそれまでの10万米ドルから30万米ドルに引き上げられた為か、日系企業の投資件数としては、2011年の468件から比較すると、2012年度実績は13%減の405件になりました。
業種によっては未開放分野も
製造業以外の業種としては、最近では小売業やサービス、外食産業への進出も増えていますが、現状の外国投資規制では小売業や外食分野への進出は原則として外資100%での進出を行うことができません(小売業は内資100%のみ、飲食業は最大外資51%まで参入可能等)。そのため、大企業の場合は、地場企業とのライセンス・ロイヤルティー契約で進出する場合が多く、中小企業の場合、ローカル資本との合弁会社設立という場合が多く見られます。ローカル名義人株主の活用は小規模ビジネスを中心に活用されており、多くの場合、知人に依頼するか、このようなサービスを提供している業者が使われているようですが、これに関するトラブルも少なくはないため注意が必要です。飲食業のように外資が一部参入できる場合は、外国人を経営陣として登記し実質的に外国人が運営を行うことは可能ですが、100%内資である小売業の場合、外国人を経営陣として登記することはできません。(大規模内資企業の場合、外国人従業員の就労ビザの取得は可能)。そのため、当該取扱商品を輸入し、内資100%である小売販社に販売する外資100%の卸売業を併せて遂uン立し、実質的に外国人による運営(この場合は内資である小売業と外資である卸売業の両方の運営)を行っている場合も多く見られます。
インドネシア投資に対する懸念材料は
ジェトロが2012年に行った調査では、日系企業がインドネシアで経営を行うに当たっての問題点として、従業員の賃金上昇・現地人材の能力・意識の低さ、安定的な人材確保の困難など、主に労務面の課題を挙げた企業が目立っています(在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査2012年)。また、道路等のインフラ面の未整備は深刻な問題であり、前述した国内自動車販売台数の増加も加わって、特にジャカルタを中心に交通渋滞は年々激しさを増しています。インドネシア統計局によればジャカルタを走る二輪車・乗用車の道路占有面積が道路の総面積を近々超える(或いは既に超えた)と言われており、もはや世界一の渋滞都市だといっても過言ではありません。特に製造業が集中するジャカルタ東部の工業団地やタンジュンプリオク港に通ずる道路環境の整備は一刻も早く改善される必要があります。
最後に、途上国でビジネスをするにあたり、やはり気になるのは行政の透明性です。インドネシアの政治といえば、汚職が多いことで知られており、国際NGOのTransparency Internationalが発表しているクリーン度(汚職が少ない)の調査では、常に下位にランクインしています。国会、政党、警察、司法、公務員等、全般に蔓延しており、ある種インドネシアのカルチャーとして捉えられる部分もあるかと思います。こういった汚職を取り締まる目的で、2003年に政府は独立した国家機関となる汚職撲滅委員会を発足させ、発足から現在に至るまで、汚職の捜査及び起訴で連日ローカル紙面を賑わせています。最近では、汚職撲滅員会の捜査によって、日系企業の代表者が贈賄関与の疑いで逮捕される等の事件も起きました。行政が不透明であればある程、実際のビジネスにおいても何か問題に直面した時、コネクションや金銭で片づけざるを得ない場合が多く、インドネシアでもそういう意味ではまだまだこれに頼らざるを得ないのが実情です。
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