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ログイン2004年1月16日
<投資環境>
保税区の改革について
現在、保税区の今後のあり方についての検討が行われています。
これは、昨年12月に、全国15箇所の保税区の関係者、商務部・税関総署等が青島に集まり、今後の保税区政策に関する協議を行った事に端を発しています。
報道によると、この会議において、以下の様な方向性が打ち出され、今月(2004年1月)より具体的な検討が行われる事となっています。
この会議で打ち出された方針の概略は以下の通りです。
1)一部の条件が整った保税区を、今後、「自由貿易港」に発展させていく事。
2)それ以外の保税区は、輸出加工区などに転換していく事。
3)タイムスケジュールとしては、「2006年迄の間に、最初のケースを実現」、「その後、2010年迄に調整を行い、2015年迄に選定された他の保税区を自由貿易港に転換」する事。
報道を見る限りにおいては、現時点では、自由貿易港の定義が十分に明確になっておらず、単に保税区の発展形としてイメージされている程度です。但し、保税区から自由貿易港への転換の目的として、「金融・物流の促進」が挙げられていること、更には、転換に伴う主要な変更点として、「国家直接管理への変更」、「保税区と港湾との一体化の促進と広域化」、「保税区内と区外一般地域の往来の厳格化」等が挙げられていることから推測すると、保税区の高度な特別区化、換言すれば、準外国化及び機能面の特化が想定されていると推測できます。
勿論、現時点では具体的な方針決定がされていない為、断言はできませんが、完成形としては、香港に近いイメージが想定されていると言ってよいかもしれません。
保税区は、元々、保税加工・保税保管・オフショア取引等の推進を目的として設立されましたが、現在のところ、本来の目的よりも、貿易会社の設立を一義的な目的として保税区を活用する外国企業が多いのが実情となっています。
この様な状況となった理由として、以下の要因が上げられる事は、既に、過去の連載で解説した通りです。
●保税区の地価が高く、一定の面積を確保しなくてはならない製造業が、保税区に工場を構える事は、採算面で苦しいケースもある。
●保税区の増値税還付政策が変則的、且つ、運用面で難がある保税区も見受けられる為、国内原材料を利用して保税区内加工を行った場合、増値税の還付が実施されず、コスト高になってしまうケースがある。
●保税区以外の地域にも保税倉庫があり、非居住者でも貨物の保管が可能である為、必ずしも保税区を活用する必要はない。
●中国では、現時点ではまだ外資企業の流通業参入が制限されている為、多くの外国企業にとっては、保税区に貿易会社を開設して、中国内の流通業に参画するのが、唯一現実的な対応である事。
注)但し、法制面では、保税区の貿易会社が中国国内流通に参加するのは問題が無いとは言えない。
結果として、保税区の現状は、本来意図する方向性とは少なからず異なっているといえます。何れにしても、保税区は変則的な運用が行われている特殊な地域、というイメージがある事は否めず、その最たるものが保税区貿易会社の国内販売の黙認、という事ができます。但し、この様な変則的な対応は、いつかの時点で有るべき論に戻す必要があり、これが何時になるかが注目を集めている訳ですが、これに際して生じる影響は甚大であり、慎重な対応を要するのは確かです。
この様な背景を踏まえて、昨年4月に「上海外高橋など4つの保税区における区内企業への輸出入権付与試点業務展開に関する通知(商務部・税関総署・商貿秩函【2003】22号)」が出され、上海外高橋・天津・深セン・廈門の4つの保税区に限定して、特定の条件を満たす企業(基本的には内資企業主体)に貿易権を付与する試みがなされました。これ自体は、一部の保税区・企業に限定した試験的な小規模な試みでありますが、今後の保税区政策を占う意味では重要な意義があるといえます。
つまり、保税区企業の位置付けと、保税区企業をWTO加盟に伴う規制緩和の対象とするかどうかを検討する動きと捉える事ができる為です。この様な動きを経て打ち出されたのが、今回の方針であるという訳です。
自由貿易港に転換される保税区はどこか、という点ですが上海外高橋保税区は硬い線ですが、その他はどこが選定されるかについては、現在のところ不明です。
又、自由貿易港は、保税区を発展させたものではあるが、独立性を高める事、区外(保税区外の一般地域)との管理を厳格化することが理念として上げられていますので、現保税区内に設立された貿易会社が、今後どの様な扱いとなるのかは不明です。却って、一般的な地域より切り離される為に、国内販売が制限される可能性もありえます。
更に、大部分の保税区が、輸出加工区、若しくは保税区域外になると報道されていますが、これは以下の通り解釈できます。
●輸出加工区への転換という選択肢の持つ意義
輸出加工区は、保税区と同様、保税保税措置を主要な優遇措置に据えた特別区です。
但し、区内に開設できる企業は、原則として輸出加工企業(及び、輸出加工に関連する物流企業)のみであり、区内で加工行程が行われない物品を区内に搬入する事も禁止されています。
つまり、保税区を輸出加工区に転換するというのは、区内の非製造会社の存続に制限が行われることを意味していますし、製造企業についても、国内販売主体の企業については、(輸出加工区企業は、製品の7割以上を輸出する義務がある為)対応に苦慮する事となります。
● 経済技術開発区等への転換という選択肢の持つ意義
経済技術開発区は、外資製造企業に対して優先的な優遇措置(企業所得税の優遇など)を提供する特別区ですが、保税区・輸出加工区とは違い、保税メリットは享受できません。但し、一般地域ですので、優遇税制の享受を考えなければ、非製造企業の存続も可能となります。
尚、本件とは別に、現在、「外国投資企業及び外国企業所得税法」の改定が協議されており(内資企業に対する所得税法と統合)、外資企業に対する優遇税制は、今後整理統合が行われる予定です。
以上を勘案すると、自由貿易港に転換されない、保税区が輸出加工区に転換されるか、経済技術開発区に準じた地域に転換されるか、という点に関しては、想定される影響の重要性を踏まえると、経済技術開発区(既に、経済特区に立地している保税区については経済特区)に転換されるというシナリオの方が、現実的ではないかと、筆者は考えています。
上記のスケジュールでは、保税区の形態転換は、2010〜2015年の間に調整が行われる事とされています。これは、現時点では、確定したスケジュールではありませんが、この通りに作業が進むとすると、一連の調整が完了するには、まだ暫く時間がかかる事になります。それ迄の間に、一般地域においては外資に対する規制の緩和が進行し、少なからぬ業種において、独資のサービス企業の設立が可能になります。勿論、増資による資本金の充実などを要請される可能性は高いといえますが、これを前提とすれば、この方向性で話が進めば、現在保税区に開設されている非製造企業に関しても、ソフトランディングが可能になるのではないかと期待されます。
何れにしても、現時点では初期的な方針が打ち出されたに過ぎませんので、上記の内容は推測の域を出ていません。
今後の状況の進展を注意したいと考えています。
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