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中国ビジネス歳時記 第一回「四月:中国のお休み」

中国ビジネスレポート コラム
筧 武雄

筧 武雄

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2009年3月26日

記事概要

「中国ビジネス歳時記」と題して毎月の中国の行事、伝統、商習慣などについて連載解説していく。

 中国ビジネスに長らく携わっている者なら、中国社会に根付いた事業経営と国内市場の
販路開拓を進めるうえで、中国の伝統習慣、国民性をよく理解し、経営と営業に生かして
いくことが極めて重要なポイントであることは身をもって知っているはずである。特に、
日本人として痛感させられるのが、いわゆる「農暦」、つまり「旧暦」にもとづく伝統的
な催事である。

 これから一年間、「中国ビジネス歳時記」と題して毎月の中国の行事、伝統、商習慣な
どについて連載解説したい。

 中国は1949年の建国当時から新暦(太陽暦)を公式に採用しているが、庶民生活、特に農
村部においてはいまだに旧暦(太陰暦、農暦ともいう)が幅広く使用されている。
  太陰暦は月の満ち欠けを1か月として計算するため、1年は354日となってしまうが、太
陽暦365日との誤差は3年に一度「閏月」を設けることで調整されている。

 太陰暦では1年を「24節気」に分け、これらを「春夏秋冬」の4季節に大分類する。これ
は古代の「陰陽五行節」(風水のルーツ)に起源をもつ、自然気侯の移り変わりをべ一スに
した伝統的な暦法の考え方で、日本ではほとんど絶滅してしまったが、中国社会の生活サ
イクルの中には今でも根強く生き続けている。

 「24節気」のなかでも、古くから祝われてきた代表的な節目が「節句」と呼ばれる。
  中国政府は、昨年から「春節」、「清明節」、「端午節」、「中秋節」の四大節句を初
めて法定祝日として定めた。

1.法改正された中国の祝日

 1949年、中華人民共和国建国の年に「全国祝日および記念日休暇弁法」が公布施行され
た当時、中国にはまだゴールデン・ウィーク(中国語「黄金周」)も連休も存在せず、土曜
日も出勤日だったことから、年間の稼動日数は300日近くあった。

 祝祭日が少ない代わりに、遠隔地に働く家族が故郷に里帰りして実家に集まる旧正月
「春節」休みが年間の最大行事で、長い場合は1か月近く仕事を休むケースもあり、現在
でも若年出稼ぎ労務者の中には故郷に帰ったまま職場に戻らない例も珍しくない。企業側
もそれを知っていて、戻って来てほしいものには、休み前に多額の紅包(ボーナス)を渡
し、そうでない者は手ぶらで休みを与えたりする。

 その後、1999年の全人代において改正案が決議され、従来の法定祝祭日の前後に、土日
を振り替えてつなぐことで連続休暇として、中国にも初めてゴールデン・ウィークが生ま
れることになった。

 さらに07年12月の法改正により、従来は3日間の祝日だったメーデー(5月1~3日)が5月1
日のみに削減され、春節とならんで、旧暦の伝統的な節句である清明節、端午節、中秋節
が新たに法定祝日として指定されたのである。

 中国では毎年末に国務院弁公庁から通達が出され、翌年の国民の祝日と連続休暇の日程
が指定される。昨年からメーデーの一週間休暇扱いが廃止され、春節と国慶節の年2回だ
けの黄金周(ゴールデン・ウィーク)が通例となった。特に今年は建国60周年の国慶節に
中秋節が重なり、この秋は一大イベントが目白押しとなることだろう。

 春節、国慶節の時期は全国的な長期休暇になり、レジャーや帰省などのため国内外旅行
が非常に混み合うので、ビジネス出張は避けたほうが賢明である。

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■全国祝日及び記念日休暇弁法■(07年12月改正)

第2条 全国民休暇の祝日
①新年休暇1日(新暦1月1日)
3連休
②春節休暇3日(旧暦12月31日、1月1、2日)
一週間の黄金周
③清明節休暇1日(旧暦3月3日)
3連休
④メーデー休暇1日(新暦5月1日)
3連休
⑤端午節休暇1日(旧暦5月5日)
3連休
⑥中秋節休暇1日(旧暦8月15日)
3連休
⑦国慶節休暇3日(10月1,2,3日)
一週間の黄金周

第3条 一部の祝日及び記念日
①婦人節(3月8日)
婦人のみ半日休暇
②青年節(5月4日)
満14歳以上の青年のみ半日休暇
③児童節(6月1日)
満14歳未満の児童のみ半日休暇
④中国人民解放軍建軍記念日(8月1日)
現役軍人のみ半日休暇

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 ちなみに、「中国労働法」第44条は、上記の年間11日間と特定4半日の法定祝日に出勤
した場合は300%、連続する土日振替休日に出勤した場合は200%の割増賃金を義務付けてい
る。

 さらに注意すべき点として、昨年から施行された労働契約法では「違法性」のある社内
規則が従業員に対して経済的な損害を与えた場合、使用者は損害賠償責任を負わなければ
ならないと定めている(第80条)ことである。これは退職金計算に賞与や手当を含まないな
どの「欠陥規程」が社内に存在し、労働者に損失を与えたケースが想定されるが、中国特
有の祝祭日の取り扱いも、これに抵触する危険性が高い。

 たとえば、上記のとおり3月8日は中国では法定祝祭日とされ、この日は勤労婦女子に半
日休暇を与えなければならない。もし会社側がこれに気づかず社内規則にもとづいて婦女
子を終日出勤させた場合は3倍の賃金支払が義務付けられ、さらに終日出勤したことで婦
女従業員に経済的損害を生じさせた場合、企業はこれを損害賠償しなければならなくなる。

2.新しく始まった有給休暇制度

 上記の国民祝日の改定と同時に、年次有給休暇取得に関する新規定「職工帯薪年休假規
定」も昨年から施行された。すでに95年施行の労働法の中には「有給休暇」の言葉はあっ
たが、実に13年を経て具体的に法規定化されたのである。

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■法定年次有給休暇の付与日数■
勤続1年以上10年未満:年間5日
   10年以上20年未満:年間10日
   20年以上    :年間15日

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 上記のとおり、同一企業における勤続年数に応じて有給休暇日数が付与される。
  原則として翌年への繰越は認められないが、企業の生産状況に応じて、本人の同意にも
とづいて次年度に限り繰越が可能とされる。しかし、繰り越したところで、翌年未消化の
まま残れば、企業はこれを買い取らなければならない。

 すなわち、法定の年次有給休暇日数が年度内未消化の場合、法定祝祭日の出勤と同様に、
日割計算で3倍の相当日割り賃金を支払わなければならないのである。ただし、従業員本
人の都合により文書で「有給休暇取得の放棄」同意を得た場合に限り、平素の日割り賃金
による「買い取り」も可能とされている。

 たとえば、勤続10年の従業員が有給休暇をとらず、翌年への繰越も拒絶し、文書による
放棄もしなかった場合、企業は30日分の賃金でこれを年末に買い取らなければならなくな
る。日本的に言えば1カ月分の「ボーナス」である。

3.4月の行事(上巳節と清明節)

 4月の行事は、1日がエイプリルフール(愚人節、非祝日)、そして4~6日が清明節
(祝日)である。清明節は上記のとおり、昨年から国民の祝日となった中国四大節句のひ
とつである。

 旧暦3月3日はもともと「上巳節」と呼ばれ、この日は道教伝説で宇宙を創造したとさ
れる西王母の誕生日であった。孫悟空の西遊記で有名な崑崙山地に住む西王母が育てる不
老長寿の桃(幡桃)にちなんで「桃の節句」とも呼ばれた。
  古代中国では、上巳節の日には若い男女が川に入って身を清めるという習慣もあったが、
これが人形に変わり、日本に渡来して「ひな祭り」に変化したと言われている。言い換え
れば、もともとは春先の男女和合のお祝いでもあったわけである。

 その後、上巳節は清明節と統合され消滅したが、日本ではそのまま「ひな祭り」として
残り、5月5日の端午の節句と並ぶ五大節句のひとつになっている。

 旧暦上で清明節は冬至から105日目以降の3日間をいい、105日目を「一百五」、翌日を
「大寒食」、3日目を「清明」と呼ぶ。ちょうど梅雨入り前の新緑の季節にあたり、現代
中国では日本のお盆のように、皆が一斉に郊外にある先祖の墓参りに出かける日となって
いる。

 墓前を掃除し、お供え物をして、紙で作ったお金や飾りを燃やして先祖を弔う清明節は
別名「掃墓節」とも呼ばれ、同時に新緑を求めて郊外の遠足が盛んに行われることから
「踏青節」(新緑を踏んで外出する節句)とも呼ばれている。(2009年3月記3,466字)

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