こんにちわ、ゲストさん
ログイン2021年12月8日
華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)の最近のビジネストピックスを、地方通知などを踏まえてご紹介します。
1.『上海市サービス業の開放・拡大総合トライアルポイント全体方案』の通知(商資発[2021]63号)
国務院『天津、上海、海南、重慶のサービス業の開放・拡大総合トライアルポイントに関する批准』(国函[2021]37号)に応じ、商務部外資司が上海市政府と国務院の各部局、関係機関あてに通知した文書です。
上海市のサービス業の対外開放・発展の全体的な取り組み(全11項目)を、一覧的に示しています。
トライアル期間3年間で、上海市に「サービス業の対外開放・発展モデル」を完成させ、その経験を全国展開の模範とする計画です。
《通知の要点》
●サービス業を下記の三つに分類、それぞれの開放・発展の課題を提示
(1)自由に競争可能なサービス業
科学技術サービス:知的財産権担保融資制度の完備化、科技保険発展の促進、学校・研究機関の科技成果の権利強化など
商務サービス:外国人の専門資格試験参加・専門職就業の制限緩和、全世界向け補修・検査体系の促進など
物流運輸サービス:洋山国際コンテナ港関連沿海輸送への外国籍船参入緩和、浦東国際空港の拡大など
(2)競争に一定の制限があるサービス業
教育サービス:海外の専門技術的教材導入、外資の職業技能訓練組織奨励、国内/海外オンライン教育の発展など
金融サービス:外資金融機構の経営範囲拡大、外資の証券、ファンド、先物取引、保険、資財管理会社の設立支持など
健康医療サービス:漢方医薬の国際標準化、漢方医薬サービス輸出基地、インターネット医療の発展促進など
観光サービス:外資独資の旅行会社に中国人の海外旅行業務の許可(台湾地区を除く)など
(3)寡占的なサービス分野
電信サービス:付加価値付き電信サービスの開放、海外顧客ニーズに応じたウェブサイト届出制度の策定など
●開放拡大の重点プラットフォームと重点園区
(4)虹橋ビジネス区:国際化中央ビジネス区、国際貿易センターの建設、国際化のため商務管理制度緩和など
(5)浦東ソフトウエア園:デジタルサービス輸出基地、集積回路、デジタル文化、AI、デジタル貿易発展の促進など
●対外開放・発展を支える体制の構築
(6)行政管理簡便化・権限移譲:国内国際客船、ばら積み液体危険物運搬船の認可緩和、許認可の一元簡便化など
(7)ビジネス環境の一層の整備:「市商務環境優良化条例」の徹底行使、国際商務紛争の解決体制整備など
●対外開放・発展政策の強化と保障体制
(8)貿易投資簡便化:国際貿易「単一窓口化」深化、「AsiaPacificModelE-portNetwork」の加盟各国との貿易オンライン管理、天然ガス現物・先物の総合交易管理プラットフォームの構築など
(9)優秀人材確保:人材登用、評価、奨励体制、外国籍ハイクラス人材への多方面の便宜供与、公的な重要な職位への登用など
(10)知的財産権とデータ保護:知的財産権評価メカニズム構築、知的財産権担保融資、デジタルデータ安全化、個人情報保護の法制度確立、企業データ保護の第三者認証など
(11)金融リスク防御強化:金融リスク管理・対処協力のクロスボーダー化、中小銀行の資本充実、金融派生商品管理、債務管理の法規整備、企業への金融リスク防止指導など
(原文)
https://www.shanghai.gov.cn/nw12344/20210423/0c992a728e4940ea857c29a2e6b81040.html
2.『上海市外商投資企業投訴工作弁法』の通知(滬商規[2021]3号)
上海市が、外資企業の投資環境整備の一環として、外資企業が経営に障害や不便を感じる行政の施策や処置に対する苦情、陳情、改善要求を受け付け、速やかに検討、改善すべき点は改善する目的で、新たに制定した弁法です。
1989年以来適用されていた『上海市外商投資企業投訴及処理弁法』(上海市人民政府令22号)は、当弁法の7月1日施行と同時に廃止されました。
市の商務委員会と関係部門で「外商投資企業投訴工作・市クラス連席会議」を立上げ、外資企業から行政への要求を検討、改善案を策定、区クラスの部門への指導も行います。また区でも「区クラスの連席会議」を設置し、区内の外資企業に対応します。
「上海市外商投資企業投訴センター」を「上海市外商投資協会」の中に設置、当センターが苦情、陳情の受け付け、問題への対処をします。また、政策法規の宣伝や苦情処理の経験を踏まえた政策意見の市政府への具申も行います。
外資企業は、書面、FAX、Eメールのほか、市の行政事務処理アプリ「一網通弁」や「上海外商投資促進サービスプラットフォーム(www.investsh.org.cn)」からもオンラインで要求を提出できます。
外資企業からの訴えは、特に複雑な事案を除き、受理後60勤務日以内に結論を出します。
「上海市外商投資企業投訴センター」は、「区クラスのセンター」から集めた月次レポートを取りまとめ、「外商投資企業投訴工作・市クラス連席会議」に報告します。また年間の状況を踏まえ、毎年の典型事例、重点問題、政策建議などを記した「外商投資企業権益保護建議書」を提出します。
(原文)
https://sww.sh.gov.cn/zwgkhsgwj/20210604/85c0bb1cfa2441278ddda9a02dc34f67.html
3.『上海市「証照分離」改革』を全面的に網羅する業務の実施方案』の通知(滬規[2021]7号)
国務院が全国の市場経済発展・活性化のため企業経営に必要な認可項目と手続きを大幅に合理化するため、2021年6月3日に公布した『「証照分離」を深化し、市場の主体的な発展を励起することに関する通知』(国発[2021]7号)に準拠し、上海市が公布した、市内一般地域と自由貿易試験区のそれぞれの企業経営認可の合理化項目を示した通知です。
従来は必須であった各分野の「経営許可証」の事前取得を大幅に削減し、「経営届出書」や「審査条件承諾書」を提出し、「営業執照」を取得するだけで企業経営がスタート出来るという企業許認可合理化制度です。(但し経営スタート後に不適格、不具合の有無を監督され、重大な違反、改善拒否などは認可取り消しもあり得ます)
当通知には上海市の合理化項目を具体的に記した一覧リスト(一般地区向け、自由貿易試験区向け)2件が添付されています。(一般地区523項目、自由貿易試験区50項目)
内訳は以下の通りです。
(1)「経営許可制」の撤廃:一般地区67項目、自貿区14項目
(2)「経営許可制」から「届出制」へ変更:一般地区15項目、自貿区15項目
(3)「経営許可制」から「条件承諾制」へ変更:一般地区79項目、自貿区21項目
(4)「経営許可制」は継続だが「効率的な審査」に:一般地区362項目、自貿区0項目
(原文)
https://www.shanghai.gov.cn/nw12344/20210701/fa05d95f7c774f7386c0f28f401111cf.html
4.『上海市の生物医薬産業の高品質な発展に関する若干の意見』(滬府弁規[2021]5号)
上海市に、今後3年間で、バイオ製品・医薬品産業や医療研究機関が集中する、“研究開発”、“臨床試験”、“製造”、“応用”の連携が整った「バイオ・医薬品の世界的な産業発展基地」を建設する目的の指令的意見です。
3年後に上海市の「年間バイオ・医薬品総生産額」を1,800億元に到達させるとし、そのための個別の施策、資金援助などを具体的に示しています。
主な要点は以下の通りです。
1)国内に先立ち「医療ビッグデータ基地」「医療機関と関連企業との融合モデル基地」「臨床試験データ管理プラットフォーム」を建設。
2)「国家薬物科学技術イノベーション新戦略型プラットフォーム」の立ち上げ。
生命科学のフロント領域の基礎研究、重大伝染病防疫、生物学的安全研究を網羅した重要な影響力を持つ革新的な研究機構を建設。
3)「バイオ・医薬品」(抗体医薬品、新型ワクチン、遺伝子治療、細胞治療、漢方新薬など)、「先端医療機器」(先端映像機器、移植用器械、生命維持装置、先端リハビリ器具など)の高付加価値製品を開発・生産する体制・制度作り。
4)上海市での薬品、器機開発への資金支援:
(例)「第1類化学薬・バイオ製品・漢方薬」に対し、1期~3期の臨床試験の段階に応じ、研究開発費の40%を超えない範囲で、1件当たり500万~3,000万元、1社当たり年間累計1億元までの支援。
5)海外市場開拓への支援:米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)、WHOなどの認可を得て海外市場販売が実現した上海市で開発・生産された新薬、先端医療器機に対し、研究開発費の30%まで、最高1,000万元までの資金援助。
6)医療機関の臨床研究支援、企業との連携、研究成果の応用:臨床研究用ベッドへの優遇、医療従事者の研究成果への奨励金、「臨床研究倫理審査」の複数組織での協同化・結果共有化、「衛生健康ビッグデータ開放の基礎施設」の立ち上げ、研究型病院建設、など
7)バイオ・医薬品産業の現代化レベルアップ:核心技術、専門サービスプラットフォーム、重要製品産業化プロジェクトへの資金支援(投資増加分の30%以内で最高1,500万元、上海市戦略的新興産業発展プロジェクトに指名された場合は最高1億元)、デジタル化、AI化、エコ化への投資支援(1,000万元、5,000万元など)、医薬品の製造受託企業(CMO)・開発製造受託企業(CDMO)への資金支援(500万元、1,000万元)、など
8)革新的製品の普及への支持:特別審査プロセス、政府の率先購入、先端医療器機と新材料の初契約への奨励金(契約金額の20%以内、300万~3,000万元)、AIによる補助診断サービスの推進、新製品の医療保険適用、など
9)世界レベルのバイオ・医薬品産業群の建設(「三年行動」):産業のイノベーションサービス体系完備、リーディングカンパニーとイノベーション型企業の育成、国際的ハイレベル産業大会開催、人材優遇・育成、イノベーション産業向け金融モデル、など
(原文)
https://www.shanghai.gov.cn/2021hfbgwg/20210519/2d51b319d0af457dab381045d8cd4b02.html
5.『上海市生物医薬研究開発用物品輸入トライアルポイント案』の通知(滬商規[2021]4号)
上海市の「バイオ・医薬品の世界的な産業発展基地」建設の政策の一環として、バイオ・医薬品企業、医療研究機関等がその研究開発用の物品、器材を輸入する際の情報管理、輸入手続き(通関)簡便化の具体的な措置(3年間の試行措置)を示した通知です。
対象となる組織(企業・研究機関)と物品は「白色リスト」に載せられ、本来必要な「薬品輸入通関単(薬品輸入許可証)」が省略されます。
上海市商務委員会の主導で税関、食品薬品監督管理局などの関係機関が連携し、市と区クラスの「バイオ・医薬品研究開発用物品の輸入トライアルポイント連合推進メカニズム」を構築し、「白色リスト」の対象の認定を行います。
「白色リスト」の認定条件は下記の3点。
1)業務規模、研究開発の経験、対象物品の使用の全ての流れを追跡可能なシステムを備え、信用度が良好、重大な信用失墜の経歴が無い組織を選定
2)対象物品は各組織の個別の業務状況に従って認定(企業へのサービス、現場第一線への配慮、リスク管理可能の原則で審査)
3)対象組織は、内部管理制度を作り、輸入管理責任者を定め、「輸入物品試用台帳」管理を行い、対象物品を研究開発用途に限定し厳格に管理することを承諾した者
「白色リスト」は半年1回調整されます。対象組織に違反行為があれば“トライアルポイント対象企業”の資格取り消しの上、トライアル期間内の再申請不可となり、“企業信用記録”に違反が記録され、刑事罰の対象ともなり得ます。
トライアルポイント管理は、まず「浦東新区」と「臨港新片区」でスタートします。
その他地区は、市クラスの「バイオ・医薬品研究開発用物品の輸入トライアルポイント連合推進メカニズム」弁公室に申請し、審査に合格すれば「白色リスト」に加えられます。
(原文)
https://sww.sh.gov.cn/zwgkhsgwj/20210705/f488a4204efb4b31b7f9c7c1ce81077f.html
6.『上海市の都市と鎮の従業員の社会保険料率を引き続き段階的に低減すること』に関する通知(滬人社規[2021]12号)
上海市の建制鎮(農村部の町)を含む都市部の従業員の「失業保険」と「工傷保険」(労災保険)の2021年5月1日から22年4月30日までの保険料率の通知です。
《失業保険》
当通知で、企業負担0.5%、本人負担0.5%とされています。
《工傷保険》
当通知では「国家の基準料率をもとに20%下げるという調整を継続する」としか書かれていませんが、同タイトルの「政策問答」の方には、調整後の「一類から八類までの業種の優遇料率を0.16%~1.52%にする」と記されています。
(原文)
http://rsj.sh.gov.cn/tsybx_17285/20210526/t0035_1399768.html
7.『上海市の最低給与標準』の通知(滬人社規[2021]18号)
上海市のフルタイム勤務者の「最低給与」を7月1日から、2,480元から2,590元に上方改定する通知です。
また、フルタイム以外の労働者の「時間給」も22元から23元に改定されました。
なお、この「最低給与」金額には、残業代、夜勤・高温・特殊環境での作業などの手当て、食費補助、通勤手当、住宅費補助、並びに法定社会保険、住宅積立基金の本人支払い部分は含まれません。
(原文)
http://rsj.sh.gov.cn/tgzzlgl_17309/20210628/t0035_1400413.html
8.『上海市2020年度の都市と鎮の従業員全般の平均給与に関する公告』
上海市の2021年度の社会保険金額計算の基数(基準額)に使われる2020年度の平均給与額に関する公告です。
年間平均給与:124,056元
月間平均給与:10,338元
前年比+7.9%(2019年度は年間114,962元/月間9,580元)となりました。
基数上限値は従来通り基数の3倍:月間31,014元となりました。
また、下限値は基数の60%とされていますが、「新型コロナ感染症の影響を考慮して、企業負担を軽減するため、2年間に分けて調整する」として、2021年7月からの値は月間5,975元と決まりました。これは新基数(2020年月間平均給与)10,338元の57.7%に当たります。
有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。
2024年11月21日
2024年11月12日
2024年11月7日
2024年10月30日
2024年10月17日