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ログイン2008年9月21日
これまで解説してきたとおり、中国には日本と異なる憲法と国家原則があり、島国日本とは相当異なる大陸の歴史伝統、文化、風土があり、都市と農村は分離され、全国各地に多くの異民族が同居する大陸社会である。表向きは「労働者と農民の国」であっても、企業には建前として労使関係も存在せず、地方分散や地方保護主義の傾向も色濃い等、いろいろな社会的特徴の相違についても解説してきた。
これまで解説してきたとおり、中国には日本と異なる憲法と国家原則があり、島国日本とは相当異なる大陸の歴史伝統、文化、風土があり、都市と農村は分離され、全国各地に多くの異民族が同居する大陸社会である。表向きは「労働者と農民の国」であっても、企業には建前として労使関係も存在せず、地方分散や地方保護主義の傾向も色濃い等、いろいろな社会的特徴の相違についても解説してきた。
なかでも日本との最大の相違点は、政治が中国共産党による単独執政制になっているという点である。昨年秋に党大会(正式名称「中国共産党第17回全国代表大会」)が開催されたが、五年に一回開催されるこの大会で、共産党組織の人事が上から下まで一斉に刷新される。江沢民総書記の時代は、各地方政府「トップは上海閥、サブは共青団閥」という構図が多かったが、共青団主席を務めた経験のある胡錦涛総書記に代わってから、この「序列」が逆転している。現在ナンバー2の習近平を上海党書記に引き上げたのは上海閥であり、ナンバー3の李克強は胡総書記の後輩で共青団派と、きれいな「ハス違い」になっている。
1949年の建国以来、中国共産党は何度か政権交替や基本路線転換を経験してきた。このように時折の政権のカラーや序列は党内力関係の移ろいとともに随時変化しているが、この単独執政のピラミッド型政治体制メカニズムはシステムとしてビルトインされていて一貫して変化が無い。そのコアをなす基本構造、すなわち単独執政党の指導下に連なるヒエラルキー構造社会の構成単位は中国語で「単位(UNIT)」と呼ばれる。
もともと建国から30年続いた毛沢東の時代、特に65年から80年代初頭まで続いた文化大革命の時期、「企業」や「経営」等といった言葉は中国社会から姿を消し、企業も公共機関も、すべてが当時は「単位」という名前で呼ばれていた。この言葉は本来、党組織そのものを指す呼称だったようだ。
ちなみに当時、中国語入門講座で最初に習う「こんにちは」は、「同志!」という呼びかけを教わったが、これも文化大革命の内戦時に党内左派と右派で敵と味方を識別するために使われた慣用句だったといわれる。
その後の対外開放路線30年間で中国社会は多様化し、その言葉使いも生活も大きく変わったが、「単位」社会の基本構造だけは、現在でも色濃く受け継がれている。今では、企業や役所、集団組織などが「表面」とすれば、この党内ヒエラルキー構造は「裏面」と言っていいかもしれない。これら個々の末端細胞に相当する「単位」が無数にピラミッド型に集積した姿が、すなわち現代中国社会なのである。
中国では政府組織、公共機関、企業、社会団体、町内会に至るまで、すべての社会組織が単独執政等である中国共産党の指導下に存在する、と中国憲法は定めている。その社会組織の無数のピラミッドの頂点にあって組織の指導にあたるのが中国共産党中央委員会であり、その下にしたがう個々の党組織ヒエラルキーのトップに立つのが、党委員会書記(略して「党委書記」)である。その全国トップは「総書記」と呼ばれる(現在は胡錦涛氏)。
すなわち各単位を指導する党委書記こそが現場組織の経営・運営全般にわたって実質実権を持つ真の権限者、キーマンであり、単位の上位には彼を指導する上位の党組織がさらに存在する。
1980年代頃まで党委書記は交渉会議にもよく出席していたが、90年代以降は多忙になってきたためか、公の席に顔を出すことが少なくなった。そのため、外国側としては、もっぱら表に出てくる社長や市長など「○長」を組織のトップ権カ者と思いがちだが、実は表に出てくる彼らの背景には党組織があり、そのトップである党委書記が「真のキーマン」として支配している。ならば、中国ビジネスは表に出てこない「陰の実権者」を相手に、常に裏で交渉しなければならないのか、と言えば、必ずしもそうでもない。当方も実質トップのそれなりの人物が適切なルートを経由すれば党書記と直接面談することもできるし、あるいはゴルフや宴会の席等、公式会議以外の場であれば、直接会って話すこともさらに比較的容易となる。
当方からそれなりのトップが出て行って、重要案件の交渉訪間の場に先方トップが出てこなければ、それは実質的な「否定、拒絶」の意思表示であり、出てきて宴会に招待されれば、それは実質的な「歓迎、受諾」の意思表示である。暗礁に乗り上げた場合の交渉は彼らが交渉のテーブルにつくかつかないかで90%決まる。
言い換えれば、表に出てくる交渉相手をぎりぎりまで追い詰めることはせず、「裏の動き」と「上の動き」を見ながら柔軟に対処していくのが「単位構造社会」、中国での上手な交渉スタイルであるといえる。(2008年9月記・1,968字)
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